ロシア・ワールドカップ出場を懸けたアジア最終予選も、全10試合のうち、4試合を消化した。今回の10月シリーズでは、ホームでイラクに勝利、アウェーでオーストラリアに引き分けと、負けなしで乗り切ってみせた。
 
 勝点4を上積みしたハリルジャパンは、いかなる戦いを見せたのか。2試合の出場時間や採点とともに、選手たちのパフォーマンスとハリルホジッチ監督の采配を振り返る。

【オーストラリア 1-1 日本|PHOTOギャラリー】原口の3戦連発弾で先制するもPKで悔しい引き分け…
 
【10月シリーズの試合結果】
第3節/10月6日/埼玉スタジアム2002/57,768人
vs イラク 〇2-1
得点者:原口(26分)、山口(90+5分)
 
第4節/10月11日/ドックランズ・スタジアム/48,460人
vs オーストラリア △1-1
得点者:原口(5分)
 
【GK】(3人)
1 川島永嗣(メス)
(72試合・73失点)
イラク戦:ベンチ 本誌採点/-
オーストラリア戦:ベンチ 本誌採点/-
 
今シリーズでは、選手たちのモチベーションを高める“メンタルプレーヤー”として招集された。この役回りについて本人は、「特別に意識していない。チームが生き生きとプレーできるよう、全体を押し上げていきたい」と語り、裏方としてチームを支え続けた。
 
23 東口順昭(G大阪)
(2試合・1失点)
イラク戦:ベンチ 本誌採点/-
オーストラリア戦:ベンチ 本誌採点/-
 
西川のバックアッパーとして準備をしていたが、出場のチャンスは訪れなかった。トレーニングでは、テニスボールなどを使いながら反射神経を鍛えることに重点を置いたメニューを懸命にこなした。
 
12 西川周作(浦和)
(29試合・22失点)
イラク戦:先発フル出場 本誌採点/6
オーストラリア戦:先発フル出場 本誌採点/6
 
ハイボールやクロス対応、キックの正確さは相変わらずの安定感。イラク戦は1失点も、至近距離からのシュートをビッグセーブしてチームを助けた。オーストラリア戦ではど真ん中に蹴りこまれたPKを防げず。連続失点と悔しい結果に終わったが、それでも全体的には及第点を与えられる働きぶりだったと言えよう。
 
※名前右の括弧内は所属クラブ、同下はA代表通算成績(10月11日時点)。
 
【DF】(9人)
5 長友佑都(インテル)
(90試合・3得点)
イラク戦:ベンチ 本誌採点/-
オーストラリア戦:‐ 本誌採点/-
 
イラク戦はコンディションを考慮されてかベンチを温めた。オーストラリア戦での出場が期待されたが、練習中の負傷で途中離脱。9月シリーズに続いて、またしても怪我で代表戦のピッチに立てなかった。
 
20 槙野智章(浦和)
(24試合・2得点)
イラク戦:ベンチ 本誌採点/-
オーストラリア戦:先発フル出場 本誌採点/5.5
 
酒井宏、長友の途中離脱を受け、オーストラリア戦に左SBで出場。守備的な戦術のなか、与えられたタスクを全うしようと奮闘も、エアバトルや球際で競り負ける場面も散見。持ち味の攻撃参加を自重したこともあり、どこか物足りなさが残った。
 
6 森重真人(FC東京)
(37試合・2得点)
イラク戦:先発フル出場 本誌採点/5.5
オーストラリア戦:先発フル出場 本誌採点/5.5
 
イラク戦では相手のスピードに戸惑い、オーストラリア戦ではイージーなパスミスも。不安定な部分が見え隠れしたが、失点につながるような失態はなく、周囲とうまくバランスを取りながらピンチを潰した。
 
