先制点を奪って追い付かれる苦しい展開だったけど、結果としてアウェーでの勝点1。最悪の結果とならなかったことは喜んでいいと思う。ただ、この試合で“アジアの盟主”の座から転落したことが浮き彫りとなった。

【オーストラリア 1-1 日本|PHOTOギャラリー】原口の3戦連発弾で先制するもPKで悔しい引き分け…

 オーストラリアにボールを回され、押し込まれ、チャンスを作られる。なんとか引き分けとした事実が、日本がアジアの中でレベルが頭ひとつ抜けていた時期は終わったと示唆しているんだ。
 
 ただ、2010年の南アフリカ・ワールドカップから主力がほとんど変わってないのだから当たり前と言えば当たり前。本田圭佑らを退ける人材が育っていないことが問題で、その責任をヴァイッド・ハリルホジッチ監督のみに押し付けるのはお門違いだ。
 
 それでも、選手起用を含めた采配には大きな疑問が残る。クラブで試合に出ていない選手たちが、なぜ“優遇”とも取れるプレータイムを与えられるのか。欧州組の潜在能力が高いのは間違いないが、コンディションを考えれば90分間もピッチにいるなど、おかし過ぎる。
 
 何を基準に清武弘嗣をスタメンから外し、香川真司が頭から出場しているのか。ハッキリ言って理解ができない。イラク戦でキレを示したのであれば、まだ納得がいく。だが香川はベンチに座ったままだったじゃないか。
 
 オーストラリア戦前の練習を見て、香川が調子を上げていて、清武が調子を落としていたから起用を決めたのだろうか。だが、今日のパフォーマンスから考えれば、それも否定せざるを得ない。
 
 香川は危険な存在となれず、清武は少ない出場時間でも相変わらず攻撃でアイデアを発揮していた。もっと早くに交代カードを切るべきだったし、もっと言うのであれば、イラク戦で劇的な勝利を飾った勢いを生かす采配がどうしてできなかったのか。
 
 きっとハリルホジッチ監督の眼には、清武のイラク戦の疲れがよっぽど抜け切っていないと映ったのだろう。そうでないと、彼をわざわざベンチに置いて、さらに10分程度しかピッチに立たせなかった理由が現状の情報だけでは説明できない。
 
 本田を1トップで使ったことだって同じだ。イラク戦で良いところがほぼなかった彼に何を期待して、本職を外してまで最前線に据えたのか。原口元気のゴールをアシストしたが、トータルで考えた時に、本田に期待するFW像がピッチ上で表現されることは少なかった。
「何かを変えたい」という意味で、本田に賭けてピッチに送り出すのを批判しているわけではない。それはハリルホジッチ監督の彼への信頼感だろうし、実際に本田は現在の日本代表の中で抜群の結果を残してもいる。
 
 指摘しているのは、同点とされた後のこと。自陣で多くの時間帯を過ごす苦しいゲーム展開で、身体のキレを感じられなかった彼を残す理由がなかったと言っているのだ。
 
 本田には裏に抜けて相手に脅威を与えるような怖さはない。オーストラリアにしてみれば、足もとに入るボールだけを狙えばいいので、高い最終ラインを保つことができていた。これにより布陣がコンパクトになり、日本のセカンドボール奪取率は下がってしまった。
 
 例えば、浅野拓磨を早めに投入していたとする。スピードでオーストラリアの最終ラインを下げられれば相手の布陣は間延びし、コンパクトさを失って中盤での優位性はもっと上がっただろう。
 
 また、日本のディフェンス陣が感じていたであろう「常にゴールが危険に晒されている」という無駄な心身へのストレスも減少したはず。実際に、浅野が入ってからは、相手守備陣は思い切ってラインを高くすることができなくなった。
 
 選手交代の問題点はタイミングの遅さだけではない。最後に丸山祐市を送り出した意図はなんだったのか。「アウェーのオーストラリア戦は引き分けでOK」という割り切った時間稼ぎなのか。だとしたら、なぜ痛そうにしていた酒井高徳ではなく、原口と代えたのか。
 
 Jリーグで調子の良い齋藤学をまったく試さなかった理由も説明してほしい。もちろん同ポジションには結果を出していた原口がいる。だとしたら、香川に代えて清武、本田に代えて浅野、小林悠に代えて齋藤だって良かったのではないか。
 
 彼はドリブラーとしての評価は高いが、パスの出し手としても進化を続けている。ドリブルもパスもできる選手が清武ひとりよりも、オーストラリアは確実に守りにくかったはず。
 
 なんにせよ、敵地で強敵を相手に勝点1を持ち帰れたのは、決して悪い結果ではない。ただ、欧州組を問答無用に“優先起用”していては、今後に不安が残るのは当然だろう。