フランス出身、32歳のシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)は、開幕からの2戦で連続2位となり、ポイントリーダーとなった。そしてとうとう一度もその座を明け渡すことなく、初の年間王者まで突っ走った。

 年間16戦のインディカー・シリーズ最終戦の地はカリフォルニア州サンフランシスコ近郊のソノマ。アップダウンが激しく、かつ高速の難コースで、パジェノーは今季7回目のポールポジションをつかみ、5回目の優勝を飾った。ポールと勝利の数は、もちろんどちらも今シーズン最多だ。まさに圧倒的な成績での王座獲得となった。

 最終戦を前にランキング2位で逆転チャンピオンの可能性をただひとり残していたのは、パジェノーのチームメイトのウィル・パワー(チーム・ペンスキー)だった。3度もランキング2位で涙を飲んだ後の2014年に、とうとうチャンピオンに輝いた実績の持ち主。タイトル奪取は厳しい状況にあったが、過去にポール5回、優勝3回と得意とするコースでもあり、勝って大逆転......という可能性も決して低くはなかった。

 しかし、今シーズンにパジェノーが見せてきた強さが本物であることが、最終戦の戦いぶりで証明された。

 ポールからトップを守って1周目のターン1へと飛び込んだ後は、後続に付け入る隙を一切与えなかった。序盤戦は11周目で5秒以上の差を築き上げ、終盤は2番手に浮上したグレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)との間隔をコントロールしてゴール。プレッシャーに押し潰されることなく、最後までノーミスで走り切った。

 パワーの2度目のタイトル獲得の夢は、レースが折り返し点を迎える前にギヤボックスのトラブルで潰(つい)えた。パジェノーにも不運が襲いかかる可能性はあるため、ピットで修理を施したマシンでレースに復帰したパワーだったが、結果は20位でゴールとなった。

 結局、パジェノーは2位に3秒以上の差をつけて悠々とチェッカーフラッグを受け、コクピットの中で何度もガッツポーズを作った。コースの途中で止まり、マシンの上に立ってファンに喜びをアピール。ビクトリーレーンでもガッツポーツが幾度となく飛び出した。85周のレースで76周をリード。ボーナスポイントも全部稼いでの完全勝利によってチャンピオン・トロフィーを手に入れたのだ。

 そのパジェノーは語る。

「インディカーのチャンピオンになる。それを目標に生きてきた。ご覧の通り、今日の僕らのマシンはすばらしい仕上がりになっていた。圧倒的パフォーマンスを発揮し、優勝することができたのはもちろんチームのおかげだ。ものすごいプレッシャーのかかる状況で最高の仕事をやり遂げたることができたのだから、最高に嬉しい」

 一方のパワーは次のように語っている。

「トラブルに見舞われるとは本当に残念だ。しかし、今年のパジェノーは強かった。彼がタイトルを獲得するべきシーズンだった。10年も彼とは戦い続けてきたが、最初から彼は能力が高かった。今日、彼を倒してタイトルを獲得する可能性は確かにあったが、それは非常に難しいことだった。

 ランキング2位になったが、自分にとって今年はすばらしいシーズンだった。開幕戦の決勝を体調不良で走れなくなったために大きなポイント差をつけられながら、こうしてチャンピオン争いに加われた。4勝もできたし、500マイルのレースでも優勝した。まだインディ500では勝てていないが、これまでに勝ったことのないコースふたつで優勝することもできたのだから、満足している」

 シリーズ最強のチーム・ペンスキーはこれで14回目のタイトル獲得だ。チーム設立50周年という記念すべきシーズンに、パジェノーがチャンピオンシップを獲得。ランキングのトップ3をパジェノー、パワー、そしてエリオ・カストロネベスの順で独占した。1チームがトップ3を独占したのは1994年以来。その年も偉業を達成したのはペンスキー勢だった。

 そして、インディカー参戦7シーズン目の佐藤琢磨(AJ・フォイト・レーシング)は、予選15位から14位でゴール。シリーズランキングは17位という結果で終わった。11周目という早いタイミングで最初のピットストップを行なった琢磨は、上位陣より1回多くのピットストップでゴールを目指したが、その作戦が今回は当たらなかった。

「作戦で上位に進出する狙いでしたが、今日は展開が味方してくれなかった。今年は厳しいシーズンになっていた。シーズン序盤はホンダ勢をリードしていたが、いくつもの不運に見舞われた。ただ、今日のレースも全ラップを思い切り攻めて走り、ゴールまで戦い抜くことができた。ピットの作業も本当に速く、クルーたちの働きぶりには誇りを感じます。今年は表彰台に上ることができなかった点が悔しいですが、チームはリザルト以上の大きな進歩を遂げました」

 琢磨は、来シーズンも引き続きAJ・フォイトのチームで戦い、再び表彰台の中央に立つと、その決意を語った。

天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano
松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto