今季の開幕当初、なでしこジャパンのリオ五輪予選敗退の影響は、心配されていたよりも小さかった。自国開催ということもあり、各メディアが豊富に伝えた五輪予選が、いわば?プレシーズントーナメント″のような役割を果たし、中断期間前の平均観客動員数(図)は、昨季(女子ワールドカップ中断前の試合を対象に集計)を上回った。

 しかし、リオ五輪後のシーズン後半にかけて、人気に陰りが見える。女子ワールドカップ準優勝をカンフル剤に1.5倍近く伸びた昨季とは逆に、リオ五輪で魅力をプレゼンできなかったことで、中断期間後は観客数を減らし、年間平均観客数では、昨季を下回っている。
 
 さらに、アメリカのシアトル・レインに移籍した川澄奈穂美(10月12日にINACへのレンタル復帰を発表)、負傷療養中の宮間あやら代表の主力選手を欠いたINAC、湯郷ベルは、中断前の3分の2程度まで観客数が落ち込んでいる。
 
?リオ・ショック″を受けるなか、リーグの人気を支えた最大の功労者は、今年1部に昇格したばかりの新星、長野Lだ。第16節を終えて3位につけ、成績、観客動員数ともに好調。五輪予選でブレイクした横山久美を中心に「肉を切らせて骨を断つ」超攻撃的サッカーで、1試合平均で2得点を上回る。魅力的なサッカーを展開するチームとあって、上位陣との直接対決では、6,733人(INAC戦)、5,160人(ベレーザ戦)もの観客が、昨年完成したばかりの新スタジアムに足を運んだ。
 
 また、長野Lの成功には、本田美登里監督の存在は欠かせなかった。「2,000人、3,000人のお客さんを毎回集めるチームを作るのは、なでしこリーグで戦えるチームを作る以上に難しい」と言う指揮官は、地元メディアやチームを支えるスタッフとの信頼関係構築など、湯郷ベルを指揮した際に得たノウハウを、長野Lに注ぎ込んだのだ。
 
「点をとること。そして試合に勝つこと。それが試合を見に来てくれるお客さんを増やし、チームを支えるお金を集めることに繋がっていくと思います」
 
 本田監督がそう語るように、90分間で観客に喜怒哀楽できる場面をどれだけたくさん提供できるか――。オーソドックスだが、?リオ・ショック″を抱えるなでしこ人気を回復するために、最も重要なアプローチだ。
 また今季、なでしこリーグのピッチ内には、新風が吹きこんだ。
 
 武仲麗依(INAC)、木下栞(長野L)、坂本美保(長野L)、浜田遥(仙台L)といった2012年のU-20“ヤングなでしこ”や、杉田妃和(INAC)、北川ひかる(浦和L)など2014年U-17女子ワールドカップを制した“リトルなでしこ”を中心に、若手が確実に出場機会を増やし、ベテランに負けじと躍動した。
 
 リーグ得点王も、16節終了時点で、ベレーザの田中美南(18得点)、長野Lの横山(15得点)による2012?ヤングなでしこ″のメンバーによる一騎打ちになっている。
 
 2節を残して、独走状態で連覇を成し遂げたベレーザの勝因も、若手とベテランがうまくブレンドしたことだ。昨季はベテランに引っ張られていたチームも、今季は若手が軸となって牽引。“ヤングなでしこ”の田中や中里優、今季から10番を付けてエースの自覚が芽生えた籾木結花、ハードワークで攻守に貢献した長谷川唯、隅田凛らU-20女子代表のメンバーが、自ら試合を決する強い意志を、それぞれピッチ上に発露した。
 
 そして若手が解決できない問題には、ベテランが解答を示してみせた。大黒柱の坂口夢穂は、重要なゲームで得点を奪い、チームを救った。さらに有吉佐織は後方から攻撃をサポート。キャプテンの岩清水梓は、山下杏也加、清水梨紗、村松智子ら若い守備陣をまとめて、16節終了時点でわずか6失点に抑えた。
 
「開幕時の選手数は18人。どうなっちゃうのかなと思った」(森栄次監督)
 
「やっているほうは、それほど楽じゃありません。相手のスタミナを奪うためにボールを動かさなければいけないし、1点取られたらどう転ぶか分からない試合もあった」(岩清水)
 
 監督と選手は苦悩を口にするが、まさに盤石の強さだった。前線からハードワークを厭わず、パスコースを限定する組織的な守備を披露。相手がフルパワーで攻めてきている時間帯を凌ぎ、相手が疲れたところでしっかりとゴールを奪う。理想的な世代融合が、シーズンを通しての安定感を生んだ。
 
 各年代の代表に選手を送り出す際、森監督は「まず自分のストロングポイントを出して、経験を積んできなさい」と声をかけるそうだ。舞台に臆することなく、自分の特長を発揮できる若手が増えていけば、代表も、リーグも、さらに面白くなるだろう。

取材・文:西森 彰(フリーライター)