3 太田宏介(フィテッセ)
(7試合・0得点)
イラク戦:ベンチ 本誌採点/-
オーストラリア戦:ベンチ 本誌採点/-
 
自慢のクロスを披露する機会は今回もなし。左SBが手薄となったオーストラリア戦は出場の可能性が高まったが、指揮官は槙野をチョイス。“本職”ながら試合に出られなかった悔しさを糧に、クラブでのさらなる奮起でアピールを続けたい。
 
22 吉田麻也(サウサンプトン)
(69試合・9得点)
イラク戦:先発フル出場 本誌採点/6.5
オーストラリア戦:先発フル出場 本誌採点/6
 
イラク戦では1-1で迎えた終盤、前線に上がってパワープレーで身体を張り、山口の決勝弾につながるFKを獲得した。2試合を通じて、局面の粘り強さや的確なカバーリングを披露し、後方から効果的なロングボールも供給。攻守両面で頼りになる存在だった。
 
2 丸山祐市(FC東京)
(1試合・0得点)
イラク戦:ベンチ 本誌採点/-
オーストラリア戦:途中出場(90+1分in)本誌採点/-
 
オーストラリア戦で待望の代表デビューを飾るが、原口との交代で入ったポジションはCBではなく左ウイングだった。もっとも、プレータイムは限られていたが、慣れないポジションでも慌てることなく、微力ながら勝点1獲得を手助けした。
 
19 酒井宏樹(マルセイユ)
(30試合・0得点)
イラク戦:先発フル出場 本誌採点/5.5
オーストラリア戦:‐ 本誌採点/-
 
ペナルティエリア内の厳しさがやや足りなかった印象のイラク戦で、今予選で通算2枚目のイエローカード。累積警告でオーストラリア戦は出場停止となり、途中でチームを離れることに。消化不良の10月シリーズとなったが、右SBの定位置はまだこの男のもの。
 
21 酒井高徳(ハンブルク)
(31試合・0得点)
イラク戦:先発フル出場 本誌採点/5
オーストラリア戦:先発フル出場 本誌採点/6
 
左SBで出場したイラク戦では、空中戦で弱さを露呈。失点の場面でも相手に競り負けた。酒井宏の離脱で右SBに回ったオーストラリア戦では、躍動感溢れるプレーで右サイドを活性化。ただし、自らのサイドで起点を作られてクロスを許し、結果的にPK献上につながったのは反省材料だ。
 
5 植田直通(鹿島)
(0試合・0得点)
イラク戦:ベンチ外 本誌採点/-
オーストラリア戦:ベンチ 本誌採点/-
 
守備陣に警告を受けている選手が多く、不測の事態に備えての選出。本人は「試合に出られなければ意味がないと思う。しっかりアピールして試合に“絶対”絡んでいきたい」と強い意欲を示していたが、願いは叶わなかった。
 
※名前右の括弧内は所属クラブ、同下はA代表通算成績(10月11日時点)。
 
【MF】(7人)
17 長谷部誠(フランクフルト)
(103試合・2得点)
イラク戦:先発フル出場 本誌採点/6
オーストラリア戦:先発フル出場 本誌採点/6.5
 
9月シリーズでは不安定さが否めなかったが、今シリーズでは本来の実力を十二分に発揮。状況に応じて攻撃と守備のバランスを的確に配分したプレーは、まさにベテランならでは。球際でも強さを見せ、中盤の攻防で存在感を放った。
 
7 柏木陽介(浦和)
(11試合・0得点)
イラク戦:途中交代(67分out)本誌採点/5.5
オーストラリア戦:ベンチ 本誌採点/-
 
イラク戦では頻繁にプレーに絡み、打開を試みるも周囲と嚙み合わないシーンもあり、定評のある展開力は鳴りを潜めた。相手のプレスにも手を焼いた印象で、本人も自らの出来に納得がいっていない様子だった。守備重視で戦ったオーストラリア戦は出番がなかった。
 
