試合後、会見に臨んだオーストラリア代表のアンジ・ポステコグルー監督は、終始淡々と質問に答えた。勝てるつもりで臨んだ試合に勝てなかった口惜しさ。そして、蓋を開けてみれば、予想を遥かに下回る低調なパフォーマンスにもかかわらず、なんとかホームで勝点1を拾うという最低限のノルマは達成した安堵感。そんな気持ちがないまぜになっているのは、コメントの端々から感じられた。
 
 冒頭から「試合の滑り出しが上手くいかず、早い段階で簡単にゴールを与えてしまった」と、本田圭佑からの展開で原口元気に決められた開始5分での失点を嘆いた。原口の開始早々のゴールは、ポステコグルーのゲームプランを大幅に狂わせるには充分だった。
 
「それ(原口の得点)をきっかけとして、前半を通じて自分たちの良さをまったく出せなかった。後半には盛り返して同点に追いつけたが、全体として考えれば、試合の45分を無駄にした」
 
 日本が嫌う「高さ」を前面に出すことを意識したあまり、ファーストチョイスではない4-4-2を起用。これまで代表で共にプレーしたことのないトミ・ユリッチとアポストロス・のペアを前線に並べた。さらには、右サイドバックにもCBを本職とする190センチを超す長身のライアン・マクゴーワンが先発。しかし、その新しい布陣は、まったく機能しなかった。当然ながら、そのことを現地メディアは指摘した。
 
 その質問にも逃げずに丁寧に答えたポステコグルー監督。「あのフォーメーション(4-4-2)には(戦術的な)理由がある。前半は確かに良くなかった。良くない状況を打破するのに必要な正確なプレーやボールを動かすといったことも全くできないまま、誤ったアプローチで前半の45分を完全に無駄にした」と失敗を率直に認めた。
 
 さらには、「特に中盤の真ん中でやりたいプレーが出来なかった。そこでボールを失い、それが不要な失点に繋がった」と語ったが、これは日本のダブルボランチ長谷部誠、山口蛍やDFラインの出足の鋭さが、オーストラリア自慢のMF陣を混乱に陥れていたということ。確かに、この日はテクニックが売りのトム・ロギッチやマッシモ・ルオンゴがミスを連発。攻撃の司令塔アーロン・ムーイもパスミスが多く精彩を欠いた。
 
 この会見で指揮官は、何度も何度も「前半45分を無駄にした」と言い続けた。これは裏を返せば、「豪州が最悪だった前半の間に追加点を上げられないで助かった」と言っているようにも聞こえてくる。確かに、今回のオーストラリア相手なら、2点目を取るのもそう難しくなかったはずだ。
 
 会見が、オーストラリア目線のみで終始するのは避けたかった。最後に「今夜の日本は、貴方がライバルと期待した通りの日本だったか」との問いをぶつけた。すると、ポステコグルー監督は筆者の方に軽く向き直って言った。
 
「正直に言えば、今日の日本のパフォーマンスは違った。ある程度は予想はできたが、かなり引いてきた。おそらくは、先制点を得て、それを守り切れればと思ったのか。さらには追いつかれても、このまま引き分けで勝点1でも御の字と思ったのかもしれない」
 
 監督はさらに続ける。
「今夜の試合での日本のパフォーマンスは、今までの日豪戦でのこちらをプレッシャーで追い込むような典型的な日本の戦い方とは違った。こっちの攻撃を止めてからのリアクションでのカウンター攻撃など、明らかにいつもと違うパフォーマンスだった。それでもさすがに、きちんと統制が取れ、守備でも激しさを見せてきたが、やっぱり自分が予想していた日本とは違った」
 
 これで、06年以降、今回を入れて最終予選で5回顔を合わせてきた日豪両国の対戦成績は、オーストラリアの1勝4分(※全体での通算戦績ではない)となった。ポステコグルー監督と23名のサッカルーは、いまさらながら日本というライバルに勝つことの難しさを感じているに違いない。
 
取材・文:植松久隆(フリーライター)