6月のキリンカップのブルガリア戦から、少なくとも日本代表での香川真司は、深い闇の中を彷徨っている。
 
 この試合で負傷退場した香川は、同大会のボスニア・ヘルツェゴビナ戦で出番はなし。最終予選の9月シリーズ(UAE戦、タイ戦)ではアタッカー陣で唯一、2試合ともフル出場したが、目に見える結果を残せなかった。
 
 そして10月シリーズの一発目、イラク戦ではついにスタメン落ち。清武弘嗣にトップ下の座を明け渡した。それでも、続くオーストラリア戦では先発に復帰し、90分間、ピッチに立ち続けたが、シュート1本すら打てなかった。
 
 オーストラリア戦はチームとして超守備的な戦いを強いられた。トップ下の香川はディフェンスに忙殺されて、ラインも下がり、「そこから押し上げていくには、前線との距離もあった」と苦悩を語る。
 
 守備的な戦術の中で、守備をするのは当たり前だ。精力的なプレスバックは、たしかにチームを何度も助けていた。問題は、そこから攻撃面でどう“違い”を作り出すか。攻撃のタクトを振るうべき自分が、ゴールを奪うためにどう活路を見出していくかだ。香川ほどの実力者だからこそ託せる難問であり、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督も期待していたはずだ。
 
 その証拠に、指揮官は10番をベンチに下げなかった。香川自身、「90分をやり終えて改めて感じたというか、途中交代はまったく考えていなかったし、この試合に関しては割り切ってやるしかない」と腹をくくっていた。
 
 ただ、81分に小林悠の負傷で清武を右ウイングで投入せざるを得ない事情はあったにせよ、その前に交代を命じられてもおかしくはなかった。それほど香川のパフォーマンスは冴えなかったが、ハリルホジッチ監督は我慢強く待った。しかし、答えは提示されなかった。
 
 当の本人は「(原口)元気や(浅野)拓磨であったり、サイドを中心にカウンターの起点を作る以外、なかなか攻撃の筋道が見えなかった。大きな課題」という。
 
 これが、今の香川である。攻撃を繰り出すには難しいシチュエーションでも、糸口をひねり出すのがトップ下の仕事のはずだ。しかし、彼には“筋道が見えなかった”。
 ディフェンスに力を入れていたのは、香川だけではない。全員が高い守備意識でプレーをしていた。そのなかで、左ウイングの原口は先制点を決めた。CFの本田圭佑、右ウイングの小林はそれぞれ決定機を演出している一方で、繰り返すが、香川だけが自らシュートを放つ場面はゼロだった。
 
 チームとしてディフェンシブな戦い方を選択したというエクスキューズはあるにせよ、守備面での貢献だけを評価される香川に、なんの魅力も値打ちもない。前線との距離が開きすぎていたと嘆くより、そこをつなぐための解決策を示してほしかった。
 
 オーストラリア戦の働きぶりを見れば、別に香川である必要はなかった。スタミナがあり、守備で手を抜かず、与えられた戦術を愚直にこなせる選手であれば、それで十分だった。
 
「(相手の)インサイドハーフは僕たちがつくと決めていた。そこはやれて当たり前。そこからプラスアルファで、攻撃に切り替えるという意味では、まったくできなかった」
 
 救いは、香川本人が不甲斐ない自分をよく分かっていることだ。しかし、時は待ってくれない。1か月後には、首位サウジアラビアとのホームでの一戦が控えている。これもまた厳しいゲームになると予想されるが、チームとして悪い流れを好転させるチャンスでもある。
 
 そこに香川はいるのか。周囲を納得させる活躍を見せられるのか。もはや、猶予はない。年内最後の代表戦で、プライドを見せてほしい。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

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