ベンチで戦況を見守っていた原輝綺(市立船橋高)に、声が懸かったのは80分だった。

【U19アジアユース 日本3−0イエメン@バーレーン】小川、岩崎、原の得点で初戦を飾る。
 
「最初、(遠藤)ケイタ君が(ペースを)上げろって言われていて、最初は『ないかな』と思っていたんですけど、いきなり呼ばれて少しびっくりしました」
 
 十分にウォーミングアップをしていたわけでもなく、声をかけられたのだから本人が驚くのも無理はない。ちなみに、遠藤渓太(横浜)はその4分後、三好康児(川崎)と代わってピッチに入っている。
 
 日本がリードを2点に広げ試合の趨勢が固まりつつあったとはいえ、原は急に訪れた出番にも、至って冷静に立ち振る舞った。持ち前の力強い守備でボールを奪っては、前線へボールを運ぶ。そして、ピッチに立ってから8分後に、見せ場を作った。
 
 ボール前でDFからゴールを奪うと、すかさず前方の小川航基(磐田)にパスを供給。一目散にエリア内へ駆け上がると、小川のクロスを冷静に沈めて、チーム3点目を叩き込んだのだ。
 
「パスはちょっとズレちゃったんですけど、最後良いボールを上げてくれたので、自分は決めるだけでした。素直に嬉しかったです」
 
 得点場面をこう振り返った原は、8月のSBSカップでU-19代表に初招集されたばかり。いわば「新参者」ながら、「CBの前で弾き返せるし、アグレッシブにやれる」と、その守備センスの高さには内山篤監督も期待を寄せている。
 
 代表での活動はここ約2か月のみと日は浅いが、この日のパフォーマンスでさらにチーム内での信頼は増幅させたに違いない。本人も「出た時間帯だったり、相手の足が止まったこともありましたけど、ボール奪って前に行く意識は出せた」と、アジアを舞台に戦うことへの確かな手応えも実感する。
 
「まだ何かを残したわけではないし、このチームにいるからには、来年のU-20ワールドカップの出場権は勝ち取らないといけない。自分は謙虚に高望みせず、一つひとつ課題をクリアしていきたいと思います」
 
 固い決心を語った原の、さらなる飛躍に期待したい。
 
取材・文:橋本 啓(サッカーダイジェスト編集部)