主力を務める吉田麻也と森重真人に全幅の信頼を寄せられないCBは、 リオ五輪世代の植田直通ら若手の抜擢を望む声も聞かれる。解説者の金田氏に?苦しいCB事情?についての見解を訊いた。
 
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 現段階では、吉田麻也と森重真人がCBのベストな組合わせだと思う。とはいえ、やはり吉田は試合勘が心配だ。サウサンプトンで常時試合に出られなければ、感覚は鈍っていくもの。もちろん、それはどのポジションにも言える問題だが、特にCBは試合に出られずにいると失ってしまう要素が多い。貴重な欧州組のDFだけに、なんとかチャンスを掴んでもらいたい。
 
 何かと現CB陣が比較されるのが、2010年の南アフリカ・ワールドカップで日本をベスト16に導いた、田中マルクス闘莉王と中澤佑二のコンビだろう。実際、南アフリカでの彼らは文句なしに素晴らしかった。
 
 しかし、吉田と森重が彼らより劣っていると、安易に結論づけるのは早計だ。南アフリカではCBコンビの前に、もうひとり守備のスペシャリスト――阿部勇樹がいたことを忘れてはならない。
 
 アンカーを置くことで、長谷部誠と遠藤保仁の間を抜けてきた選手を、阿部というワイパーで振り払い、さらにその後方に闘莉王と中澤が待ち受けていた。サイドの大久保嘉人と松井大輔も、対峙する選手に張り付くような守備が優先され、加えてSBの駒野友一と長友佑都が機転を利かせ、CBのフォローを怠らずにいた点も見逃してはならない。
 
 なにより中澤が、闘莉王を様々な面でサポートしていた。言ってみれば、闘莉王が自分の仕事に集中できる環境が整えられていたのだ。つまり守備のメカニズムを論じるべきであり、吉田と森重に不安定な守備の責任を押し付けても、根本的な問題は改善されない。
 
 現代表のボランチ、SBとの関係性で言えば、特に右SBの酒井宏樹がさらに守備のレベルを上げなければ、チームとしての強度は増していかないだろう。
 
 もちろん現在のCBコンビにも問題はある。それでも吉田のスピード不足などハリルホジッチ監督は十分に分かっていて、フィード力やビルドアップ力を含めた総合力で判断し、 起用しているはずだ。DFにも攻撃への関与など多岐にわたる仕事が求められており、一概に南アフリカ大会のコンビとは比較できない。
 加えて、Jリーグには3―4―2―1を採用しているクラブがある点にも触れておきたい。
 
 リオ五輪では、3バックを採用する広島の塩谷司がオーバーエイジで招集されたが、手 倉森ジャパンの4バックに上手くフィットできなかった。やはり周囲の選手との関係性が、3バックと4バックでは異なる。思い切ったチャレンジ&カバーができる距離感や、マークの受け渡しなどの感覚を掴むには、ある程度の時間を要することが改めて浮き彫りになった。
 
 もちろん塩谷の総合力は高く、代表候補に入ってくるべきタレントだ。他にも3バックを採用するチームには、力のあるDFが数多くいる。
 
 ただCBに新戦力を抜擢するには、勇気ある決断が求められる。しかも戦力として計算が立つまでには時間がかかる。すなわちハリルがこのままチャレンジする余裕を失っていく と、CBの競争は滞りかねない。
 
 吉田と森重のふたりに割って入る実力があると感じるのが、鹿島の昌子源だ。高さ、フィジカル、スピードを備え、状況に応じた対応力が光る。とりわけ90分間決して途切れることのない高い集中力は、次世代CB陣の中でも抜きん出ている。
 
 リオ五輪代表の植田直通(鹿島) と岩波拓也(神戸)も、日本の屋台骨を担えるだけのポテンシャルはある。ただ23歳以下限定でなければ、まだ世界と渡り合えない印象だ。自身の壁を突き破ってほしい。
 
解説:金田喜稔(元日本代表、日産)
かねだ・のぶとし/ 58 年2月 16 日生まれ、広島県出身。現役時代は 技巧派MFの先駆者として、日産(現・横浜)でプレー。日本代表通 算 58 試合・6得点。現在は解説者として、TVや本誌などで、サッ カー界の問題や課題について、論理的かつ独自の視点で鋭くえぐる。