盲導犬の育成をしているアイメイト協会では毎年、盲導犬の社会啓発などを深めるため、「アイメイト・デー」を開催しています。今年は第40回を迎え、10月23日(日)に東京・竹橋で開かれます。
昭和23年の戦後間もないころ、アイメイト協会の創設者である塩屋賢一氏が盲導犬の育成を志し、昭和32年に国産の盲導犬第1号、「チャンピイ」が誕生して60年。盲導犬の活躍が社会で認められるようになるまでには、多難な道のりがありました。

「盲導犬」が世に認められるまでには、塩屋賢一氏の情熱と努力があった

アイメイト協会の創設者である塩屋賢一(しおや けんいち)氏はもともと犬の訓練師でしたが、昭和23年、盲導犬を育成して世の中の役に立ちたいと考え、盲導犬の研究をはじめました。自身で目隠しをして約1ヵ月過ごし、視覚障害者にとって犬がどんな働きをすれば役に立つかを、身をもって体験しました。犬3頭を使って独自の訓練方法を編み出し、各国の訓練施設を訪れて、さらにその訓練法を深めました。
こうして昭和32年、日本初の盲導犬「チャンピイ」を世に送りだし、昭和46年には、アイメイト協会の前身である「東京盲導犬協会」を設立しました。
昭和47年10月10日に、盲導犬の啓発活動として、第1回めのアイメイト・デーが実施され、以後毎年続いています。
昭和52年、盲導犬の国鉄の自由乗車が実現、さらに翌年、バスの自由乗車が可能となりました。昭和のころは、盲導犬が公共交通機関に自由に乗ることができない時期があったのですね。
昭和59年、航空3社が、盲導犬が飛行機に乗るときに口輪を装着しなければないという条項を撤廃しました。続いて昭和61年には、バスでの口輪の装着が解除されました。当時は盲導犬に口輪が義務づけられていたようですが、今では考えられない規則です。
そして平成元年、東京盲導犬協会は「アイメイト協会」と名称を変更しました。アイメイト協会では、盲導犬のことを独自に「アイメイト」と呼んでいます。「アイは I 私」「アイは EYE 目」「アイは 愛 LOVE」「アイメイトは私の愛する目の仲間」という意味で、協会名もそこからきています。


「繁殖」→「飼育」→「訓練」→「歩行指導」、そしていよいよデビュー!! リタイア後はのんびりと

子犬が盲導犬になるまでには、実に多くの人たちが関わります。歩行訓練以外はボランティアの援助が必須です。
【繁殖】(ボランティア)
素質と血統のいい母犬・父犬を育て、誕生から生後2カ月までの子犬の成長を見守ります。生まれた子犬の約7割は盲導犬として活躍します。
【飼育】(ボランティア)
生後2カ月の盲導犬候補の子犬を預かり、成犬になるまでの1年間を家族とともに暮らします。さまざまな世代がいる家庭で、愛情をたっぷりと注ぎ、社会への適応性などを育みます。候補犬を協会に帰す「お別れ」は、映画やドキュメンタリーでおなじみの、涙を誘う場面です。
【訓練】
協会の歩行指導員によって盲導犬としての訓練がはじまります。人に従う、ものごとを学ぶ、ハーネスをつけて歩き、障害物や危険を回避する、命令語を聞き分けるなど、約120日の訓練が行われます。
【歩行指導】(ユーザーとの共同生活)
4週間にわたってユーザーとともに暮らし、日常生活での訓練をします。歩行指導は毎日行われ、4週間で130kmを歩きます。外では道路、交差点、駅の改札やホーム、車の乗り降り、飲食店への出入りなどを訓練します。
【リタイア犬を預かる】(ボランティア)
多くの盲導犬は12歳ぐらいで引退し、その後は、リタイア犬飼育のボランティア家庭でゆったりと老後を送ります。アイメイト協会のリタイア犬は、集団ではなく、一つの家庭で家族の一員として余生を過ごします。

盲導犬の候補生。
盲導犬の候補生。

今年の「アイメイト・デー」は10月23日。盲導犬と使用者の話を聞ける

毎年10月(たまに9月の年もある)に開催される「アイメイト・デー」は、盲導犬のユーザーと、盲導犬に関わる人たちとのつながりや理解を深め、社会啓発をする催しです。今年は10月23日(日)に開催されます。
アイメイト協会の活動の報告をはじめ、盲導犬とそのユーザーの紹介、盲導犬を語るコーナーなどがあり、毎年多くの人が参加しています。
・日時:10月23日(日) 13:00〜15:50
・場所:TKPガーデンシティ竹橋(東京都千代田区)
参加したい方はメールで申し込みを。締め切りは10月11日(火)。参加方法はアイメイト協会のホームページ(下記リンク先)を参照してください。

視覚障害者の自立と盲導犬育成のために、私たちができることは

東京の新橋駅の日比谷口から出てSL広場に行くと、ニュー新橋ビルの前に、「乙女と盲導犬の像」があります。昭和44年、東京虎ノ門ライオンズクラブにより、盲導犬の普及と視覚障害者の自立を願って設置されました。写真のように、当時の盲導犬はシェパードが一般的でした。この銅像が建てられたことをきっかけに、盲導犬育成への募金活動や啓蒙活動が盛んになったといわれています。
盲導犬育成のために、私たちができることは何でしょう。盲導犬を1頭育成するには、約300万円かかるといわれています。そんな大きな額を事業で捻出するのは難しく、日本にある盲導犬育成の団体では、寄附や募金でその費用の多くをまかなっています。アイメイト協会への寄附は、一口1000円から受け付けています。また、人が集まる場所に募金箱を置いて募金を集めることもできます。協会に連絡すれば、ラブラドールレトリーバーの人形が乗ったかわいい募金箱を受け取ることができます。
街で盲導犬や視覚障害者を見かけたら、「どちらへ行かれますか」などと声をかけて行き先へと誘導するのも、視覚障害者にとっては一助となります。誘導する人のヒジの上の部分を、盲導犬ユーザーの場合はハーネスを持っていないほうの手で、白状使用者の場合は杖を持っていないほうの手でつかんでもらい、いっしょに歩きます。
そして、最も重要なことは、混雑している電車のホームや横断歩道などで、危険な状態が迫っている視覚障害者を見かけたら、「危ない!!」「ストップ!!」などと大きな声で知らせましょう。その勇気ある一声が、重大な事故の防止へとつながります。
〈参考サイト①:「アイメイトウェイ」(公益財団法人アイメイト協会 公式ホームページ)〉
〈参考サイト②:「アイメイト後援会」〉
今年の4月から、「障害者差別解消法」が施行され、その中で、盲導犬同伴での入場・入店を拒否することは不当な差別にあたるとされており、社会の中で盲導犬がますます活躍できる時代になりました。アイメイト協会を創設し、盲導犬育成のために尽力した塩屋賢一氏の思いが、着々と実を結んでいます。
盲導犬や視覚障害者が巻き込まれる事故のニュースを目にすると、胸が痛みます。街で彼らが危険な状態にさらされている場面に遭遇したら、「危ない!!」と大きな声を出すこと、それくらいの勇気を私たちも持ち合わせていたいものです。

乙女と盲導犬の銅像。
乙女と盲導犬の銅像。