10月17〜19日にかけて、大阪で異例の「GK合宿」を行なった日本代表。その初日だった。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の口から次のようなコメントが飛び出し、波紋を広げている。
 
「現代フットボールでは、190cm以上ないと良いGKとは言えない。クラブでも代表チームでも、そういう統計になっている。180cm台でもハイレベルで戦えるかもしれないが、かなり困難がある」
 
 そう語ったハリルホジッチ監督が今回の合宿に呼んだGKは6人。180cm台は183cmの西川周作(浦和)をはじめ、184cmの東口順昭(G大阪)、184cmの中村航輔(柏)、186cmの櫛引政敏(鹿島)の4人。190cm台は195cmの林彰洋(鳥栖)、そして唯一のJ2組でA代表初選出となった196cmのシュミット・ダニエル(松本)という2人だけだった。
 
 ハリルジャパン招集歴がある川島永嗣(メス)が185cm、権田修一(SVホルン)が187cm、六反勇治(仙台)が188cmと、たしかに日本代表に「オーバー190のGK」は極めて少ない。日本人の身体的特徴を考えれば、致し方ない部分だろう。
 
 では、「現代フットボールでは、190cm以上ないと良いGKとは言えない」というハリルホジッチ監督の見解は正論なのか。世界中からトップタレントが集まる欧州4大リーグ(プレミアリーグ、リーガ・エスパニョーラ、セリエA、ブンデスリーガ)で検証してみよう。全78クラブの2016-17シーズン正GKの身長分布は以下の通り。
 
200cm以上:1人(1.28%)
190〜199cm:42人(53.84%)
185〜189cm:30人(38.46%)
177〜184cm:5人(6.41%)
 
 日本には少ない「オーバー190」が全体の半数以上を占め、184cm以下になると78人中でわずか5人のみ。モダンフットボールでGKの大型化が進んでいるのは事実であり、ヨーロッパでは「180cm台前半のキーパーは小さい」と言われるのも納得のデータである。
 
 自他ともにも認める世界ナンバー1GKのマヌエル・ノイアー(バイエルン)は193cm、それに次ぐ存在として認知されるティボー・クルトワ(チェルシー)は199cm、ダビド・デ・ヘア(マンチェスター・U)は192cm、ジャンルイジ・ブッフォン(ユベントス)は191cm。遠からず彼らと同じく世界的守護神になると目される17歳のジャンルイジ・ドンナルンマ(ミラン)も、196cmと十ニ分な体格の持ち主だ。
 とはいえ、「180cm台でもハイレベルで戦えるかもしれないが、かなり困難がある」という見解は、さすがに言い過ぎだろう。
 
 189cmのヤン・オブラク(A・マドリー)、188cmのユーゴ・ロリス(トッテナム)、187cmのマルク=アンドレ・テア・シュテーゲン(バルセロナ)、185cmのケイラー・ナバス(R・マドリー)、184cmのクラウディオ・ブラーボ(マンチェスター・C)と、4大リーグとチャンピオンズ・リーグの覇権を争うトップクラブの正守護神を務める180cm台のGKも少なくない。
 
 R・マドリーとスペイン代表で数々の栄冠を掴み、ノイアー台頭前にはブッフォンと世界最強GKの座を争ったイケル・カシージャス(ポルト)も182cmと、日本人GKたちと大差ない体格だ。
 
 言うままでもなくGKは、空中戦でもシュートストップでも1cmの差が成否を分けるポジションだが、彼らは身長のハンデを反応速度、ポジショニング、ステップワーク、判断力、そして足下のテクニックなどで補い、十分以上に世界トップレベルで戦っているのだ。
 
 今夏にはこんなケースもあった。マンチェスター・Cの新監督に就任したジョゼップ・グアルディオラは、クラブとイングランド代表で長く正守護神を務めてきた196cmのジョー・ハートを外し(結局はトリノへレンタル移籍)、代わりにバルセロナから184cmのブラーボを獲得。ゴールマウスを任せた。
 
 12cmの身長差を考えれば、空中戦では間違いなくハートのほうが有利。しかし、最終ラインからのビルドアップを肝とするパスサッカーを志向するグアルディオラ監督は、より足技に優れるブラーボを買ったのだ。総合的な安定感でも新戦力のほうが上という算段もあっただろう。
 
 GKにとって身長は大きな武器にはなるし、大きいに越したことはない。しかし、それが“全て”ではなく、指揮官の志向や戦術によって能力のプラオリティーは確実に変わる――。それが「世界トップレベル」の現実だ。
【4大リーグ・全78クラブの正GK一覧】
●201cm
フレイザー・フォースター(サウサンプトン/イングランド代表)
 
●199cm
ティボー・クルトワ(チェルシー/ベルギー代表)
 
●198cm
チプリアン・タタルシャヌ(フィオレンティーナ/ルーマニア代表)
ミヒャエル・エッサー(ダルムシュタット/ドイツ国籍)
 
●197cm
マーテン・スケテレンブルフ(エバートン/オランダ代表)
クーン・カステールス(ヴォルフスブルク/ベルギー代表)
 
