[ロシアワールドカップ・アジア最終予選]オーストラリア 1–1 日本/10月11日/ドッグランズスタジアム

 オーストラリア戦の戦いぶりは、不甲斐ないというほかなかった。
 
 開始5分に先制し、組織的な守備で相手に隙を与えなかった前半は良い。しかし、52分にPKで失点した後の38分間は、べタ引きになってサンドバック状態。オーストラリアの稚拙な攻撃に助けられただけで、2点目を奪われないのが不思議なほどだった。
 
 なぜ、日本は反撃できなかったのか。これはハリルホジッチ監督の判断によるところが大きい。指揮官の消極的な姿勢が、チームから攻撃の手段を奪っていたからだ。
 
 後半途中から、明らかに前線の本田と香川の運動量は落ちていた。そのため、前半のような高い位置からのプレスが不可能になり、それにともなって最終ラインがズルズルと下がった。日本が相手の攻撃を撥ね返していたのは、ほとんどがペナルティエリア付近。ボールを良い形で奪える場面はなく、なおかつ前線のふたりが疲労してカウンターも出せなかった。
 
 そうした展開であれば、指揮官が何かしら相手を押し返す策を打つのが普通だ。
  
 例えば、失点後の早い段階で指揮官がフレッシュな選手を投入し、前線を活性化していたらどうだったか。
 
 スピードのある浅野を入れて相手最終ラインの裏を突かせたり、イラク戦でパスの供給源になった清武を入れてカウンターを狙えば、オーストラリアも失点を恐れて無暗に前に出てこられなくなる。少なくとも、あれほど押し込まれる展開にはなかっただろう。
 
 しかし、ハリルホジッチ監督は81分まで動かなかった。普段であれば60〜70分頃に交代の札を切る指揮官が、失点から約30分間も手をこまねいて見ていたのである。その真意は、以下のとおりだ。
 
「オーストラリアはCKかFKでしか点を取れないので、その管理をするために本田と小林を残していました。彼らには、セットプレーに対しての本当に正確な役割を与えていました。もしかしたら、フレッシュな選手を入れるべきだったかもしれませんが、危険なのは本当にFKだけでしたからね」
 
 つまり、疲労が顕著な本田や小林を代えなかったのは、『失点を防ぐ』ため。カウンターでゴールを狙うよりも、セットプレー対策を優先したということだ。
 それを裏付けるように、終盤には原口に代えて、CBの丸山を投入し、そのままウイングのような位置に配置している。まったく攻める気がない、完全にセットプレー用の交代だ。この一手に、指揮官の思考が表われている。
 
 ハリルホジッチ監督は「(セットプレーの)その対応のために、新しい選手を入れました。最後に入れた丸山ですね。それは戦術的なチョイスです」と悪びれずに言ったが、例えば、丸山をボランチに置き、山口をトップ下、香川を左サイドにスライドさせれば、まだ攻撃の芽は残った。その選択肢すら指揮官は捨てたのだ。
 
 ハリルホジッチ監督は、オーストラリアを過度にリスペクトして、攻撃的なマインドを持てなかった。80分過ぎまで選手交代を引っ張った采配を見ると、そう邪推したくもなる。
 
 そもそも、プレスにすらいけなくなった香川を90分間使ったのも不可解だ。本田や小林に関しては、セットプレー要員としての役割があったかもしれないが、香川にそれは求められていない。であれば、浅野を1トップで投入して、トップ下に本田を下げる。もしくは、香川をそのまま清武に代えることはできたはずだ。
 
 グループ最大のライバルとのアウェー戦で、守備を重視する姿勢は分かる。ただ一方で、失点しないことを優先していた指揮官の判断が、勝点3を獲るチャンスを遠ざけたという見方もできるだろう。
 
 ハリルホジッチ監督は、よく「勇気」や「野心」という言葉を使うが、この試合に限って言えば、それを持っていなかったのは誰なのか。答は言うまでもない。