渡欧5年目にして、初めての経験だ。
 
 今季からセビージャに新天地を求めた清武弘嗣は、開幕当初はピッチに立っていたが、徐々にトーンダウン。直近4試合はまったくゲームに絡むことができていない。
 
 日本に帰国する直前のリーガ7節・アラベス戦(10/1)は、まさかのベンチ外だった。「チームが勝ったことは良かった」と語る一方で、「その中に入れなかったのはすごく残念だし、悔しい想いもあります」と心境を吐露した。
 
 過去、ドイツ時代に所属していたニュルンベルクとハノーファーでは、主力として活躍してきた。「4年間は、うまくいっていたほうだなと思います」と清武自身も振り返る。
 
 しかし、セビージャでは現状、難しい立場に立たされている。「こういう環境を選んだのは自分だし、想定内と言えば、想定内」だが、「いざ、そうなってみると、やっぱり悔しい」と唇を噛む。
 
 プロとして試合に出られないのは納得できないだろう。目の前の壁を突き破るための努力を続けているのは当然で、日々のトレーニングに充実感を覚えている。
 
「(競争の)レベルはすごく高いですよ。ナスリもガンソもいるし、自分のポジションには、常に7、8人の選手がいて、その中で回していく感じです。誰がベンチ外になってもおかしくないけど、それを望んで来たわけだし、レベルの高い練習ができて、周りにも巧い選手がいる。最高の環境だと思います」
 
 だから、本人はそこまで焦っていない。「試合もまだたくさんありますし、集中して練習をやって、やり続けるしかない」と、泰然として構える。
 
 欠場が続くなかで懸念されるコンディション面に関しても、「試合勘はすぐに鈍るものではない」ときっぱり。もちろん、これまでの「ずっと(チームで)試合をしてきて、代表に来て試合をやって」というサイクルが崩れ、それがどう影響するかは「僕にも分からない」が、「他の海外組より早く入っているぶん、コンディションも良くなるだろうし、時差ボケも早く治ると思う」と頼もしく語る。
 日本に帰る飛行機の中で、清武は今回の10月シリーズに向けて気持ちを高めていた。
 
「ホーム(のイラク戦)はやっぱり、きっちりと勝点3を取らないといけない。オーストラリアとの試合も、1ポイントじゃ物足りない」と“2連勝”を目指す。
 
 そのためには、「自分の持てるものを、全部出せればいい」と闘志を漲らせる。
 
「僕たちもワールドカップに行きたいし、日本のみなさんもワールドカップに行ってほしいと思ってくれているだろうし。そういう想いを背負って、まずはイラク戦を迎えたい」
 
 前回のアウェーでのタイ戦は勝利したが、初戦のUAE戦を落としているだけに、「危機感はある」。それ以前にも、周囲の“日本はワールドカップに絶対に出ないといけない”という期待に応えるべく、プレッシャーを感じて戦ってきた。
 
 その重圧を、危機感を、スペインで初めて味わう悔しさを、そのすべてを発奮材料にして、勝利という結果につなげられるか。
 
 少なくとも、今の清武は試合に“飢えている”。「試合に出たい」と言葉に力をこめる。ハリルジャパンの命運を左右するかもしれない今回の2連戦で、エネルギーをため込んでいる清武は大きな仕事をやってくれそうだ。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)