“日本最速王”の称号を初めて手にした坂井隆一郎(大阪ガス)の目には光るものがあった。

 6月4日、陸上の日本選手権・男子100メートル決勝が行なわれ、坂井は得意のスタートダッシュを決めて前半にリードを奪うと、ライバルの猛追を振り切って10秒11(向かい風0.2メートル)で優勝を飾った。

【動画】ライバルを振り切った坂井が優勝!決勝レースを振り返る

 前日の予選では10秒33、決勝の3時間半前に実施された準決勝では10秒17と3本を揃えた25歳は、試合後のテレビインタビューで「地元の大阪で優勝したかったので、優勝できて本当に嬉しいです」と涙ながらに声を絞り出した。

 人目もはばからずに涙を流した坂井は、こう理由を明かしている。

「(日本選手権の)2、3日前からアキレス腱が痛み出して、走るか迷っていた。でもやっぱり『優勝したい』という気持ちが大きかったんです。そんななかで優勝することができたので、こみ上げるものがありました」

「けっこう痛かったので、準決勝で辞めたいという気持ちがあった。でも、今後もこういう状況はあるかもしれないので、チームで話し合って、『できるところまでやろう』ということで、ここまでやってきました」
  満身創痍になりながらも掴み取ったタイトルに感慨もひとしおだ。「周りの方々のサポートのおかげで、優勝することができました。周りの皆さんに感謝したいです」と口にした彼の左足は、しっかりとテーピングで固定されていた。

 タイムに関しては「怪我があったとしても10秒00は日本選手権で出したかった」と悔しがったが、夏に向けて課題が見つかったようだ。

「まだスタートがはまり切っていない。今伸びている2次加速と、武器であるスタートを合わせて、前半でもっとリードをとれるレースをしたい」

 逆境を乗り越え、また一回り大きくなったスプリンター。今後の成長が楽しみな存在だ。

取材・文●永野祐吏(THE DIGEST編集部)

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