ロシア・ワールドカップのアジア最終予選、第4戦のオーストラリア戦は1対1のドローに終わった。いろんな批判があるけれど、アウェーの地でしかもグループ最強のライバルと目されていたオーストラリアと戦って、勝点1を取れたのだから、最低限のノルマはクリアしたと見ていいんじゃないかな。
 
 もちろん理想を言えば、日本にはつねにアジア王者らしい戦いを見せてほしいという考えもある。オーストラリア相手とはいえ、もっと攻撃的に戦ってほしかったし、ボール支配率33パーセントという数字も決して満足できるものではない。
 
 ただ、現実的に考えれば、ハリルホジッチ監督が選択した守備的な戦い方には納得がいく。首位のオーストラリアに対して、怪我人が多くコンディション的に問題を抱えていたチーム事情を踏まえれば、真っ向勝負を挑むのはなかなかのリスクが伴う選択だったはずだ。
 
 そのオーストラリア戦で、日本はじつにアウェーらしい慎重な試合運びを見せていた。チャンスらしいチャンスも少なかったけれど、ピンチらしいピンチもなかったのは、裏返せば、慎重な試合運びを見せていた証拠である。守備的な布陣を敷いたうえ、最後の交代カードも、オーストラリアの強みであるセットプレーの得点力を封じ込むために、高さのあるセンターバックの丸山をピッチに送り込む徹底ぶりだった。ハリルホジッチ監督の強烈なリアリストの一面を垣間見た気がする。
 
 その一方で、“本田1トップ”というぶっつけ本番の戦術をチョイスする大胆さにも驚かされた。ただ、これも冷静に考えれば、岡崎の代役はほかに誰が見当たるのか。守備的に戦うのであれば、屈強なオーストラリアのディフェンス陣と対峙できるフィジカルを持ち合わせ、前線でタメが作れる選手が必要だったのも理解できる。
 
 違った戦い方を求めるならば話は別だが、岡崎が離脱したなかで、そうしたプレーヤーが本田以外に見当たらないというのが現実だったと思う。浅野や小林悠は、中央で身体を張ってボールキープするポストタイプではない。
 
 結果的に、本田のスルーパスから原口の先制ゴールが生まれたわけだから、その采配は的中したと言える。誤算だったのは、本田のコンディションが予想以上に悪かったこと、そして香川が守備的な戦いのなかで存在感を発揮できなかったこと。守備を固めてチャンスを見出そうとしていた日本にとって、前線で縦のラインを形成していた本田と香川がいつも通りの活躍ができていれば、ポゼッション率を含め、結果も違っていたものになっていたはずだ。
 
 コンディションを重視した采配をするならば、本来、本田や香川は起用すべきではない。しかし、それでも大一番で、本田や香川はスタメンで出場している。それはなにを意味するのか。はっきり言えることは、本田や香川以上に、ハリルホジッチの信頼を勝ち得る選手が出てきていないことだ。
 
 攻撃陣で言えば、ハリルホジッチのファーストチョイスのグループのなかに、本田、香川、岡崎に続いて、原口が名乗りを挙げたのはポジティブな要素だろう。オーストラリア戦で失点に絡んだものの、彼に求められるべきは攻撃面での貢献度であって、守備面でのそれではない。失点に関与しただけで、3試合連続ゴールを奪ったという彼の貢献度が落ちるわけではない。原口はファーストグループに入りつつある存在だろう。
 イラク戦とオーストラリア戦。前半戦の山場となったこの2連戦を通して、日本はイラク戦で山口の劇的な決勝ゴールで息を吹き返し、オーストラリア戦では今回の最終予選でもっとも厳しい試合であることを認識して、守備的な戦いをもって勝点1を手にした。チームとしては自信回復のレベルまで到達していないまでも、最悪の状況は脱したんじゃないかな。
 
 みんなも感じていると思うけれど、今回の予選を通して、日本は決して盤石の強さを見せることができていない。アジアでの絶対的な強さを取り戻すためにも、一つひとつの試合をしっかりと戦っていくことが大事になる。強いチームの共通条件は、なにより“負けないこと”なのだから。
 
 振り返れば、初戦のUAEに足もとをすくわれたことで、チームは自信を失ってリズムを崩していった。チームとして安心できる戦いを見せることができていないのだから、オーストラリア戦のようなしたたかな戦い方も、最終予選を勝ち抜くうえでのオプションとして必要だ。
 
 次戦はサウジアラビア戦だが、オーストラリア戦と状況が異なるのはホームゲームであるということだ。今節、UAEを3対0で下して首位に浮上してきたサウジアラビア。奇しくも、首位チームとの戦いが続くことになったが、ハリルホジッチはどんな戦い方を見せるのか。
 
 ホームでは勝点3が求められるだけに、守備的な戦いに終始するわけにもいかない。勝利を求めるにはある程度の“勢い”が必要だ。そういった意味では、いまもっとも勢いがある原口にかかる期待は大きい。チームとしても自信を取り戻せるチャンスだと捉えて、ポジティブな姿勢で“首位叩き”をしてほしい。