今年こそノーベル文学賞を――。吉報を待ち続けたファンの願いはまたして実らなかった。2016年の文学賞は米ミュージシャンのボブ・ディラン氏に。ここのところ毎年、有力候補として名前が挙がる村上春樹氏の受賞はならなかった。13日夜の文学賞発表に合わせて都内で開かれたカウントダウンイベントでは、詰めかけた熱心なファンからため息がもれた。

「かつて聴いていた」と苦笑

 イベントは東京・千駄ヶ谷の鳩森八幡神社で行われた。千駄ヶ谷は、村上氏がジャズ喫茶を経営し、若き日を過ごした場所。当時、近所の神宮球場で野球観戦中に「小説を書こう」と思い立ったとされる。

 調布市からやってきたという男性(82)は、「審査員は、村上春樹の世界への理解度が今ひとつ足りないのではないか。もう少し幅広く理解している人が審査員なら」と不満げ。西東京市の男子大学生(21)も「審査員は賞をあげる気がないのだろうか」と落胆を隠さない。村上氏の本には最近はまったといい、気に入っているのは「1973年のピンボール」。

 「風に吹かれて」などのヒット曲で日本でもなじみのあるボブ・ディランの受賞に驚きの声もあった。地元千駄ヶ谷に住む50代の男性会社員は、村上氏が選ばれなかったのを残念がる一方で「ボブ・ディランの受賞には驚いた。かつて聴いていたので」と苦笑い。

 同じく千駄ヶ谷の40代女性は、「ボブ・ディランの受賞は意外。ノーベル賞は間口が幅広くてすごいなと思った」と感心する。音楽好きと語る女性は「最近、文学賞は平和活動に携わった人が受賞する傾向にあるようなので、ボブ・ディランはそこが認められたのでは」と想像した。

 千駄ヶ谷大通り商店街の有志らが中心となって企画したこのイベントは、今年で3回目。またしても受賞を逃したが、近所に住む70代女性は、「あきらめないで。次回、もしくはいつかは必ずノーベル賞が取れると思うから」と期待。会場のファンからは「村上春樹は2020年じゃないか」と予測する声も聞かれた。

(取材・文:具志堅浩二)