厚生労働省が介護費用を削減するため、地方自治体ができるだけ要介護認定のランクを下げるよう促す施策の導入を検討しています。年々増加する介護費用は財政を圧迫していますが、要介護認定を無理に下げると、必要な介護が受けられないという問題が発生する可能性があります。

昨年の4月から基準が厳しく

 介護保険制度に基づくサービスを受けるためには、事前に申請を行い、要介護レベルに関する認定を受けなければなりません。具体的にどのような介護サービスを受けることができるのかは、市町村に設置されている介護認定審査会の判定によって決まってしまいます。

 例えば、特別養護老人ホームに入所するためには、要介護3以上の認定を受ける必要があります。逆に言うと、要介護2以下では原則として特別養護老人ホームには入れません。以前は要介護1から入所が可能でしたが、施設の不足が深刻な状況となっており、昨年の4月から基準が厳しくなりました。

介護費用として年間約10兆円を支出

 厚労省が検討しているのは、この要介護認定を受けた人の割合を減らした自治体には、財政的支援を行うという施策です。要するに介護が必要な高齢者の数を減らした自治体にはお金を出すということです。要介護者の数が減れば、介護保険による支出も減少しますから、これによって介護費用を抑制することが可能となります。

 現在、介護保険制度からは、介護費用として年間約10兆円が支出されています。このうち、半分は国民が支払う介護保険料で賄われており、残りは国と地方自治体が半額ずつ負担しています。この金額は年々増加することが予想されており、今のままでは制度が維持できなくなる可能性があります。

介護をめぐる厳しい選択

 できるだけ元気なままでいられるような施策を行い、要介護者の数を減らすことができれば、国民にとってもメリットがありますが、現実はそう簡単ではないでしょう。要介護認定者の割合を減らした自治体にお金が出るということになれば、多くの自治体が認定基準を厳しくすることが予想されます。その結果、本来は手厚い介護が必要だと思われる人がサービスを受けられないという事態が発生する可能性は十分に考えられます。

 介護サービスが受けられないということになると最終的に介護を担うのは家族になります。安倍政権は介護離職ゼロを掲げていますが、介護認定が厳しくなると介護離職者の増加は避けられないでしょう。一方、介護認定を甘くすれば、今度は財政が立ち行かなくなります。介護をめぐっては厳しい選択を迫られそうです。


(The Capital Tribune Japan)