19 永木亮太(鹿島)
(0試合・0得点)
イラク戦:ベンチ外 本誌採点/-
オーストラリア戦:ベンチ 本誌採点/-
 
嬉しいA代表初招集も、鹿島でチームメイトの植田とともに出場はなく、イラク戦はともにベンチからも外れた。長谷部や山口らライバルたちとの差を縮めるにはまだまだ時間がかかりそうで、クラブでのさらなる鍛錬と成長が求められている。
 
10 香川真司(ドルトムント)
(83試合・27得点)
イラク戦:ベンチ 本誌採点/-
オーストラリア戦:先発フル出場 本誌採点/5
 
クラブでの不調もあり、イラク戦はついにトップ下のレギュラーから外されて、途中出場もなし。先発復帰したオーストラリア戦では、守備に忙殺される展開において“違い”を作り出せず、シュートも打てずじまい。代表ではいまだ負のスパイラルから抜け出せずにいる。
 
13 清武弘嗣(セビージャ)
(40試合・3得点)
イラク戦:先発フル出場 本誌採点/7
オーストラリア戦:途中出場(82分in)本誌採点/-
 
香川に代わり、トップ下で先発したイラク戦では原口の先制点をアシストするなど、攻撃の中心としてフル稼働した。右ウイングで途中出場したオーストラリア戦では、オフサイドの判定となったが浅野に正確なスルーパスを通してみせる。短い時間のなかでも技術の高さを見せつけた。
 
16 山口 蛍(C大阪)
(28試合・2得点)
イラク戦:途中出場(67分in)本誌採点/7
オーストラリア戦:先発フル出場 本誌採点/6
 
チームを救う劇的な一撃だった。イラク戦の終了間際、FKのこぼれ球を右足で思い切り叩き、豪快にネットを揺らして勝利の立役者に。スタメンに名を連ねたオーストラリア戦では、ハードなタックルや鋭い出足からのボール奪取で中盤の守備力を高める活躍ぶり。長谷部の相棒としてその地位を確立したと言っても過言ではない。
 
15 大島僚太(川崎)
(1試合・0得点)
イラク戦:ベンチ 本誌採点/-
オーストラリア戦:ベンチ 本誌採点/-
 
代表デビューを飾った9月シリーズに引き続き、招集されたが、今回はバックアッパーの域から脱せられなかった。攻撃型ボランチの序列で柏木に次ぐ2番手と見られており、まずはJリーグでライバルを圧倒するだけのパフォーマンスを披露したい。
 
※名前右の括弧内は所属クラブ、同下はA代表通算成績(10月11日時点)。
 
【FW】(8人)
9 岡崎慎司(レスター)
(104試合・49得点)
イラク戦:途中交代(75分out) 本誌採点/5
オーストラリア戦:ベンチ 本誌採点/-
 
イラク戦は、前線での身体を張った起点作りや精力的な守備が光るも、シュート0本では「代表通算50得点目」も達成できるわけがない。この試合で左足首を負傷してしまい、別メニュー調整を続いたこともあり、オーストラリア戦は大事をとってベンチに控えていた。
 
4 本田圭佑(ミラン)
(84試合・36得点)
イラク戦:途中交代(81分out)本誌採点/5
オーストラリア戦:途中交代(84分out)本誌採点/5.5
 
右ウイングでプレーしたイラク戦は身体にキレがなく、簡単にボールを失う場面もあったが、ポストに嫌われたヘディングシュートは惜しかった。CFに抜擢されたオーストラリア戦は、前半はポスト役として機能し、原口のゴールをお膳立てするスルーパスも、徐々にトーンダウン。2試合とも途中交代と、ミランでの不遇の影響が色濃く出たが、要所で決定的な仕事をこなすなど意地は見せたか。
 
