電通の過労死事件をきっかけに、日本企業における働き方があらためて問われています。日本では形の上では労働基準法という法律が整備されており、過剰な労働は禁止されているはずですが、実際にはあまり機能していません。一部には、こうした滅私奉公的な働き方を推奨する雰囲気もあります。日本企業における働き方について論点整理してみました。

男女問わず全員丸刈り、パソコンの利用は禁止でも社員は満足

 電通のケースでは、残業時間の長さだけでなく、職場環境の問題も大きかったと考えられます。ネット上でもこうした状況は是正すべきであるという意見がほとんどでした。しかし電通事件と前後してネットではまた別のケースも話題となっていました。それは、雑誌SAPIOで紹介された神奈川県にある木工企業の事例です。

 その企業では、若手の社員は「丁稚(でっち)」と位置付けており、5年間にわたる厳しい寮生活が義務付けられています。起床は朝5時で就寝は23時。男女問わず全員丸刈りが強制され、携帯電話やパソコンの利用は禁止です。私的な連絡手段は手紙のみとなっており、休みは盆と正月のみ。また、恋愛は「絶対禁止」ですが、多くの社員は満足しているそうです。

「本人が納得しているならよい」「職人としての修行は厳しいものだ」

 同社の就業実態が正式に開示されているわけではないので断言はできませんが、この記事で紹介されている内容が本当であれば、労働基準法に違反している可能性はかなり高いとみてよいでしょう。

 ネットの反応を見ると、「こんな企業は即刻、摘発して欲しい」という意見が多いものの、「本人が納得しているならよい」「職人としての修行は厳しいものだ」といった意見もかなり見られます。

 もし本人が納得しているなら厳しい環境も許容されるというのはひとつの考え方ではありますが、悪質な会社の場合には「君は納得して入ったのだから我慢すべきだ」といった教育を施す可能性があり、法律に違反しているのかの線引きが非常に難しくなります。

低生産性の原因はIT化の遅れと、人的資本投資の貧弱さ

 一方で、幹部候補生として採用された人については、時間ではなく成果で評価すべきものなので、一般の労働者と同じように過剰に保護する必要はないとの意見もありました。いずれにせよ、日本では労働契約の締結という概念が薄いですから、事前に企業と労働者はどのような契約を結んでいるのかということについてはもっと真剣に考える必要がありそうです。

 これとは別に、日本企業全体の構造的な問題や生産性の低さを指摘する声もあります。日本では原則として解雇ができず、正社員については終身雇用が保障されています。企業は、不景気で人員が過剰になっても解雇できませんから、安易に人を増やせません。このため仕事が多い時には、長時間労働でこれを乗り切るということが仕組みとして定着しており、これを具現化したのが、事実上社員に無制限の残業を課す36協定(サブロク協定)ということになります。

 先月公表された労働経済白書では、日本の労働生産性は先進国の中でも著しく低い水準にあるとの厳しい評価が出ています。主な原因はIT化の遅れと、人的資本投資の貧弱さです。長時間残業問題がこうした構造的要因なのだとすると、すぐに改善することは難しいでしょう。


(The Capital Tribune Japan)