ゴール裏で声援を送るサポーターに挨拶する三門雄大の目に光るものがあった。
 
「サポーターの皆さんの中には泣いている人もたくさんいた。その姿を見た時、ああいう温かい応援をして下さるサポーターに対して、申し訳ない気持ちや、いろんな感情を感じることが多々あって、グッと来るものもあった」
 
 三門が福岡への完全移籍を決断したのは第1ステージ終了直後。横浜での出場機会を失っていたボランチは、「自分を必要としてくれるチームでプレーしたい」という理由で福岡への完全移籍を決断した。そこには新潟でプロ生活をスタートする機会を与えてくれた鈴木健仁(当時は新潟のスカウト)強化部長に恩返ししたいという気持ちもあった。
 
「プロになるきっかけを作ってくれたのは健仁さん。その後も、いろいろと心配してくれて、叱咤激励してくれて、自分を助けてくれた。こういう順位の中で、ピッチの中で福岡を助けることが健仁さんへの恩返しにもなる。健仁さんの期待に応えられるようにやりたい」
 
 自分の経験をチームに還元して残留を果たす。それが唯一無二の目標だった。だが、福岡は一度も浮上の気配を見せることなく、来シーズンからのJ2降格が決まった。
 
 一生懸命で真面目なチーム。勝点を落とし続けても、ポジティブに、前に向かって進む。今シーズンの福岡は、そういうチームだった。反面、勝負所で必ずと言っていいほど隙を見せて失点。そして勝点を落とすという試合を開幕戦から繰り返し続けて来た。
 
 もちろん、他のチームとの比較で言えば、技術面での能力差があったことは否めない。だが、それ以上に、ゲームを90分間デザインする力、勝負所を見極める力、ディテールにこだわる力、何よりも状況に応じてどのようにプレーすべきかを判断する力が足りなかった。そして、どんな相手に対しても遜色のない試合をしながら、終わってみれば敗戦という試合を繰り返し続けた。

 いよいよ崖っぷちに立たされた第2ステージ12節の湘南戦で、三門はトップ下でプレーしてチームを牽引した。6試合ぶりの勝利をもたらしただけではなく、次節の神戸戦に勝利すれば、残留争いの構図が大きく変わるという状況を生みだした。これで何かが変わるかも知れない。そう期待したファン、サポーターは多かった。
 だが、チームは勢いを持続できない。第2ステージ13節・神戸戦では4−1の敗戦。試合後のミックスゾーンで、選手たちは、球際、攻守の切り替え、戦う姿勢等、サッカーの原点で負けていたと試合を振り返る。それらの言葉も、今シーズン、何度も、何度も、繰り返された言葉だった。

「中々、チームとして積み重なっていかない。良い試合をしても次の試合で戻ってしまう」と三門は話していたが、ここでも同じことが繰り返された。
 
 そして降格が決まった今、三門は次のように話す。
 
「今だからこそ、みんながサッカーを考える、良い時期なのではないかと思う。もちろん、僕を含めて、オンの部分で、もっとサッカーにこだわって、もっとサッカーを知って、本当に細かい部分を突き詰めていかないと強くなれない。それをみんなでやっていかないといけない」
 
 三門は、いつも「サッカーのことを、もっとみんなで話したい」と言う。チームスポーツとは言え、チームの力は個の力の集合体。一人ひとりが自身のプレーに責任を持つことが大前提だが、個のミスをチームとして共有することで、チームとしての解決策が生まれ、チームとして、どのような判断の下にプレーするかを徹底することで、一人ひとりのプレーがチームのプレーとしてつながるからだ。
 
 そして、残された3試合に向けて、次のように話す。
 
「どんな状況になっても、サポーターの皆さんの前でサッカーをすることに関しては変わらない。感謝の気持ち、申し訳ない気持ち、自分の中のいろんな想いをぶつけたい。サッカーは11人の戦い。チームがあってのプレー、チームがあっての選手なので、もう一度、どうすればチームのためになれるのかなということを、みんなでしっかりと考え直したい。そして、残り3試合、良いゲームをやらなくてはいけない」
 
 J1の舞台で味わわされた悔しさは、J1の舞台でしか晴らせない。そして、そのための戦いはすでに始まっている。残された3試合で何を表現できるのか。それが福岡に問われている。
 
文:中倉一志(フリーライター)