持てる。打てる。競れる。
 
 本田圭佑の良さは、汎用性だ。ボールを“持つ”キープ力があり、クロスやシュートなどを“打つ”決定力を備える。
 
 さらに重要なポイントは、空中戦だ。小柄なMFが多い日本代表において、182センチとやや長身で、ハイボールの落下地点の予測に優れた本田は、空中で“競る”能力が高い。ザックジャパンの頃から、CKの守備になると、本田はマークを持たず、ニアサイドでボールを撥ね返してきた。これを攻撃的MFが務められるのは大きい。DFを他のマークに回すことができるからだ。
 
 このレベルの汎用性は、日本代表では唯一と言ってもいい。起用したい選手というより、外せない選手、といったほうが合う。その意味では、戦術的アンタッチャブルだ。
 
 しかし、このところ、その重要性が、じわりと下がりつつある。
 
 決定力、キープ力、空中戦の3ポイントで考えると、決定力に関しては、原口元気が2試合連続でゴールを挙げた。浅野拓磨にはもっと頑張ってもらいたいが、前回のタイ戦では点を取った。本田、岡崎慎司へのゴール依存度は、少しずつだが、薄まっている。
 
 そして、本田のキープ力についても、その必要性は下がった。基本的に中央へ入りたがる本田だが、このイラク戦では日本がサイドアタックを重視し、右サイドでの基点作りに働いた。ただし、この役割が本田でなければならないのかといえば、疑問符は付く。81分に投入された小林悠でもいい。むしろ、カウンターに出た時のスピードや俊敏性、裏へ飛び出すクオリティを考えれば、プラス面が大きいだろう。
 
 そうは言っても、本田の右サイドでのキープ力が利いているように見えるのは、酒井宏樹のパスが今ひとつだから。
 
 酒井宏はドリブルで相手を引きつけてパスを出したり、身体を縦に向けて対角の中央へ斜めに入れたりする駆け引きが、ほぼない。“とりあえずパス”が、いつも本田の足下に来るため、ああ、本田のキープ力は利いているなと感じるのだが、本来改善すべきは、ボールを出す側である。
 
 中央に入ってポストプレーをする時は、相手を背負える本田のタメは効いてくるが、サイドでは必ずしも必要ではない。酒井宏のパス出しをトレーニングするか、あるいは別の選手を起用すれば、小林悠のほうが計算できる。
 
 ところが、最後の砦は、本田の空中戦だ。
 
 正直、これが一番大きい。この空中戦の能力があるので、本田を外すことは、日本代表では永遠に躊躇われるかもしれない。
 原口の台頭も、本田にとっては追い風だ。左サイドに広がって仕掛ける原口がウイングに定着すれば、そのクロスに合わせる逆サイドで、本田の空中戦が生きてくる。80分に原口のクロスからポストを叩いたヘディングシュートが、その典型だ。
 
 ある意味、原口も本田とは違う意味で、日本人らしくない選手だろう。短い距離でのパスワーク、スペースのやり取りは得意ではなく、長駆のハードワークと、ドリブル突破力、球際の強さを併せ持つ。
 
 もし、清武と香川真司の2人ともが調子を上げていれば、6月のブルガリア戦のように清武、香川、小林の並びが、いちばん日本らしい速いコンビネーションで中央突破を見せられそうだが、原口が台頭したことで、サイド攻撃のほうが優先度は上がる。つまり、本田の空中戦は、やはり重要ということだ。
 
 仮にイラク戦が、中央に集まって攻撃したUAE戦からのマイナーチェンジで望むとしたら、本田にとってはポジションが危うかったのではないか。UAE戦のように短いパスワークを求めるなら、小林を右ウイングに入れる選択肢はあったはず。小林の裏へ飛び出す動きは、清武や香川にスペースを与えてくれる。
 
 しかし、原口の台頭が、それを打ち消した。本田には最初に挙げたセットプレーの守備貢献もある。この汎用性。本田は一度チームにはまると、なかなか外すのが難しい。
 
 外せない選手を、外せるようになった時、チームはひとつ上の段階へ進むことができる。しかし、一芸タイプの香川とは違い、汎用性の高い本田を、おいそれと外すことはできない。今後もデリケートな競争になりそうだ。
 
文:清水英斗(サッカーライター)