天皇杯決勝後の1月4日に就任が正式発表されてから10日後となる13日、ついに“名古屋の”風間八宏監督が誕生した。寒波吹きすさぶトヨタスポーツセンター内の会見場は集まった多くの報道陣の熱気で満たされ、定刻通りに風間新監督が登壇。下條佳明GMの紹介の後にすぐさま一問一答の代表質問が始まり、新指揮官の所信表明の幕が上がった。
 
 質問はまず監督就任の経緯についてとなった。発端は昨年9月頃の大森征之強化担当部長との食事だったという。

「昨季がフロンターレは最後だと決めていた中で、『次のクラブをやる気はないんですか?』と話した」というジャブから始まった話は、その後の名古屋の低迷にも「どこでやるかよりもこれから何をするかが一番」と語る風間監督の興味が勝り、「この地域も含めてすごく“隠れている”と思う。それをしっかり掘り起こして前に進んでいきたい」という決断に至ったと明かされた。
 
 続いて質問は監督としてのビジョンや名古屋でのチーム作りへ移行。ビジョンについては「プレーを相手に合わせて自分たちが集団の中に隠れるようなサッカーはしたくない。全員がその集団から飛び出して、なおかつそれが集団であるというような、伸び伸びとしたサッカーをやってもらいたい」と、選手の個性が輝く「選手の顔が見えるサッカー」をひとつのテーマとして掲げた。

 また川崎時代から繰り返している「僕は『パスサッカー』も『ポゼッションサッカー』も一度も言った覚えはない(笑)」のコメントも飛び出し、「理想は選手が作っていってくれるもの」と、ここでもやはり選手の個性を生かすのが最優先と強調した。
 
 また名古屋の監督として求められることを「楽しく勝つこと」と断言し、「グラウンドにものすごく厳しい空気、それからその中で発想豊かになる楽しい空気。このふたつを同時に持ったグラウンドを作っていきたい」と実現に向けたアプローチを提示。今季の目標もJ2優勝やJ1昇格といった言葉を使わず、「どこのチームとやっても日本の中ではどこにも負けないというものを作っていくこと」と独特の表現で今季の見通しを語っている。
 選手育成や“再生”にも定評ある監督だけに、質疑応答の中では「『成長できるよ』と話したという佐藤選手は、どのように上手くなれるのか」という質問も。これには「すべての選手が頭の中にある“引き出し”で、開けていない部分がたくさんある。何かを壊すのではなく、わかっているはず、あるいはやれているのにひとりではできなかったことなどもあると思う。そういう“頭の引き出し”を開けていってやれば、できると思います」と、風間メソッドを駆使しした戦力増強への自信ものぞかせた。
 
 立て板に水で語り続ける風間監督は、会見の最後には「この選手たちで最も良い状況で練習をしていくこと。これが一番。そしてその後に選手の顔がどんどん見えて、お客さんが誰々を見たい、彼を見たい、これを見たいとスタジアムにどんどん入って、豊田スタジアムを満員にしたい」と、エンターテイメントとしてのサッカーも追求すると、またも独自の言い回しで宣言した。
 
「選手が楽しくなければ見ている人も楽しくない。そしてもちろん、そこには『勝つ、負ける』の『勝つ』がなければサポーターも我々も楽しくない」
 
 Jリーグきっての個性派監督は、川崎で見せてきた魅力的なサッカーをベースに、名古屋でも理想と現実の二兎を追う。
 
取材・文:今井雄一朗(フリーライター)