第2ステージの優勝争いと言っても、もしかしたら一部の選手たちはピンときていないのかもしれない。実際、10月1日のJ1・第2ステージ14節でG大阪に4−0と大勝した浦和の柏木陽介も、次のようにコメントしていた。
 
「引き分けでもいいというスタンスで試合に臨んでいる。たとえ川崎が勝っても、うちが負けなければチャンスはありますから。(中略)慌てない、攻め急がない。今は追いかけている立場なので、落ち着いてプレーできている」
 
 G大阪戦の前から浦和が第2ステージで首位に立っていながら、なぜ「今は追いかけている立場」なのか。柏木のコメントはつまり、年間勝点を意識したものなのだ。
 
 年間勝点は第2ステージ残り4節の時点で、川崎が1位、浦和は2位だった。そのうえ、浦和がG大阪を下した段階で同日のナイトゲーム・神戸×川崎戦はまだ行なわれていなかったので、柏木は「追いかけている」と言ったのだ(その後、川崎が神戸に敗戦。年間勝点で浦和が1位に)。
 
 昨季以上に年間勝点を重視したレギュレーションに変更された今季のチャンピオンシップ(以下CS)は、ステージ制覇しただけでは大きなメリットが得られない。
 
 CSの大会方式に目を向ければ、「年間勝点1位のチームは常に決勝へシードされる」、「準決勝と1回戦の試合会場は年間勝点上位チームをホームにする」ところまでは昨季と同じなのだが、「勝敗の決定方法」が違う。
 
 一発勝負の1回戦と準決勝のそれは、「90分間(前後半各45分)の試合を行ない、勝敗が決しない場合は年間勝点上位チームを勝者とする」。ホーム&アウェー方式の決勝のそれは、「2試合が終了した時点で勝利数が多いチームを優勝とする。2試合が終了した時点で勝利数が同数の場合には、次の順で決定する。?2試合の得失点差、?2試合におけるアウェーゴールの差、?年間勝点1位チーム」というものだ。
 
 昨季からの変更点をひと言で表わすなら、「延長戦の廃止」になる。昨季のCS準決勝では年間勝点3位のG大阪が埼玉スタジアム2002で同2位の浦和を延長戦の末に下したが、90分間(決勝は180分間)で決着がつかない時点で年間勝点上位チームの勝利になる今季は理論上、いわゆる下剋上が起きにくい。
 
 リーグチャンピオンへの近道は年間勝点1位──。となると、年間勝点ですでに3位以内を確定し、CSの出場権を手にしている浦和と川崎にとっては第2ステージ優勝よりも年間勝点1位のほうがプライオリティは高いはずだ。
 
 1位・浦和と2位・川崎の年間勝点差は、残り3節でわずかに“1”。リーグ4連勝中の浦和がこのまま逃げ切るのか、直近の5試合は勝ち負けを繰り返す川崎が勢いを取り戻して巻き返すのか。リーグ終盤の最大の見どころは、年間勝点1位の座を巡る両雄のデッドヒートになる。
 
 次の15節が行なわれるのは10月22日。代表戦(同6日のイラク戦、同11日のオーストラリア戦)、ルヴァンカップ(同5日、同9日の準決勝、15日の決勝)を挟んで再開されるわけだが、3週間に及ぶこの“中断期間”の過ごし方も浦和と川崎の命運を分ける大きなターニングポイントになるかもしれない。
 第1ステージを制してCS出場権を獲得した鹿島も、できれば年間勝点で3位以内を確保したい。前述したように、「年間勝点 > ステージ優勝」という図式があるため、仮に年間勝点4位以下に転落するとCSでかなり不利になる。
 
 とはいえ、直近の5試合は2勝1分2敗と不安定な鹿島も、残り3節で年間勝点4位のG大阪、同5位の柏と8ポイント差、同6位の大宮とは9ポイント差。しかも、鹿島は得失点差でも後続の3チームを大きくリードしている。余程のアクシデント(例えばリーグ3連敗)がないかぎり、年間勝点3位以内は固い。
 
 ただ、一方で浦和、川崎との年間勝点差はそれぞれ「8」と「7」であり、鹿島がここから上位2チームを逆転するのも難しい。
 
 仮に鹿島が年間勝点3位を確定させたとして、彼らにとって最悪なシナリオは浦和、川崎以外のクラブが第2ステージで優勝するパターンだ。そうなった場合、第2ステージ最終節の3日後にCSの1回戦(11月6日)を戦うことになる。準決勝が11月23日開催というスケジュールを考えれば、1回戦は回避したい。
 
 その意味で鹿島が警戒しているのは神戸だろう。第2ステージでは7戦無敗(6勝1分)と絶好調で、14節を終えた現時点で浦和に勝点5差の2位につけている。19ゴールで得点ランクのトップを行くレアンドロの決定力、技巧派ペドロ・ジュニオールのチャンスメイクを主武器に、10節に浦和、直近の14節に川崎を破った神戸の実力は侮れない。
 
 年間勝点で8位に甘んじている神戸がCSに出場する道は、もはや第2ステージで優勝するしかない。いわば、2ステージ制ならではの話題を提供しているのが今の神戸であり、彼らの快進撃がどこまで続くかも見どころのひとつだ。
 
 面白いのは、第2ステージの最終節に鹿島と神戸の一戦が組まれているところだ。神戸がそこまで優勝の可能性を残していれば、大注目のゲームになる。
 
 2ステージ制とCS方式は今季限りで、2017年シーズンからは通年のリーグ戦に戻る。
 
 来季よりライブストリーミングサービス『DAZN』と10年間で約2100億円の放映権契約を締結したことなどで2ステージ制を見直す流れになったわけだが、今季は今季で通年制にない醍醐味をサッカーファンに提供できているのではないか。神戸の躍進がまさにそうであり、“ミラクル・ヴィッセル”が第2ステージ制覇を成し遂げればCSへの関心度はさらに高まるはずである。
 
 「年間勝点1位がそのままリーグチャンピオンにならないのはおかしい」との意見ももちろんあるだろうが、2ステージ制特有の楽しみ方があるのもまた事実だ。ラスト3節でどんなドラマが生まれるのか。興味深く見守りたい。

文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト)