Aマッチウィーク直前のエンポリ戦(10月2日のセリエA7節)に3-0で快勝し、アタランタに敗れた2位ナポリとの勝点差を4に広げた首位ユベントス。この一戦でマッシミリアーノ・アッレグリ監督にとって最大の収穫は、その5日前のディナモ・ザグレブ戦(チャンピオンズ・リーグ2節)に続いて、ゴンサロ・イグアインとパウロ・ディバラの2トップが揃ってゴールを挙げたことだろう。
 
 イグアインのユーベ移籍で実現したこのペアは、昨シーズンのセリエA得点王ランキング1位と2位の組み合わせというだけでなく、生粋の「ゴールマシン」であるイグアインと、セカンドトップとトップ下の特性を併せ持った「10.5番」とでも呼ぶべきモダンアタッカーのディバラというプレースタイル的な相性の良さもあって、ヨーロッパ最強レベルの2トップに“化ける”ことが期待されていた。
 
 しかしシーズン序盤は、イグアインが期待通りにゴールを積み重ねる一方で、ディバラはプレーエリアがゴールから遠くなりがちでフィニッシュに絡む頻度が大きく下がるなど、2人のプレーがなかなか噛み合わない印象が強かった。
 
 実際、ディバラは2節ラツィオ戦と3節サッスオーロ戦でひとつずつアシストを決めたものの、開幕から1か月が過ぎてもゴールはゼロ。やっとシーズン初ゴールを挙げたディナモ・ザグレブ戦でも、イグアインが交代するまで70分同時起用されて1得点ずつ決めながらも、2人のパス交換は1本もなしと(イグアイン→ディバラもその逆方向もゼロ)、まだコンビネーションが確立したとはお世辞にも言えない状況だ。
 
 昨シーズンにディバラの相棒を務めたマリオ・マンジュキッチは、DFを背負って敵2ライン(DFとMF)間に引いたりサイドに流れたりと、積極的に前線にスペースを作り出すための動きを見せる自己犠牲精神の強いCF。一方でイグアインは、時折はポストに引く動きを見せるとはいえ、原則的には最前線中央に常駐して常にフィニッシュを狙うタイプだ。
 
 マンジュキッチと比べるとフィニッシュゾーンとなるペナルティーエリア中央の占有率が明らかに高く、その分だけディバラが入り込んでフィニッシュに絡む頻度が低くなる傾向が強い。
 
 イグアインはディナモ・ザグレブ戦後に、「ディバラにはもっと近くでプレーしてほしい」とコメントしているが、そのためには彼自身がモビリティーを高めてスペースを作り出す必要があることは明らかだ。
 さらにシーズン序盤は、やはり新戦力でディバラと仕掛けのプロセスを分担する役割が期待されたミラレム・ピャニッチが、コンディションと戦術適応の問題からスタメンを外れることが多く、中盤と前線を結ぶチャンスメーカーとしての役割をディバラが一手に担わざるをえないという事情があった。これもまた、ディバラがゴール前まで攻め上がってフィニッシュに絡む頻度を下げる要因となっていたのだ。
 
 しかし、ここ最近になって左インサイドハーフとしてスタメン定着を果たしたピャニッチが、トップ下のゾーンでチャンスメークに絡む頻度が上がり、それに伴って前線の流動性も高まるという形で、徐々にではあるが好循環が生まれつつあるようにも見える。
 
 先のエンポリ戦では、ディバラが中盤の組み立てに参加する頻度が下がった分だけプレーエリアが前に上がり、イグアイン、ピャニッチとの連携も高まっていた。
 
 イグアインはここまで公式戦通算9試合で7得点と、9000万ユーロ(約108億円)の移籍金に応える期待通りの結果を出している。
 
 ここにディバラ、そしてピャニッチが絡んでのコンビネーションが機能するようになって、仕掛けとフィニッシュのバリエーションが広がれば、ユーベはさらに多くの決定機を作り出し、得点力はさらに高まるに違いない。もちろん、ディバラがフィニッシュに絡む場面もさらに増えてくるだろう。
 
 ユーベのアッレグリ監督は、決まったメカニズムや攻撃パターンに選手を当てはめるタイプ(アントニオ・コンテ前監督がそうだった)とは異なり、試行錯誤を重ねながら個々のプレーヤーが持ち味を引き出し合える配置やタスクを煮詰めていくタイプ。2010〜14年のミラン時代から、序盤は取りこぼしが多いが、チームが一旦固まった後はコンスタントに結果を残すというシーズンが多い理由もまたそこにある。
 
 カルロス・テベス(現ボカ)、アンドレア・ピルロ(現NYシティ)、アルトゥーロ・ビダル(現バイエルン)という主力3人が一気に抜けた昨シーズンは、試行錯誤のプロセスに3か月を費やし、その間は結果が出ずに苦しんだ。10節終了時には12位に沈んでいたほどだ。
 
 しかし今シーズンは、チームとしての完成度はまだ低く、かなりの伸びしろを残しているにもかかわらず、すでに首位に立って独走体制を固めつつある。
 
 イグアインとディバラの連携が本格的に機能しはじめたら、はたしてユーベはどんなチームに化けるのか――。今後の展開が楽しみだ。
 
文:片野道郎
 
【著者プロフィール】
1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌では現役監督とのコラボレーションによる戦術解説や選手分析が好評を博す。