昨年のプレーオフ、ボストン・セルティックスはイースタン・カンファレンスを制してNBAファイナルまで駒を進めたものの、ゴールデンステイト・ウォリアーズの前に2勝4敗で敗退。

 その悔しい思いを晴らすべく今プレーオフを迎えたが、ホームのTDガーデンで臨んだフィラデルフィア・セブンティシクサーズとのカンファレンス・セミファイナル第5戦を103−115で落とし、2勝3敗と先に王手をかけられてしまった。

 現地時間5月11日の第6戦を敵地ウェルズファーゴ・センターで戦うにあたり、チーム最古参のリーダー格マーカス・スマートは、2勝3敗で追い込まれた状況のメンタリティをこう表現していた。

「身体がボロボロに疲弊しようが、流血してしまおうが、どこかケガをしても構わないほどの気持ちでプレーできるヤツだけがコートへ立つことができる。それがプレーオフというものなんだ」
  この第6戦は、エースのジェイソン・テイタムが最初のフィールドゴール15本のうち14本もミスする絶不調だったなか、スマートやジェイレン・ブラウン、マルコム・ブログドンらがつなぎ、95−86で勝ち切ることに成功。

 それまで不振だったテイタムは、残り約4分から起死回生の3ポイントを4本決め切るなど最終クォーターだけでシクサーズの総得点(13得点)を上回る16得点を叩き出し、計19得点に9リバウンド、6アシスト、2スティール、2ブロックをマークした。

 しかしながら、試合を通してセルティックスを引っ張ったのはスマートだった。29歳のファイターは、41分42秒コートに立ってチームトップの22得点、7アシスト、2スティールに7リバウンドを記録。さらにブラウンが17得点、6リバウンド、4アシスト、ブログドンが16得点、6リバウンド、ロバート・ウィリアムズ三世が10得点、9リバウンド、2ブロック、アル・ホーフォードが11リバウンド、デリック・ホワイトが9得点と、7人ローテーションで勝利を掴み取った。 このチームのエースはもちろんテイタムだ。「みんなが僕のことを信頼してくれている。彼らは『いいショットを狙い続けるんだ。そうすればそのうち決まる。ほかの方法でゲームにインパクトを与え続けろ』と言ってくれた」と試合後に語った25歳のオールスターフォワードが、リーグでも指折りの実力者の1人なのは間違いない。

 だが、9年連続でプレーオフ進出中のセルティックスの屋台骨は、やはりスマートだ。「彼はベテランで、このリーグでオールスター級の男なんだ。何年にもわたってこのチームを引っ張っていて、昨年はファイナルまで導いた。だから彼は、この状況を理解してしっかり準備できていた。(第6戦で)ビッグショットをいくつも決めてくれたよ。彼こそが僕らの求めるポイントガードなのさ」と、今季の最優秀シックスマン賞に選ばれたブログドンはスマートに絶大な信頼を寄せていた。
  運命の第7戦は14日、セルティックスのホームで行なわれる。

「できれば(試合の出だしで)もっといいスタートを切りたいね。次は間違いなくビッグゲームの第7戦なんだ。ホームに戻れるのを楽しみにしているよ」とテイタム。セルティックスとシクサーズ、勝利の女神ははたしてどちらに微笑むのか。

文●秋山裕之(フリーライター)

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