日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁が21日午後3時半から、金融政策決定会合を受けて記者会見した。

 今回の会合では、デフレ脱却に向けて2013年4月からスタートした「異次元緩和」について、総括的な検証を公表した。

 

総括的な検証の結果と新しい枠組みについて

毎日新聞:幹事社の毎日新聞です。よろしくお願いします。まず代表して2点、質問させてください。まず1点目は本日の総括的な検証の結果、そしてそこにフリップがありますが、今日の新しい枠組みについてご説明ください。

黒田:本日の決定会合では、量的・質的金融緩和導入以降の経済物価動向と政策効果について総括的な検証を行いました。その検証結果を踏まえて2%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するため、金融緩和強化のための新しい枠組みである「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入することを決定しました。

 新しい枠組みは2つの要素からなっております。第1に金融市場調節によって長短金利の操作を行うイールドカーブ・コントロール。第2に消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%の物価安定の目標を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続するオーバーシュート型コミットメントです。

 まずイールドカーブ・コントロールです。総括的検証で示したとおり、量的・質的金融緩和は経済、物価の好転をもたらし、その結果、日本経済は物価の持続的な下落という意味でのデフレではなくなりました。その主たるメカニズムは実質金利低下の効果です。これを長短金利の操作によって追求するイールドカーブ・コントロールを、新たな政策枠組みの中心に据えることといたしました。今後は毎回の決定会合で決定、公表する金融市場調節方針において日本銀行当座預金に適用する短期金利、および10年物国債金利の操作目標の2つの金利水準を示します。

 日本銀行の国債買い入れは、買い入れ額のめどを示した上で長期金利の操作方針を実現するように運営いたします。なお、買い入れ対象については引き続き幅広い銘柄とし、平均残存期間の定めは廃止しました。

 今回の決定会合ではおおむね現状程度のイールドカーブをイメージして、短期政策金利をマイナス0.1%とするとともに、10年物国債金利が0%程度で推移するよう長期国債の買い入れを行うこととしました。また、買い入れ額は年間増加額、約80兆円をめどとしました。イールドカーブ・コントロールを実現する手段としては、主として政策金利残高に対するマイナス金利の適用と、長期国債の買い入れを使っていきます。この2つの組み合わせがイールドカーブ全般に影響を与える上で有効であることは、マイナス金利導入以降の経験で明らかになっています。

 加えて金利操作を円滑に行うため、新しいオペレーション手段を導入しました。すなわち日本銀行が指定する利回りによる国債買い入れ、いわゆる指し値オペを導入するほか、固定金利の資金供給オペレーションを行うことができる期間を、現在の1年から10年に延長します。金利が現状程度のイールドカーブの水準から大きく変動することを防止するため、金利が上昇した場合などには10年金利、20年金利などを対象とした指し値オペをただちに実施する用意があります。

 イールドカーブ・コントロールを中心とする新しい枠組みではマネタリーベースや国債保有残高の増加ペースを操作目標とする従来の枠組みに比べて、経済・物価・金融情勢の変化に応じてより柔軟に対応することが可能です。結果として政策の持続性も高まると考えています。

 次にオーバーシュート型コミットメントについて説明します。日本銀行は生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が、安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続するという、新しいコミットメントを導入しました。2%の物価安定の目標を実現するためには人々のデフレマインドを抜本的に転換し、予想物価上昇率を引き上げる必要があります。この点、総括的な検証でも示したように、わが国における予想物価上昇率の形成は依然としてかなりの程度、適合的であり、足元の物価上昇率に強く引きずられる傾向があります。

 こうしたことを踏まえ、予想物価上昇率をさらに引き上げていくためには、金融緩和の継続に関する極めて強力なコミットメントを導入することによって、物価安定の目標の実現に向けた日本銀行の揺るぎない姿勢をあらためて示すことが必要であると判断しました。もともと2%の目標を実現するということは、景気変動などをならして平均的に2%を実現するということですから、2%をオーバーシュートする局面は想定されています。しかし、金融政策には効果が表れるまでにラグがあることを踏まえると、実際に2%を超えるまで金融緩和を続けるというのは、極めて強いコミットメントです。

 日本銀行が供給しているマネタリーベースの対名目GDP比率は、すでに80%程度に達しています。新しいコミットメントの下で現在の調節方針に沿って金融緩和政策を継続すれば、あと1年強で100%を超える見込みです。この水準は米国や欧州の20%程度をはるかに上回っており、日本銀行の金融緩和がいかに大規模なものであるかをご理解いただけると思います。

 日本銀行は今後とも経済・物価・金融情勢を踏まえ、2%の物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するため、必要と判断すれば躊躇なく政策の調整を行います。具体的な追加緩和手段としては、イールドカーブ・コントロールにおける短期政策金利や長期金利操作目標の引き下げのほか、量的・質的金融緩和以来実施してきた資産買い入れの拡大が考えられます。また、状況に応じてマネタリーベースの拡大ペースを加速させることを手段とすることもあります。その場合には長期金利の大幅な低下を伴うものと考えられますが、そうした強力な緩和が必要となる状況もありうるということです。

 日本銀行は新たな政策枠組みの下で2%の物価安定の目標の実現に向けて、従来よりも一段と強力な金融緩和を推進してまいります。以上です。