先輩やチームメイト、そして家族への感謝が形となって表れた一撃。ルーキーが決めた会心のゴールが、1部復帰を目指す名門を大きく前進させた。15日に行われたJR東日本カップ2016 第90回関東大学サッカーリーグ戦2部 第18節、朝鮮大学校との一戦。中央大学が、集中応援日に指定された重要な試合で3−0と快勝した。3試合ぶりの勝利をもたらしたのが、1年生ボランチのMF宮城和也(興國高校出身)だ。


 2試合連続で1−2と逆転負けを喫していた中央大。1年での1部復帰を至上命題として掲げる中、苦しい時間を過ごしていた。前々節の東海大学戦は81分以降に2失点、そして前節の青山学院大学戦は90分からの3分間で連続失点。勝ち点3はおろか、1ポイントも積み上げることができず、試合後のベンチは悔しさと不甲斐なさで沈黙に包まれた。


 そして迎えた今節。ホームグラウンド(中央大学多摩キャンパスサッカー場)での集中応援日ということもあり、試合メンバー外となった仲間たちが大きな声を張り上げる。心地良い秋晴れの下でキックオフを迎えると、開始早々の6分、FW矢島輝一(3年)のスルーパスからFW桜井昴(2年)が左足シュートを決めて幸先良く先制。優位に立って試合を進める中央大は最終ラインを高い位置に保つ相手に対して、背後のスペースを効果的に突く攻撃を展開していった。追加点こそ奪えなかったが、1点リードでハーフタイムを迎えた。


 そんな中、宮城は己の不甲斐なさと向き合っていた。「個人的に満足のいくプレーじゃなかったんです。ハーフタイムに悩んでいたら、チームメイトから『思い切ってやれ』と声をかけてもらった」のだという。矢島は「顔が“死んで”いたんですよね。それで自分が声をかけて」と振り返っている。ボランチの位置で相手のハイプレスに苦しんでいたルーキーは、周囲から一目瞭然なほどに落ち込んだ表情を見せていた。それでも、先輩の言葉が宮城を奮い立たせた。


 1−0で迎えた後半。中央大は朝鮮大学校の反撃に遭ったが、主将GK置田竣也(4年)を中心とした守備陣が粘り強く身体を張り、同点ゴールを許さない。プレーが切れたタイミングでは、各ポジションの選手たちが大声で指示を出し合ってチームを引き締めていた。「チームが勝つために自分ができることを毎試合やろうと考えている」宮城もまた、「しっかりと走って守備をして」奮闘していた。


 1点リードのまま、75分を経過。2試合連続で逆転負けを喫していた中央大にとって“試される”時間が始まった。2点目を奪うのか、1点を守り切るのか――。心理状態の微妙な揺れ動き、意思統一の不徹底が失点を招く事態をみたび繰り返すわけにはいかない。昇格を見据える名門にとって、残り試合にも大きな影響を及ぼす“ラスト15分”だった。


 緊張感が高まる中、待望の2点目が決まった。79分、攻撃参加を敢行した背番号22が矢島のお膳立てからペナルティーエリアに入ると、思い切り良く左足を振り抜く。強烈なシュートがゴールネットを揺らし、ピッチは歓声に包まれた。「自信を持ってやってくれ」と伝えてくれた先輩からのパスを、ゴールという形で結実させた瞬間。宮城の大学リーグ初得点が、「2点目」を取れずに苦しんでいた中央大が大きく前進させた。


 リードを2点に広げた中央大はさらに6分後、宮城が自身2ゴール目を決めて勝利を決定付けた。矢島は「あの(チーム)3点目の時は、自分にパスを出してほしかったですけどね」と笑いつつ、後輩の活躍を喜んだ。3−0。3試合ぶりの勝利で、中央大は2位の座をキープした。


 殊勲の宮城は「集中応援日で、いろいろな人が応援に来てくれた。大阪にいる親父も来てくれていた。そういう日に点を取れたことはすごく良かったし、自分の自信にもつながります。周りにすごく支えられているなと感じた試合でした」と感謝の思いを口にした。リーグ前期では出番を得られなかったが、後期開幕後は全試合に先発出場。「フィジカルコンタクトが多い」大学サッカーで揉まれながら、得意とする「ゲームメイク、技術や足下のテクニック」の部分を発揮すべく「正確なラストパスや効果的な展開を増やしていければ」と、レベルアップに取り組んでいる。


「最初は迷いもあったけど、自分が試合に出ている以上は中大の代表として責任を持って戦っています。自分が(試合に)出て負けた時はプレッシャーに苦しむこともありましたけど、いろいろな人に声をかけてもらって、良い仲間に支えられていると感じます。それで試合に臨めているので、常に感謝をして、満足をせずに向上心を持って取り組んでいきたいと思います」


 首位・東京国際大学との勝ち点差を「4」に詰め、残りは4試合。次節の神奈川大学(現在3位)戦、第21節の東洋大学(現在4位)戦、そして最終節の東京国際大戦と、ライバルたちとの直接対決を残している。周囲への感謝を繰り返した宮城は「先輩のためにも、1部昇格は絶対ですね」と誓う。1部復帰を懸けたサバイバルを前に、大きな弾みとなる勝利を手にした中央大。ラスト4試合、目の離せない戦いが続く。


取材・文=内藤悠史