●196cm
ペトル・チェフ(アーセナル/チェコ代表)
ヴォイチェフ・シュチェスニー(ローマ/ポーランド代表)
ジャンルイジ・ドンナルンマ(ミラン/イタリア代表)
ディエゴ・ロペス(エスパニョール/元スペイン代表)
ジョー・ハート(トリノ/イングランド代表)
ラルフ・フェーアマン(シャルケ/ドイツ国籍)
 
●195cm
エミリアーノ・ヴィヴィアーノ(サンプドリア/イタリア代表)
ヨナス・レスル(マインツ/デンマーク代表)
 
●194cm
セルヒオ・リコ(セビージャ/スペイン代表)
エトリト・ベリシャ(アタランタ/アルバニア代表)
 
●193cm
マヌエル・ノイアー(バイエルン/ドイツ代表)
サミール・ハンダノビッチ(インテル/元スロベニア代表)
リー・グラント(ストーク/イングランド国籍)
ベン・フォスター(WBA/イングランド代表)
アルトゥール・ボルツ(ボーンマス/ポーランド代表)
アントニオ・ミランテ(ボローニャ/イタリア代表)
アルバノ・ビサーリ(ペスカーラ/元アルゼンチン代表)
マルビン・ヒッツ(アウクスブルク/スイス代表)
 
●192cm
ダビド・デ・ヘア(マンチェスター・U/スペイン代表)
ティモ・ホルン(ケルン/ドイツ国籍)
エリアン・ニュラン(インゴルシュタット/ノルウェー代表)
ヤロスラフ・ドロブニー(ブレーメン/チェコ代表)
 
●191cm
ジャンルイジ・ブッフォン(ユベントス/イタリア代表)
レネ・アドラー(ハンブルク/ドイツ代表)
エウレリョ・ゴメス(ワトフォード/元ブラジル代表)
ゴルカ・イライソス(A・ビルバオ/スペイン国籍)
アントニオ・アダン(ベティス/スペイン国籍)
ステーファノ・ソッレンティーノ(キエーボ/イタリア国籍)
 
●190cm
ベルント・レノ(レバークーゼン/ドイツ代表)
ウカシュ・ファビアンスキ(スウォンジー/ポーランド代表)
デイビッド・マーシャル(ハル/スコットランド代表)
ナウセト・ペレス(オサスナ/スペイン国籍)
オレティス・カルネジス(ウディネーゼ/ギリシャ代表)
ルネ・ヤルステイン(ヘルタ・ベルリン/ノルウェー代表)
ヨシプ・ポシャベツ(パレルモ/クロアチアU-21代表)
ルーカス・フラデツキー(フランクフルト/フィンランド代表)
ペテル・グラーチ(RBライプツィヒ/ハンガリー代表)
 
●189cm
ヤン・オブラク(A・マドリー/スロベニア代表)
ロリス・カリウス(リバプール/ドイツ国籍)
セルヒオ・アセンホ(ビジャレアル/スペイン国籍)
ヘロニモ・ルジ(R・ソシエダ/アルゼンチン代表)
アンドレア・コンシーリ(サッスオーロ/イタリア代表)
アレクサンダー・シュボロウ(フライブルク/ドイツ国籍)
 
●188cm
ユーゴ・ロリス(トッテナム/フランス代表)
ビクトール・バルデス(ミドルスブラ/元スペイン代表)
ホセ・マヌエル・レイナ(ナポリ/スペイン代表)
フェデリコ・マルケッティ(ラツィオ/イタリア代表)
マッティア・ぺリン(ジェノア/イタリア代表)
アドリアン(ウェストハム/スペイン代表)
トム・ヒートン(バーンリー/イングランド代表)
アレックス・コルダズ(クロトーネ/イタリア国籍)
 
●187cm
マルク=アンドレ・テア・シュテーゲン(バルセロナ/ドイツ代表)
ジエゴ・アウベス(バレンシア/ブラジル代表)
イバン・クエジャール(S・ヒホン/スペイン国籍)
フェルナンド・パチョコ(アラベス/スペイン国籍)
ウカシュ・スコルプスキ(エンポリ/ポーランド代表)
マルコ・ストラーリ(カリアリ/イタリア国籍)
ロマン・ビュルキ(ドルトムント/スイス代表)
オリバー・バウマン(ホッフェンハイム/ドイツ国籍)
 
●186cm
イドリス・カメニ(マラガ/カメルーン代表)
 
●185cm
ケイラー・ナバス(R・マドリー/コスタリカ代表)
キャスパー・シュマイケル(レスター/デンマーク代表)
ステーブ・マンダンダ(クリスタル・パレス/フランス代表)
ジョーダン・ピックフォード(サンダーランド/イングランド代表)
アシエル・リエスゴ(エイバル/スペイン国籍)
ヘルマン・ルクス(デポルティボ/元アルゼンチン代表)
ギジェルモ・オチョア(グラナダ/メキシコ代表)
 
●184cm
クラウディオ・ブラーボ(マンチェスター・C/チリ代表)
 
●183cm
ヤン・ゾマー(ボルシアMG/スイス代表)
ホン・アンデル・セランデス(レガネス/スペイン国籍)
 
●182cm
ハビ・バラス(ラス・パルマス/スペイン国籍)
 
●177cm
セルヒオ・アルバレス(セルタ/スペイン国籍)