ロシア行きを賭けたアジア最終予選で、初陣となるUAE戦では1-2と逆転負けを喰らい、黒星スタートとなった日本は、続くタイ戦では2-0の勝利を収める。
 
 2試合を終え、1勝1敗で迎える10月シリーズの一発目は、ホームでイラクと戦う。すでに2連敗を喫している相手に不覚を取れば、現体制への不満は一気に爆発するだろう。逆に勝点3を上積みできれば、良い流れのまま、今予選で最も厳しい戦いが予想される敵地でのオーストラリア戦に臨めることになる。
 
 ハリルジャパンの命運を大きく左右する2連戦。そういっても過言ではない。
 
 当初、選ばれたメンバーは26人。そこから欧州組の宇佐美貴史と武藤嘉紀が怪我で不参加となり、国内組の齋藤学を追加招集した。鹿島の永木亮太が初招集されたが、その他は、本田圭佑、香川真司、岡崎慎司、長谷部誠、吉田麻也など、“いつものメンバー”が顔を並べる。
 
 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が厚い信頼を寄せる25人で、まずはイラクとの決戦に挑むことになる。
 
 GKは西川周作で決まりだろう。実績で上回る川島永嗣が代表復帰を果たしたが、今回はチームの士気を高める“メンタルプレーヤー”としての役割が求められている。実際にピッチに立つのは、前回のタイ戦でも決定的なピンチを阻止している浦和の守護神だろう。
 
 最終ラインは、右から酒井宏樹、吉田、森重真人、酒井高徳の4人を予想した。左SBは、経験豊富な長友佑都の起用も十分に考えられるが、試合2日前の合流とインテルでの実戦不足を考慮すれば、ハンブルクで好調を維持する酒井高のほうが計算できるはず。
 
 所属クラブで満足な出場機会を得られていないという点では、吉田も同じだ。ハリルホジッチ監督の「本来であれば、先発で出ていない選手は外さなければいけません」という言葉に従えば、吉田のスタメンはあり得ない。ただ、指揮官はこうも言う。「誰が代わりになるのか」と。
 
 実力的には三番手に位置する槙野智章も興味深いが、怪我から復帰したばかりでもある。現状では、吉田が“最適解”だろう。

 ただ、懸念されるのがイエローカードだ。警告2枚で次戦が出場停止となるが、吉田と酒井宏はUAE戦で、森重と西川はタイ戦で、それぞれ警告を受けている。レギュラーである彼らがイラク戦で警告を受ければ、最重要なオーストラリア戦に出られなくなる。アグレッシブさを欠いてはならないが、不要なファウルには細心の注意を払いたいところだ。
 
 2ボランチは、キャプテンの長谷部の存在は揺るがず。相棒は、柏木陽介とした。
 
 イラク戦を“負けられない一戦”と捉えるならば、柏木よりもより守備的な山口蛍という選択肢もあり得る。しかし、同時にこの試合は“勝たなければいけない一戦”でもある。当然ながら、勝利のためにはゴールが必要だ。攻撃面を充実させるには、柏木の展開力は不可欠。9月シリーズでは怪我のため、チームに帯同も出場はなく、悔しい想いをしたレフティの奮起に期待したい。
 
 そして、トップ下だ。9月のUAE戦とタイ戦ではアタッカー陣で唯一、2試合にフル出場した香川は、周囲を納得させる働きを示せなかった。その後、ドルトムントに戻っても復調の兆しを見せられていない。
 
 不振にあえぐ背番号10の代わりに、実力的にはそう大差ない清武弘嗣が抜擢されても不思議ではない。3日のトレーニングでは、清武はハリルホジッチ監督と居残りでシュート練習に汗を流していた。この“特別レッスン”が実施された場所は、中央のバイタルエリアである。清武がチャンスを掴む可能性は十分にある。
 
 前線の3枚は、右に本田、中央に岡崎、左は原口元気という編成が現実的だろう。
 
 多くの欧州組がクラブでレギュラーの座を掴めていないなか、原口はヘルタ・ベルリンで、もはや代えの利かない存在となっている。先発したタイ戦では貴重な先制弾を決めているなど、指揮官も良いイメージを持っているはずだ。
 
 CFは若い浅野の台頭が目覚ましく、その勢いは岡崎に肉薄しているとも言える。それでも、得点以外の部分での貢献度が高い岡崎を凌駕するほどではない。練習中の何気ない動作ひとつとっても、岡崎は身体がキレている印象で、待望の“代表通算50得点目”も生まれそうな気配がある。
 
 右ウイングは、いくらミランで不遇をかこっているとしても、本田をベンチに追いやるのは得策ではない。ゴールを決めたUAE戦では、勝点獲得には導けなかったとはいえ、最後まで身体を張ったプレーで頼りになる働きを見せていた。困難な時ほど、力を発揮する精神的支柱は、できるだけ長くピッチに立たせておくべきだ。
 
 これ以上は負けられないイラクは引き気味に構え、一瞬の隙を突いて鋭利なカウンターを繰り出してくることが予想される。清武も「中東のチームは一発がある」と警戒する。日本が攻めあぐねる展開だと、ゲームはますます難しくなるだろう。早い時間帯に先制し、前に出てきた相手の背後を突いて、効率良く追加点を奪えれば勝機はグッと高まるはずだ。
 
 最終予選で“ホーム2連敗”は絶対に避けなければならない。勝点3が最低限のノルマ。停滞感が漂うハリルジャパンは意地を見せられるか。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)