劇的勝利に終わった日本対イラク戦の結果は、韓国の多数のメディアで報じられている。「日本、イラクに辛勝、反応は冷ややか」(『ブリッジ経済』)、「墜落しそうだった日本、イラク相手に劇的ゴール」(『デイリーアン』)、「日本、瀬戸際で生き残った、イラクに2-1の辛勝」(『聯合ニュース』)といった具合で、ほとんどの記事が日本で報じられている内容を元にした試合展開の紹介になっている。
 
 なかには、「イラクに辛うじて勝利した日本、韓国審判のおかげ?」(『毎日経済』)と主審が韓国人であったことを紹介するメディアもあれば、「尋常ではない日本の反応、“成長の可能性すらない”」(『デイリーアン』)と、日本のサッカー媒体に掲載されたセルジオ越後氏の辛口観戦評を紹介するメディアもあった。
 
 そんな韓国メディアの生の声が知りたくて、ふたりのサッカージャーナリストに話を聞いた。ふたりには事前に試合映像を見ていただくようお願いしたうえでの「韓国の視点」だ。
 
「日本にとっては難しい試合でしたね。ただ、重要なのは勝点3を得たこと」と真っ先に語ったのは、韓国のサッカー専門メディア『FOOTBALLIST』のリュ・チョン記者だ。
 
「日本の肯定的な要素とネガティブな要素が混在した試合だった。日本はイラクの密着守備を崩す部分戦術を見せ、特に最初のゴールは印象的だった。

 本田に関していろいろとあるようだが、攻撃に関しては悪くなかったように思う。最初のゴールを作ったのは本田だ。混戦の中でシュートを放ち続けたのも彼。エースである以上結果を出さなければ非難されても仕方ないが、“勝とう”とする意志を絶えず見せていたのは本田だけだったように思う。
 
 苦戦の原因はイラクが日本の弱点を突き、日本はそれに対処できなかったことだろう。日本の弱点に見えたのはセットプレー時の守備。ここぞとばかりに果敢にゴールを狙いに来ていたイラクに対し、日本のセットプレー時の守備は“紳士的”過ぎる。この課題を修正しないかぎり、今後も日本は不安な予選を強いられるだろう」
『FOOTBALLIST』は「イラクを捕らえても不安な日本。4チームが2勝」との特集記事も掲載しており、「敵地でのオーストラリア戦とホームでのサウジ戦、B組最高の2チームとの2試合で勝利してこそ自力で順位をひっくり返せる」としている。リュ・チョン記者は言う。
 
「オーストラリア戦が特に重要だろう。アジアでもっともパワーと高さがある良いチームだ。最低でも勝点1を確保しなければ、日本は今後、もっと苦しくなるのではないか。ただ、韓国も日本と同じ状況。守備が脆いという点でも、韓国と日本は、同病相憐れむ状態にある。日本はもがきながらも正面突破しようとしているが、韓国は現状に目を背け、課題に手を付けず世論を良くしようとすることばかりに気を使っている。正直、日本のほうがまだマシかもしれない」
 
 大手一般紙『中央日報』スポーツ部のサッカー班チーム長のソン・ジフン記者も語る。
 
「韓国と日本が今回のワールドカップ予選ですっきりしない試合が続くのは、危機的状況からチームを安定させるリーダーがいないことにも原因がある。韓国はキ・ソンヨンが不調で苦戦したし、日本もイラクに同点に追いつかれたあと、チームの雰囲気を立て直すリーダーが見られなかった」
 
 また、ソン・ジフン記者は本田と香川の調子がそのまま日本の苦戦につながっているのではないかと感じるという。
 
「香川の創造的なパスやドリブルで攻撃の流れを作り、本田が自信あふれるシュートでゴールを決める。この調和がなされたとき、日本はアジアはおろか世界にも通じる競争力を持ったチームになるが、最近の日本は“試合は支配するがゴールを決められず苦戦する”昔の姿に戻ってしまった。ふたりの復調が待たれるのではないか」
 
 ただ、猶予は決して長くはない、という。
 
「次のオーストラリア戦は日本のワールドカップ出場の可能性を冷静にチェックできる機会でしょう。オーストラリアはサウジに勝てなかったが、どの国も苦しむ中東遠征で2得点する競争力の高さを示した」
 
 とし、さらに続けた。
「長身FWのジュリッチがイラク戦に続きサウジ戦でも得点しているが、日本のDF陣が彼を抑えることが試合のポイントになるのではないか。オーストラリアは日本にはない高さとパワーを持ったチーム。韓国がイランとの対決を乗り越えねばならないように、日本もオーストラリアを超えてこそロシアが見えてくるはずだ」
 
 韓国では、「日本、イラクに勝っても絶えない監督交代論」(『金剛日報』)、「風前の灯、日本サッカー代表、後任監督は内定?」(『SBSスポーツ』)など、日本メディアが報じるハリルホジッチ監督の去就にも注目が集まっている。オーストラリア戦の結果が、その行方を左右する可能性もあるだけに、韓国もサムライ・ブルーの戦いを注視しそうだ。
 
文:慎 武宏(スポーツライター)
 
シン・ムグァン/1971年、東京都生まれ。韓国サッカー取材歴20年。近著に歴代コリアンJリーガーへのインタビュー集『イルボン(日本)はライバルか 韓国人Jリーガー28人の本音』(ピッチコミュニケーションズ)。