今シーズンのプレミアリーグは、ジョゼップ・グアルディオラ、ジョゼ・モウリーニョ、アントニオ・コンテという世界トップレベルの指揮官たちが新たに加わり、大きな話題を呼んだ。
 
 しかし、開幕してから最も印象的で、ピッチ内外で魅力的なパフォーマンスをしているのはリバプールのユルゲン・クロップだろう。
 
 2015年の10月に前任のブレンダン・ロジャース(現・セルティック監督)から仕事を引き継いだ。1年目は期待されたほどの結果を残せずにプレミアリーグでは8位に沈み、欧州への切符を掴むことができなかった。
 
「責任は前任者のロジャースの補強にある」と英国メディアの多くは綴ったが、クロップは無冠に終わったシーズンの弁解をするためにロジャースを責めることは、決してしなかった。
 
 クロップは周囲の雑音を振り払い、選手たちをきっちりと評価。誰をチームに残し、起用していくべきなのか見定めていた。今年1月の移籍市場で大きな動きを見せなかったのはそうした背景があるからだろう。そうしたなかでクロップは、若手にチャンスを与えた。これもクラブにとっては好影響をもたらし、現在チームはCL出場圏内の4位と好調をキープしている。
 
 熱血漢クロップのパッションは伝染する。
 
 ゴールを祝う時も彼はまるでピッチに立っているかのように選手と一緒になって激しく、身体いっぱいに喜びを表現する。おそらく選手たちもクロップのためにちょっとした怪我ならば、勇んでピッチに戻るだろう。
 
 リバプールのファンからもクロップはリスペクトを受ける存在になったようだ。
 
 リバプールファンが監督の必要条件に挙げるのが「情熱的であること」だ。彼らの監督は熱意に溢れたファンと同じくくらいのスピリットを持っていなければならないのだ。クロップはその資質を十分に持っていると思う。
 
 最近、クロップは英国メディア『スカイスポーツ』の人気番組『マンデーナイトフットボール』に出演オファーを引き受けたことが話題となった。
 
 プレミアリーグの現役監督がこういったテレビ番組に出演することは本当に珍しい。クロップは快活に自身の理想とする戦術について語ってみせた。
 
 リラックスしながら語る姿からはリバプールでの監督生活が快適なものであるかを示すものであった。
 
 クロップは1年で何かしらを手にすることに興味を持っていない。彼は将来を見据えたチーム作りをしていくことに関心があると就任1年目で感じさせられた。
 
 その志向はリバプールが求めているものにマッチする。短期的な目標設定をするよりも、ビル・シャンクリー(1959〜79年まで指揮)やボブ・ペイズリー(1974〜83年まで指揮)のような長期的で強い政権を築いてほしいとクラブも思っているに違いない。
 
 クロップもクラブとファンが同じ考えを持ってくれていることを幸せに思っていることだろう。
 
 また、プレミアリーグのファンもクロップのキャラクターと戦術を好意的に捉えていると私は思う。彼の難点を探すのはそれほどまでに難しいのだ。
 
文:スティーブ・マッケンジー
 
スティーブ・マッケンジー (STEVE MACKENZIE)
profile/1968年6月7日にロンドンに生まれる。ウェストハムとサウサンプトンのユースでのプレー経験があり、とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からサポーターになった。また、スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国の大学で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝に輝く。