オ−ストラリア戦、1−1のドロ−に終わったが4年間でサッカ−がこれだけ変わってしまうんだなぁとつくづく感じた。日本の「強さ」「スタイル」はどこにいったのか、見えなくなった試合だった。
 
 4年前、日本はブラジル・ワールドカップ最終予選の3戦目でオ−ストラリアと今回と同じアウェーで戦った。
 
初戦はオマーンを3−0で破り、2戦目はヨルダンに6点取って圧勝した。ポッゼッションとカウンタ−を使い分け、流れるような攻撃からゴ−ルを奪い、ヨルダンの戦意を前半で消失させた。
 
その良い流れの中でのオ−ストラリア戦だったが、戦前は苦戦必至と言われていた。ところがフタを開けてみると日本が終始ペースを握り、オーストラリアを圧倒。スコアは今回と同じ1―1だったが内容はまったく異なり、「日本強し」の強烈なイメージをオーストラリアはもちろんアジア各国に与え、最終予選突破に向けて重要なポイントになった。
 
 ところが今回はどうだろう。
 
 オーストラリアにボールを握られ、回され、押し込まれた。日本は、引いて守ってカウンター攻撃のみ。長谷部誠は相手に回させてのカウンターを徹底していたというが、それは逆にいうと単純に4年前よりも力が落ちているということではないだろうか。少なくとも4年前は、今回のような戦術を取らずとも優位に戦えたからだ。
 
 以下は4年前のオ−ストラリア戦の中盤とFWのスタメン、今回のスタメンだ。
●ブラジルW杯予選 ●ロシアW杯予選
MF長谷部      MF長谷部
  遠藤         山口
  本田         小林(清武)
  岡崎(清武)     原口(丸山)
  香川(伊野波)    香川
FW前田       FW本田
 
 メンバ−には長谷部、本田圭佑、香川真司がおり、交代選手も清武弘嗣で、さほど変わらない。大きな違いは、ポゼッションサッカ−の主役だった遠藤保仁の存在だ。
 
 ブラジル・ワールドカップ予選時、彼らのスタイルが構築されたのは南アフリカ・ワールドカップの反省が立脚点になっていた。ワールドカップなど世界の強豪相手では個々の能力や攻撃力、組織力に差があり、勝つためには守備的に戦わざるをえない。それが現実だったし、その戦い方で南アフリカ・ワールドカップでベスト16に進出できた。
 だが、同時に限界も見えた。カウンターだけでは勝ち切れない。それゆえザッケローニ監督の時、遠藤が軸となって本田らとともにポゼッション主体の攻撃的なサッカーの実現にトライした。ブラジル・ワールドカップでは結果が出なかったが、取り組む中でポゼッション、カウンターという戦術的な幅が広がり、それがアジアの中で安定した戦いにつながった。
 
 今回は、その時のような日本のスタイルが見えてこない。イラク戦は先制した後、中盤で余裕をもってボ−ルを回せたはずだし、そうすれば相手の隙を突いてもっとチャンスが作れたはずだ。
 
 オーストラリア戦はカウンターに撤するのであれば、もっと早い時間にスピードのある浅野拓磨や齋藤学らを入れるなり、打つ手はあったはずだ。そもそもオーストラリア戦のような戦い方をして勝点1を取るのに四苦八苦しているのであれば時計の針を6年前に戻しかねないし、ワールドカップで勝点3を取るのはさらに困難になる。
 
 また、ハリルホジッチ監督の選手の起用もワールドカップを見越しているとは思えない。ザッケローニの時は自分たちのスタイルをこだわって、より高いレベルで実現しようとした。その結果、メンバーが固定化され、逆にフレッシュな選手をもっと起用すべきだという声が増えたぐらいだ。
 
 しかし、最終予選と並行してチームの完成度を高める作業もしていかないとワールドカップでは戦えない。それゆえ主力メンバーの固定化はある意味、必要なことだった。
 
 現在は主力選手の怪我などで思うようなメンバーを組めないのは理解できるが、しかし、誰を軸に戦っていくのか分からない。オーストラリア戦ではイラク戦で活躍した清武ではなく香川がスタメン起用された。結果を出しても引き続き起用されないのであれば何を基準にしてレギュラーを決めているのか、選手も不安に思うだろう。しかも守備的な戦術で香川は必要だったのだろうか。
 
 丸山の起用もセオリーにはない不可思議な策だった。勝点3を取りにいってグループ首位のオーストラリアとの差を縮めるべきなのに、なぜCBを攻撃的MFに入れたのか。
 たぶん、選手たちも自分たちがどういうスタイルで戦うべきか、どういうサッカーをすべきか、明確に見えていない。目先の試合に勝つことに精一杯の状況では、そういう余裕もないだろう。絵に描いただけの4−3−3では戦うのは難しいというのは周知の事実だ。スタイルとビジョンなき指揮官の下では、これからも不安定な試合が続き、混乱が起きるだろう。
 
 監督に半旗を翻すとか、そうしたエキセントリックなことではなく、長谷部を中心として選手たちが「こういうサッカーをしたい」と提案してもいいのではないだろうか。ザッケローニ時代には、よくそういう話をしていたし、監督に意見を言うのは欧州では普通のことだ。
 
Jリーグでも川崎や浦和などスタイルを持つチームは見ていて楽しいし、強い。スタイルという軸ができれば対戦相手やアウェーの環境によって戦い方を変えることも、またそれを押し通して勝つこともできる。
 
 ブラジル・ワールドカップ以降、日本代表は空白の時間を過ごしつつあるように思える。その無駄を活かすためには、これからの決断が重要になる。

取材・文:佐藤 俊(フリーライター)