「ほぼ完璧」
 
 トッテナムのマウリシオ・ポチェティーノ監督は、ホームでのプレミアリーグ第7節(○2-0)後に笑顔で語った。
 
 それもそのはず。自軍は、マンチェスター・シティとの今シーズン無敗対決を制して、優勝候補として名乗りを上げたのだ。「プレッシング・サッカー対決」での勝利は、攻守に積極姿勢を求めるアルゼンチン人指揮官に更なる喜びを与えたに違いない。
 
 国内メディアに、「グアルディオラの流儀でマンチェスター・Cを倒した」と讃えられたトッテナムは「目には目を、プレスにはプレスを」とばかりに、1トップのソン・フンミンを先頭にマンチェスター・Cを追い立てた。
 
 ポチェティーノの選手たちは、ホワイト・ハート・レーンのピッチを駆ける白い「牡鹿」というよりも、まさに白いユニフォームを着た「猟犬」の群れのようだった。
 
 近年のプレミアでトッテナムには、トレードマークである激しさの一要素に果敢なプレッシングが加わり始めている。
 
 ペップ・グアルディオラ率いるマンチェスター・Cのお株を奪ったトッテナムの陣形は、CBコンビだけを残して両SBも中盤が持ち場のような位置にいる“ハイプレス仕様”。ビルドアップを許されなかったマンチェスター・Cは計103本のミスパスを記録し、その多くが自陣内で発生した。
 
 トッテナムの先制点はアレクサンダル・コラロフのオウンゴールだが、ビクター・ワニャマによるボール奪取からの一気呵成の攻めが相手左SBをパニックに陥れた。さらにデル・アリが決めた追加点の場面でも敵に息つく暇を与えていなかった。
 
 試合後には、敗れたグアルディオラも「相手が1枚上手だった」と認めざるを得ず、翌朝には、語呂合わせの好きな大衆紙代表格の『サン』紙に、スパーズにかけた「スパーフェクト」の見出しが飾られたほどの出来であった。
 
 それでも、ポチェティーノが「ほぼ」と完璧度を弱めた理由があるとすれば、狙っていた3点目を奪い損ねたことだろう。ソンとボールを奪い合った末に蹴ったエリック・ラメラの65分のPK失敗だ。
 
 両者の口論は写真付きで各紙のスポーツ面を飾った。半ば、価値ある勝利における汚点のような扱いだった。
 
 キッカーを巡る衝突には複数の前例があるが、その一つでもある2000年にパオロ・ディ・カーニオと演じた小競り合いをフランク・ランパードは、「ちょっと恥ずかしいな(笑)」とチェルシー時代に振り返ってくれたことがある。トッテナムの2人にも苦笑しながら反省する日が訪れるのかもしれない。
 
 だが現時点での両者は、形振り構わずに存在感アピールを狙っても良いと思える部分もある。互いに絶対的な主力にはなり切れていない24歳。指揮官も「誰も蹴りたがらないよりよっぽど良い」と、意に介する様子は見せていない。しこりを残さなければ、健全な「戦闘意欲」の一部だ。
 
 それがポチェティーノのトッテナム、そしてプレミアの魅力であるように。
 
文:山中忍
 
【著者プロフィール】
山中忍/1966年生まれ、青山学院大学卒。94年渡欧。イングランドのサッカー文化に魅せられ、ライター&通訳・翻訳家として、プレミアリーグとイングランド代表から下部リーグとユースまで、本場のサッカーシーンを追う。西ロンドン在住で、ファンでもあるチェルシーの事情に明るい。