「イングランドのウェイン・ルーニーの時代もついに終わるのでしょうか?」
 
 10月11日の夕刻、ロシア・ワールドカップ欧州予選のスロベニア戦前のニュース番組で、ITV局の女性アナウンサーはそう言っていた。
 
 ルーニーにとっては、怪我を除けば13年間の代表キャリアで初のスタメン落ちとあって、同日朝の国内各紙では、『デイリー・メール』紙の「アイル・ビー・バック」や「まだ終わらない」という方向性の見出しが大半を占めていた。「代表引退はない」とする当人の意思に加え、悔しさを呑み込んで前日会見に臨んだ代表主将への敬意もあったに違いない。
 
 そんな中で迎えたスロベニア戦では、ルーニーは73分からピッチに立ったものの目立った活躍ができずに、チームもスコアレスドローに終わっている。
 
 そんなルーニーの先発復帰への現実は厳しいものがある。
 
 メディアの論調にしても、セントラルMFでプレーして低調だった3日前のマルタ戦(○2-0)後には「スタメンには居場所なし」と言い放ち、所属先のマンチェスター・Uでは同様の意見が9月中に高まり、同月24日のプレミアリーグ6節(レスター戦)からベンチに降格した。
 
 ジョゼ・モウリーニョ新体制下で、当初のトップ下を経て、2列目アウトサイドとボランチでも使われた末のスタメン落ちだった。これは新監督がマンチェスター・Uの最強布陣を模索中でもある証拠だが、ルーニーの分が悪いことはもはや明らかだ。
 
 前線の軸となる1トップはズラタン・イブラヒモビッチが実力で物にした。その老獪な新CFのサポート役となる2列目に、ルーニーが失いつつある“速さ”を求める指揮官の意向は頷ける。
 
 中盤の主役は、やはり、31歳目前のルーニーが失っているダイナミックな攻撃力が光るポール・ポグバが担うべきだろう。かといって、この23歳の引き立て役に専念できるほどルーニーは守備的ではない。
 
 代表でも、前線には同じマンチェスター・Uのマーカス・ラッシュフォードとジェシー・リンガードが台頭し、トップ下は「デル・アリのもの」という認識が一般的だ。
 
 セントラルMFでは、マルタ戦で抜群のパフォーマンスを示し、リバプールでも中核となりつつあるジョーダン・ヘンダーソンと、スロベニア戦では低調だったもののトッテナムで主力に成長したエリック・ダイアーがコンディションの良さと将来性で優位にある。
 
 そもそもルーニーは、こうした現状が示すように奪回を狙うポジション自体が定まらないのだ。それだけハイレベルな「万能型フットボーラー」だったということだが、肉体の衰えを隠せない今、キャリアの延命を図るための転向先が絞れない状況は辛い。少なくとも、昨シーズン後半に自らが意識した「中盤」でチャレンジする時間が欲しいところだろう。
 
 マンチェスター・Uでなら、4-3-3へのシステム変更が前提になるが、ポグバとの呼吸が微妙なマルアン・フェライニではなくアンデル・エレーラをアンカーに置き、その手前で機を見て上がるインサイドハーフの一角を務める姿は想像できる。
 
 照準が定まれば、MFとして問題視されるポジショニングとマークの意識改善も強めやすく、本格的なMF転向路線は、初陣となったマルタ戦でセンターハーフを任せたガレス・サウスゲート暫定代表監督も歓迎するだろう。
 
 マンチェスター・Uと代表のキャリアで初とも言うべき純然たる「定位置」争いを戦い抜けば、ルーニーは“アイル・ビー・バック”を地で行けるかもしれない。
 
文:山中忍
 
【著者プロフィール】
山中忍/1966年生まれ、青山学院大学卒。94年渡欧。イングランドのサッカー文化に魅せられ、ライター&通訳・翻訳家として、プレミアリーグとイングランド代表から下部リーグとユースまで、本場のサッカーシーンを追う。西ロンドン在住で、ファンでもあるチェルシーの事情に明るい。