来日したチリポークのホアン・カルロス・ドミンゲス会長はこのほど、本紙「畜産日報」のインタビュー取材に応じた。

2023年2月にチリがCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定、以下TPP)を発効したことによるチリの業界の受け止め方について、「日本市場への豚肉輸出について、ようやく競合相手と同じ土俵に立つことができた」と評価。

関税など市場アクセスの条件がほかのTPP加盟国と同一になるなか、「我々チリポーク業界は数量よりも品質面で勝負をかけていく」と意欲を示した。5月16日には東京都内で業界関係者向けにセミナーを開いたチリポークだが、今後の活動として10月には都内で輸入業者・シェフ向けイベント、11月には両国企業のビジネスミーティングの参加、さらには2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)への参画も計画しているという。

ドミンゲス会長によると、過去24年間、チリポーク業界は、日本の業界関係者と密な関係を構築してきたものの、チリのTPP発効が遅れていた関係で「米国、カナダ、メキシコ、あるいはEUと同じ土俵に立てない状況があった」「この30年間、チリは自由貿易協定に対してリーダー的存在で、さまざまな国と協定を締結してきた。しかし、TPPの発効ができなかったことで、それまでの流れにブレーキがかかり、今後の政策に問題が生じるかと懸念していた」と回顧した。

そのうえで、2月の発効によって「チリは再び元来の自由貿易のリーダー的存在という立場となり、今後も自由貿易をけん引していきたい。そして、日本の輸入業者と一緒にポーク・ビジネスについてより良い方向へお互いに関係を築いていきたい」と期待感を示した。

今後の、TPP加盟国などとの競合については、「チリも市場アクセスで同じ土俵、同じテーブルにつくことができたわけだが、引続き我々としては日本市場に対してボリュームよりも品質面、安全性で勝負をかけていく。チリポークの加盟企業4社はすべてバーティカル・インテグレーション体制を敷いている。チリの養豚・豚肉業界は(北米のような)大きな生産量はないものの、それ故に生産をコントロールすることができ、フレキシブルな対応が可能な点が強みだ」と強調した。

その半面、業界が抱えている課題として「いま大きな課題が、需要に対して供給が追い付かないことだ。チリの豚肉生産量は毎年3%ずつ伸びているが、(日本市場をはじめとした)顧客からもっと豚肉を売ってほしい、という要望に対して十分な量を提供することができないのが悩みだ。

当然、チリポークの加盟企業は今後の日本市場への輸出量を増やしていく方針に変わりはないが、それは、より良い商品の輸出を増やしていくことにある」という。さらに「環境問題やサステナビリティなど、これらはチリポーク4社の共通の挑戦となる。とくにサステナビリティは循環経済や水などの資源の再利用にも関わってくる問題だ」と説明した。

飼料穀物高への対応では「効率性の高い生産がキーワードとなる。チリではサーモンが最も飼料効率の高い生産を行っているが、豚肉・鶏肉部門もそれに次ぐ効率性がある。飼養豚の事故率を減らすことや気温などの飼養環境も効率性の高さにつながっていく。

そのことによって、飼料穀物のコストが上昇しても、最終製品価格に響くことがないよう、チリポーク業界は努力している」と理解を求めた。

〈畜産日報2023年5月22日付〉