14 小林 悠(川崎)
(8試合・0得点)
イラク戦:途中出場(81分in)本誌採点/-
オーストラリア戦:途中交代(82分out)本誌採点/5.5
 
イラク戦は特筆すべき事項はなし。右ウイングとして久々に先発を勝ち取ったオーストラリア戦は、高さとスピードを武器に躍動感を見せた。74分には決まってもおかしくないヘディングシュートを放つが、その後は足を痛めて無念の途中交代。代表初ゴールはお預けとなったが、9月シリーズに比べれば手応えのある2連戦となったはずだ。
 
8 原口元気(ヘルタ・ベルリン)
(18試合・5得点)
イラク戦:先発フル出場 本誌採点/6.5
オーストラリア戦:途中交代(90+1分)本誌採点/6.5
 
9月のタイ戦に続き、今回のイラク戦、オーストラリア戦でも先制点を挙げるなど、目下3試合連続ゴール中。候補者が多数いる左ウイングは、もはや激戦区ではなく“原口の一択”になりつつある。豊富な運動量を生かし、惜しみなく上下動を繰り返しては、デュエルにも激しく挑む。オーストラリア戦で与えたPKは、守備でも手を抜かない姿勢が裏目に出てしまった形だが、現時点ではハリルジャパンの“新エース”として、代えの利かない選手となった。
 
− 宇佐美貴史(アウクスブルク)
(18試合・3得点)
イラク戦:− 本誌採点/-
オーストラリア戦:− 本誌採点/-
 
※招集を受けたが、9月29日の練習中に足首の腱を負傷し、不参加に。
 
− 武藤嘉紀(マインツ)
(19試合・2得点)
イラク戦:ベンチ 本誌採点/-
オーストラリア戦:ベンチ 本誌採点/-
 
※招集を受けたが、9月29日のEL・ガバラ戦で右膝を負傷し、不参加に。
 
18 浅野拓磨(シュツットガルト)
(9試合・2得点)
イラク戦:途中出場(75分in)本誌採点/5.5
オーストラリア戦:途中出場(84分in)本誌採点/-
 
この2連戦では先発はなかったものの、途中出場から果敢にゴールを狙いに行く姿勢は貫いた。とりわけ、オーストラリア戦の原口のクロスに飛び込んだプレーは非凡な嗅覚を感じさせたが、タイミングがわずかに合わず、ゴールはならなかった。
 
11 齋藤 学(横浜)
(5試合・1得点)
イラク戦:ベンチ 本誌採点/-
オーストラリア戦:ベンチ 本誌採点/-
 
武藤、宇佐美の負傷による不参加を受けて、追加招集。今年3月のシリア戦(2次予選)の時も追加招集されているが、当時と同様、今回も試合に絡めなかった。オーストラリア戦の試合後、ハリルホジッチ監督が「少し経験がない選手は、プレッシャーに負けてしまうのではないかという不安もあった」と、齋藤の投入を躊躇った理由について言及している。
 
監督
ヴァイッド・ハリルホジッチ
(13勝5分3敗)
イラク戦:本誌採点/6
オーストラリア戦:本誌採点/5.5
 
清武をトップ下に抜擢したイラク戦の“決断”は悪くなかったが、追いつかれた後のゲーム運びでは、有効な策を打てたとは言い難い。山口の決勝点につながったパワープレーも、指揮官の指示ではなかった。オーストラリア戦では本田をCFに起用し、守備的に戦いながらもリードを奪った前半はほぼパーフェクト。しかし、PKで同点とされ、さらに劣勢を強いられる展開のなか、不調の香川を最後まで引っ張り、CBの丸山を左ウイングでプレーさせるなど、勝点3を奪いに行く采配ではなかった。もっとも、敵地でグループ最大の難敵から勝点1を持ち帰れたのは、今後に向けて好材料になり得るだろう。2試合合計で勝点4と最低限のノルマを果たし、くすぶる解任論をひとまずは鎮静したか。
 
※名前右の括弧内は所属クラブ、同下はA代表通算成績(10月11日時点)。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)