16日に行なわれたJ2・36節の千葉対松本の一戦には溢れんばかりの報道陣がミックスゾーンに押し寄せた。そのほとんどがこの日、目当てとしていた選手は言うまでもない。17日より3日間、大阪で行なわれる日本代表候補GK合宿に選ばれた松本のシュミット・ダニエルである。
 
 唯一のJ2からの選出、そしてその稀有なキャリアで話題をさらっているが、確かに色々と“聞きたくなる”選手であることは間違いない。197センチの長身。アメリカ人の血を引くハーフ。そして、本格的にGKを始めたのは高校時代であり、もちろん全国区の選手ではなかった。
 
 進学した中央大でもレギュラーを掴んだのは4年生になってから。J1での出場もないまま、代表候補に上り詰めたのだから、周囲の関心も高まるのは納得である。ただ、もちろんノーマークの選手であった訳ではなく、Jクラブからはそのポテンシャルに熱視線が送られていた。それを証明するのが大学1年時の2010年から3シーズン、J1・川崎の特別指定選手に登録をされていたという事実である。
 
 そして、その川崎の特別指定選手となった際に、シュミットは誓約書にある言葉を書いた。それは、「日本代表になる」ということ。
 
「それを書いた時点でならなければいけないというか、なりたいとはずっと思っていました」
 
 日本代表を目指すスタートは、ここからだった。その誓いを立ててから6年経った今年、現在のJ2で自動昇格圏内の2位につける松本の絶対的守護神としてチームを牽引し、代表候補まで上り詰めた。
 
「いつか呼ばれたいというか…今年の目標にもしていた。ただ、まだ候補なので満足しているわけではないけど、こういうチャンスを手繰り寄せたのは事実。このチャンスを掴み取りたい」
 本人はこう言うが、国内トップレベルのGKたちが集うこの合宿をただの経験で終わらせるつもりはなく、これを機会に代表の座を奪いに行く、という強い意志がある。
 
 また候補だけにとどまるつもりは毛頭ないのだが、ここまで代表を強く意識するのには、もうひとつの理由が存在する。
 
 それは、中央大時代の同期に“先を越された”という事実だ。2014年9月のキリンチャレンジカップ。ハビエル・アギーレ前日本代表監督の初陣に大卒ルーキーながら選ばれた広島・皆川佑介の存在だ。ともに戦った仲間が日の丸を背負ったことに対して様々な思いが錯綜した。
 
「嬉しいのと同時に、ちょっと悔しいというか、嫉妬……いや、嫉妬は違うな…。もちろん、祝福したいのが95パーセントくらいでしたけど、ちょっと悔しかった。俺もいずれ入ってやるという気持ちはだいぶありましたね」
 
 特別指定選手になる際に記した誓いと、仲間の躍進。この2つが彼の背中を大きく押し、あと一歩のところまでやってきた。
 
 3日間の合宿では「動きの速さとか、そういう、日本人の普通にデカい人には持っていないような速さとかは自分はもっと出せると思うので、そういう部分をもっともっと出していきたい」と“サイズだけではない”ということを証明したいと語ったが、こうも口にした。
 
「日本で一番デカいなら、日本で一番止めるGKでありたい」
 
 日本一のGKになるために――。J2の舞台からチャンスを掴んだ新鋭にとっての、勝負の3日間が始まる。
 
取材・文:竹中玲央奈(フリーライター)