2013-14、14-15シーズンと、2シーズン連続で入れ替え戦の末に何とか1部リーグ残留を果たしていたハンブルク。ブンデスリーガで唯一2部リーグに降格していないクラブとしての意地だけは見せた。
 
 だが、なかなか安定しない成績にファンが満足するはずもない。
 
 10位とまずまずの順位で終えた昨シーズン終了後、首脳陣は古豪復活へと大きな動きを見せた。
 
 クロアチアのメガタレントと評価されていたハリロビッチ(←バルセロナ)、単独で状況打破できるドリブル力を持つクロアチア代表のMF、コスティッチ(←シュツットガルト)、そしてリオ五輪で優勝したブラジル代表のD・サントス(←アトレティコMG)を次々に即戦力を獲得したのだ。
 
 今シーズンこそ――。
 
 ファンも久しぶりに大きな期待を持ちながら、シーズンインを待ち望んでいたことだろう。
 
 だが、蓋を開けると、いつものハンブルクだった。
 
 DFBカップ1回戦では3部リーグのツビッカウに勝利したが、ブンデスリーガではここまでの6試合で、勝点わずか1の最下位という惨憺たる有り様である……。
 
 クラブも、監督も、ファンも、そして選手も、一気に優勝争いにまで絡めるとは思っていなかっただろうが、まさかここまで負けが混むとは予想もしていなかったはずだ。
 
 特に痛かったのは、3節ライプツィヒ、4節フライブルクと、昇格組相手に連敗を喫してしまった点だろう。それも、結果だけではなく内容的にも、自分たちが何をすべきかというのがほとんど見られなかった。
 
 開幕時の監督、ブルーノ・ラッバディアは5節バイエルン戦後に解任されたが、SDのバイアースドルファーはその理由を、以下のように語った。
 
「強豪相手に守りを固めて善戦というのは昨シーズンもできていた。我々が手掛けなければならないのは、守備を固める相手にどのようにチャンスを作るかであり、その部分で発展が見られなかった」
 
 まさに、この攻撃力に関して、首脳陣の思惑と監督の手腕が噛み合わなかったことが、スタートダッシュ失敗の最大の要因かもしれない。
 
 ラッバディアは、情熱的なアプローチによる選手の心理マネジメントに長けた監督だ。歴任したレバークーゼンやシュツットガルトのように、実力はありながらも、走ったり、戦ったりすることに取り組み切れていないチームでは、彼から発散されるエネルギーが大きな刺激を与えてきた。
 
 そんな彼の存在があったからこそ、昨シーズン、ハンブルクは10位という順位で終えることもできたと言えよう。
 昨シーズン、ハンブルクを10位まで引き上げたラッバディア監督だが、チームとしてそこから力の上乗せをしようとした時に、違いを生み出す選手を使い切るだけの手腕が彼にあるかとなると、正直、心もとなかった。
 
 現在、チームの攻撃にアクセントを加えるはずだったハリロビッチは完全に居場所を見失い、出場機会も得られていない(5試合の途中出場で総出場時間は92分)。最初こそ、監督の話を真面目に聞いていたが、ここ最近はモチベーションの低下も著しかったという。
 
 もちろん、ハリロビッチのフィジカル能力や守備での戦術理解などが、ブンデスリーガで求められるレベルに達していないというのもあるだろう。だが、彼の持つ能力を引き出すサポートがあったのだろうか。
 
 チームとして、全ての試合が悪かったわけではないし、試合のなかで良い流れもあった。だが、6試合で2得点という数字はあまりにも少な過ぎる。
 
「積極的に守備をして、ボールを奪ったら素早く攻める」
 
 コンセプトとしては明瞭だ。だが、それだけではゴールへの道筋は見えてこない。
 
 フライブルク戦後、酒井高徳はこう指摘していた。
 
「パスコースを作りに来てくれないというか、あいつが何とかするだろう、と待っている感じ。選手1人ひとりがその時に考えていることを、チーム全員で共有できていない」
 
 この言葉通り、ボールを持った選手が“迷子”になってしまっているシーンが、あまりにも目立った。
 
 新監督としてマルクス・ギスドルが迎えられ、代表ウィークによる中断期では、急ピッチで整理を進められた。
 
 この監督交代が、どれだけポジティブな変化をもたらせるか。今後、ボルシアMG、フランクフルト、ケルン、ドルトムントと難敵との連戦が待っているだけに、すぐに結果は出ないかもしれない。
 
 それでも、そのなかで信じるに足る戦い方を見出すことができれば、その先に向けて歩み続けることもできる。もしできなければ、下位からの脱出は相当難しいものになる。
 
文:中野 吉之伴
 
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/ドイツ・フライブルク在住の指導者。2009年にドイツ・サッカー連盟公認のA級コーチングライセンス(UEFAのAレベルに相当)を取得。SCフライブルクでの研修を経て、フライブルガーFCでU-16やU-18の監督、FCアウゲンのU-19でヘッドコーチなどを歴任。2016-17シーズンからFCアウゲンのU-15で指揮を執る。1977年7月27日生まれ、秋田県出身。