北海道では紅葉が始まり、いよいよ秋本番となってきました。紅葉とともに木々の実が赤く色づき、秋の風景に彩りを添えています。私たちの目を楽しませてくれる赤い実たちには、それぞれに“物語”がありますが、今回は、のど飴でおなじみの南天、ヒットソングで知名度が高いハナミズキ、スーパーフードとして注目のクコについて、その隠された“物語”について見てみましょう。

のど飴でおなじみの「南天」は縁起のいい木。「難」を「転」じて福となす

この時期、山や公園、庭など、身近なところで南天が赤い実をつけています。葉が赤く色づいている南天もあります。また、季節が進み冬になっても、南天の実は残っているので、白い雪と赤い実の美しいコントラストを目にすることもあります。このように、秋を彩る南天の実は、私たちの暮らしにあまりにも身近な存在です。
南天というと、のど飴としてなじみが深いですが、もともとは平安時代に中国から伝えられ、古くから咳止めの薬として用いられてきました。最近の研究によると、南天の実に含まれている「ナンテニン」や「ヒゲナミン」という成分が気管を拡張し、苦しいセキが楽になる、ということがわかってきました。
薬以外では、「ナンテン」という言葉の響きから、「難」を「転」じる「難転」ということで、縁起のいい木としても愛されています。戦国時代には勝利を祈る木として使われ、また江戸時代には火災よけや魔よけとして庭に植えられていました。七五三や初節句などの祝い事では、厄よけとしてお赤飯に添えられたり、家紋にも使われています。身近なところでは、福寿草とともにお正月の花としても用いられています。
〈参考サイト:常盤薬品「南天研究所」〉


北米原産の「ハナミズキ」。大正時代、ワシントンへ贈った桜のお礼として“来日”

ヒットソングでも有名な「ハナミズキ」はアメリカ原産です。日本のヤマボウシに近い種なので、「アメリカヤマボウシ」ともよばれます。庭の木や街路樹として植えられていて、東京近郊や愛知、静岡などでは、市や区の花として親しまれています。
ハナミズキがはじめて日本にやってきたのは、1915年(大正4年)。その3年前に、当時の東京市長がワシントンに桜を贈り、そのお返しとして、アメリカ政府からハナミズキが贈られ、当時、日比谷公園などに植えられました。以降、ハナミズキは東京からどんどん広がり、今では街路樹などとしても人々の目を楽しませています。秋の赤い実もかわいらしいですが、桜が散るころに咲く淡いピンクの花のほうが印象的かもしれません。

薬膳や杏仁豆腐でおなじみの「クコ」。日本中に“スーパーフード”が生えていたとは!!

10月ころに実をつける「クコ」は、漢字で書くと「枸杞」。公園や道端などで目にすることが多い、身近な樹木です。赤い実は楕円形で、直径は1cm、タテの長さは1.5cmほどです。
中国では紀元前から、“不老長寿”の生薬として使われていました。現在は、干したクコはドライフルーツとなり、薬膳料理やおかゆに利用されています。もっともポピュラーなところでは、杏仁豆腐に入っている、朱色の楕円形の粒として目にすることが多いのではないでしょうか。
最近ではアサイーのようなスーパーフードとしても注目を集め、海外のセレブ層でも話題になっています。効能としては、抗酸化作用(老化予防)、冷え性解消、基礎代謝の上昇、高血圧の改善、疲労回復、美容、目の疲れなどに効果があるとされています。ただ、いくら体にいいといっても、ドライにしたものをそのまま食べると独特の味がして、苦手な人も多いようです。やはり、料理やスイーツなどに混ぜて食べるのが一般的です。1日に摂取する量は、ドライフルーツの場合、副作用のことを考えると、多くても1日20粒ほどが適正量です。レーズンのようにそのまま食べてもいいのですが、一度、水や砂糖水、酢を加えた水で戻して柔らかくすると、使い勝手がよくなるので、料理の彩りとして添えることができます。
南天、ハナミズキ、クコのほかにも、秋に赤い実をつけるのは、ナナカマド、イチイ(オンコ)、サンザシ、センリョウ・マンリョウ、ヤマボウシなど、いろいろあり、そのどれにも深い“物語”があります。北海道では今、紅葉が見ごろを迎え、街路樹のナナカマドが赤く色づいています。街角で赤い実を見かけたとき、その奥に隠れている“物語”を考えてみるのも、秋の一興かもしれません。