「ビデオ判定があれば…」。そう思ったサッカーファンは少なくなかったはず。日本代表が1−2で敗れた9月1日のW杯アジア最終予選UAE戦(埼玉)での“誤審”のことだ。テレビ放送のVTRを見ると、FW浅野のシュートは完全にゴールラインを超えていたが、主審の判定はノーゴールだった。

 14年W杯ブラジル大会やプレミアリーグなどでは、カメラの映像をコンピューターで解析してゴール判定を補助する「ゴールライン・テクノロジー(GLT)」が既に導入されているが、「ビデオ判定」は今夏から本格的なテストが始まったばかり。日本戦とちょうど同じ日に親善試合イタリア―フランス戦で国際試合で初めて試験導入された。

 仕組みはこうだ。スタジアム内にモニターを並べた部屋が用意され、「ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)」と呼ばれる審判2人が試合映像をチェック。間違った判定や微妙なシーンなど、必要に応じてインカムでピッチの審判にアドバイスを送るというものだ。

 現場に立ち会ったFIFAのインファンティノ会長は、同公式サイトでテストの結果について「とても満足している。VARは審判を助け、試合を守る。サッカーの歴史書に新たな1ページを加えた」とコメント。主審を務めたカイパース氏によると、VARが偉力を発揮したのは前半4分、フランス代表MFシディベに出された警告。一発退場も考えた激しい反則だったが、VARからの助言を受けて思いとどまったという。ビデオ判定に対する懸念としては時間がかかることが挙げられているが、VARからの助言は10秒以内で試合進行を妨げることはなかったという。

 ビデオ判定は、ブラジル、ドイツ、ポルトガル、オランダ、米国などでもテスト導入されている。面白いのは米国3部USLのシステム。PKなど微妙な判定でビデオ判定が必要な場合は、主審がピッチ脇へ走り、用意されたモニターを本人がチェックする。インカムで助言を得る方法と違って時間はかかるが、大リーグやNFLと似たやり方なのでなじみがあるのかもしれない。インファンティノ会長は「2018年までテストを続ける」と18年W杯ロシア大会での本格導入に前向き。選手、ファンが悲しむ誤審が無くなるように、最善の解決法を早く確立してほしい。(大久保 尚文)