[ルヴァンカップ準決勝・第2戦]
浦和レッズ 3-1 FC東京
10月9日(日)/埼玉スタジアム2002


 浦和のFW興梠が05年にプロになって以来、キャリア初のハットトリックを達成した。
 
 立ち上がりから浦和が主導権を握るなか、まず24分、長短の精度の高いキックを織り交ぜた浦和らしいコンビネーションから敵陣を崩し、最後は高木のスルーパスに抜け出して、シュートをねじ込み1点目を奪う。 
 
 これでアウェーゴール・ルールにより、最低2点が必要になって攻めようとするFC東京が、バランスを崩したところを見逃さなかった。38分、右サイドの駒井のクロスに、「ボールに触るだけで決められた」と、今度は左足で合わせて2ゴール目。
 
 そして53分、ドリブル突破を仕掛けた駒井がペナルティエリア内で倒されて、PKを獲得。背番号30は冷静にこのキックをゴールネットに突き刺し、早々にハットトリックを達成した。
 
「キッカーは阿部ちゃんか俺が務めることになっていたので、(阿部がベンチだったため)俺が蹴らないといけない、と思った。アイツ(駒井)はPKが下手だしね。
 
 もちろん、積極的にゴールへ向かったとても良いドリブルだったし、駒井には感謝しています。一方で、2点リードしていたけれども、トドメを刺す意味でも重要なPKだった」
 
 興梠はそのようにPKのシーンを振り返った。ゴール裏から声援を送っていたサポーターの“ハットトリック達成”を待望する声援にも励まされたそうだ。
 
 両ゴール裏に設置されている大型の電光掲示板。その得点者の欄に、「24分:興梠慎三 38分:興梠慎三 53分:興梠慎三」と表示された。
 
「名前が3つあって、おお、これがハットトリックかと実感しました(笑)」
 
 興梠が貫いてきたFWの哲学は、「なによりも勝利に貢献すること。自分が決めなくても、周りの良さを引き出し、みんながゴールを決めてくれればそれで良い。その過程で自分もしっかり決めていくことが理想」。また、「ハットトリックよりも、3試合で1点ずつ決めることのほうがより価値があると考えてきた」と言う。
 
「でもね……」
 
 興梠は続けた。
 
 「でも……一度は(ハットトリックを)経験してみたいと思っていた。気持ちいいものですね(笑)」
 
 興梠は素直に3ゴールを奪う喜びを噛み締めていた。

「これまでもハットトリックを決められるチャンスは数多くあったが、自分にはその力がなかった。運も関係していたと思う。何より、こうして浦和でハットトリックできたことに満足しています」
 
 10月15日(午後1時キックオフ)には埼玉スタジアムで、G大阪と決勝を戦う。相手はタイトルの懸かった試合で、ことごとく敗れてきた宿敵だ。
 
「大事な試合で負けて、悔しい想いをしてきた。だからこそ、この大一番で借りを返したい。できれば自分がゴールを決めて、ミシャにタイトルをあげたい。
 
 リーグ戦では4-0で勝てたが、決勝特有の緊張したなかで戦うし、状況がまったく違う。でも、いつもどおり、冷静に戦えば大丈夫」
 
 興梠はそのように自分自身に、言い聞かせるように語った。

 その静かに燃えている言葉からは、これまでにない自信が感じられた。

 
取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)