病気や事故で手足を切断した選手が松葉杖をついてプレーする、第6回日本アンプティサッカー選手権大会が10月1日と2日、神奈川県川崎市の富士通スタジアム川崎で行なわれた。
 
 決勝は、昨年同様FCアウボラーダとFC九州バイラオールの戦いに。スタンドに詰めかけた約250名の観客とともに、日本アンプティサッカー協会最高顧問セルジオ越後氏、日本障がい者サッカー連盟会長北沢豪氏、それに日本サッカー協会会長の田嶋幸三氏が、熱い戦いを見守った。
 
 さて記者は、この3年で6度のアンプティサッカー大会を見てきたが、今大会の収穫は、ピッチ上で女性選手同士が相まみえる試合があったこと、そして観客が増えたことだったように思われる。春に開催されたレオピン杯では初めて女性選手がゴールも決めたが、今回は千葉・北海道合同チームにも女性選手が誕生した。
 
 佐藤直美さんは、障がい者スノーボードの大会で義足の女性と知り合ったことをきっかけに、AFC BumbleBee千葉の体験会に参加することになる。

 「サッカーは好きでしたがやるのは初めてで。(アンプティサッカーを)始めて3カ月で迎えたこの大会は、不安ばっかりですね。でも、ユニークなチームメートが教えてくれるので、なるほどなと思いながら、なんとかプレーしました」と語った。
 
 もともとサッカー経験のあった九州の秋田真弓さんは、女性選手が増えたことを歓迎する。「ピッチ上でも少し言葉を交わした」と笑って教えてくれたが、プレーでは壁にぶつかった。
 
「2回目の大会、チームで前回のようにゲスト扱いされなくなったことが、スポーツであり、現実なんだな、と感じました。昔サッカーをしていた時のイメージが残っていて、『できるはずだ』という悔しさと歯がゆさがあって。それを忘れないようにしたいと思いますし、チームメートとして、もっと貢献したいと思っています」と前を向いた。
 セルジオ越後氏は2日間大会を見守り、今回の成果を「子どもや女性の選手が増えてきたこと」だと語った。
 
 「2020 年のおかげで、車椅子ラグビーや車椅子バスケットの認知が広がっていると思います。でも、パラリンピックの公式種目ではない障がい者スポーツのほうが実は多くあって、アンプティサッカーもそのひとつ。東京パラリンピックが成功するには、障がい者も運営に参加したり、企業がボランティアを応援するなど、障がい者スポーツ文化がもっともっと広がっていくことが必要だと感じています」 
 2日間で11試合が行なわれた第6回日本アンプティサッカー選手権大会。今大会には約80 名いる登録プレーヤーのうち、約70名が参加した。春のレオピン杯、秋の日本選手権を合わせると、決勝戦のカードは、5大会連続でアウボラーダvs九州となり、今までの2倍以上となる約250名の観客から、多くのプレーに拍手が贈られた。
 
 杖を使うことで可能となるボールを追うスピードやアクロバティックなボレーシュートは、サッカーにはない迫力があり、アンプティサッカーの凄さを伝えてくれるプレーである。また、球際の攻防はクラッチがぶつかる音がスタンドまで聞こえるほどで、片足の選手が杖を突いてプレーするからこそ、チャージに対してはバランスを保つことが難しく、激しい転倒も多く見られる。それでも、起き上がってボールを追う姿は、見る人の心を揺さぶる力を持つ。
 
 今大会には、今まで以上にボールを最後まで追いかける、諦めない姿が見られたように思うし、それを支える選手の技術や体力が、ついてきていると感じた。
 
 延長戦までもつれ込んだ決勝戦で、同点ゴールと勝利を決定づける3点目を決め、MVPに選ばれたエンヒッキ・松茂良・ジアスさんは、「延長戦は、全身がつるくらいに厳しい状況でしたが、今までにない大きな歓声で、選手としてモチベーションも高くなり、絶対に勝つんだと思えました」と振り返った。

 閉会式で田嶋幸三氏は、「この4月に障がい者サッカー連盟を立ち上げ、日本サッカー協会は障がい者スポーツを応援したいと考えています。今日みなさんのプレーを見て、逆にみなさんが我々日本サッカー協会の一員になってくれたことを改めて感謝したいと思いました」と話し、北沢豪氏も、「決勝戦が終わった後、スタンドからの拍手が止まらなかったのは、みなさんの素晴らしいプレーがあったからじゃないかな、と思います」と、ともに選手を称えた。
 
 日本アンプティサッカー協会の副理事長で、日本代表監督も務める杉野正幸氏は以下のように語っている。

「日本障がい者サッカー連盟が設立されたことによって、これまであまりなかった障がい者サッカー7団体の横の繋がりが強くなったことは財産であり、きっかけを作ってくれたJFAに感謝しています。サッカーだからこそ、たくさんの障がい者を受け入れる懐の深さがありますし、今回の大会を終え、サッカーの持つポテンシャルを改めて強く感じているところです」
■大会結果
●1日目
【グループA】
広島・静岡 1-3 千葉・北海道
千葉・北海道 1-2 アウボラーダ
広島・静岡 0-6 アウボラーダ
【グループB】
TSA FC 0-5 関西
TSA FC 0-7 九州
関西 3-4 九州
●2日目
準決勝1 アウボラーダ2-1 関西
準決勝2 九州 6-1 千葉・北海道
5 位決定戦 TSA FC 0-0・PK3-1 広島・静岡
3 位決定戦 関西 2-1 千葉・北海道
決勝戦 九州 1-3 アウボラーダ
 
【順位】
優勝 FC アウボラーダ(2 年ぶり2 回目)
準優勝 FC 九州バイラオール
3 位 関西セッチエストレーラス
4 位 Asil Bee 千葉・北海道
5 位 TSA FC
6 位 広島・静岡

【アンプティサッカー】
30年以上前にアメリカの負傷兵が、松葉杖をついてプレーするサッカーをリハビリテーションとして始めたのがアンプティサッカーの起源と言われる。日本にはブラジル代表のキャリアもあるFCアウボラーダのエンヒッキ・松茂良・ジアスさんが、仕事の関係で来日したことをきっかけに2010年からスタート。2014年にメキシコで開催されたワールドカップでは、日本代表は3度目の出場にして初勝利を手にし、決勝トーナメント進出も果たしている。
アンプティサッカーは、フィールドプレーヤー6名とゴールキーパーが、25分ハーフ、サッカーの3分の2ほどのサイズとなる40m×60mのコートで戦う。フィールドプレーヤーは主に片足の切断者で、日常生活で使われる通常の松葉杖「クラッチ」をついてプレーする。両足はあるが骨盤を失っていて足の長さが異なっていたり、両足を失っていて片足は義足だったり、はたまた、足だけでなく腕の障がいもあり、手の装具もつけてプレーする選手がいたりと、障がいの状況はそれぞれに異なっている。
GK は主に切断などの腕に障がいを持つ方が務め、片手だけでプレーする。残っている腕の長さにより、セービングがしやすいことから、前回大会から使用しない腕をユニフォームの中に入れ、同条件でプレーすることになっている。