間近に迫った今秋ドラフトの超目玉、創価大の田中正義投手が15日、ドラフト前、最後の先発になるであろう東京新大学野球リーグの流経大戦に登板、今春に右肩関節の炎症が判明して以来、初の完投勝利をマークした。今秋最多となる125球を投げ切り9回5安打3失点、3回以外は毎回Kの8三振を全て空振りで奪って見せ、各球団のスカウト陣が懸念する、右肩故障の不安を払拭した。

 埼玉・県営大宮公園野球場のネット裏には、ソフトバンク、広島、楽天、阪神など計9球団のスカウトが集結した。年明け早々に1位指名を宣言していた楽天は立花球団社長まで顔を見せていた。田中は、先週の杏林大戦では、今秋最短となる5回3失点で降板、田中の右肩の回復に疑念が生じていた。

 流経大の先発もドラフト上位候補の最速155キロ右腕、生田目(なばため)翼。田中がリーグ戦で唯一黒星を喫した好投手で、その生田目も、度重なるケガから約1年振りに復活したばかり。この「大谷・藤浪世代」の超大物右腕対決を最終チェックするために各球団のスカウトが集まるのは当然だった。

 2人の対決は、2年春以来、2度目。スカウトが固唾を呑んで見守る中、リーグ優勝がかかった注目の投げ合いは、闘志全開かつ両者一歩も譲らぬ熱戦になった。

 先に点を取られたのは田中の方だった。2回、先頭の4番打者に三塁線を破られる二塁打で初安打を許すなど、一死三塁のピンチを招くと、スクイズを決められた。しかし、次打者を152キロの豪速球で空振りの三振。力でねじ伏せ、最少失点で凌いだ。

 3回には味方打線が生田目を捉えて逆転してもらったが、2対1で迎えた5回に、ヒットと四球、田中自身の暴投などで崩れ、二死二、三塁のピンチに左前2点適時打されて再逆転を許す。

 田中は、「真っ直ぐで押せるかと思ったけど、予想以上に相手が真っ直ぐに対応してきた」と述懐した。
 だが、創価打線が、復帰後初先発、初完投勝利から中4日登板で疲れが見えた生田目をマウンドから引き摺り下ろして再逆転に成功すると、田中がギアを入れなおす。圧巻だったのは8回である。

 わずか4球で二つのアウトを奪うと、この試合で唯一長打含む複数安打をされた4番打者に対して、「シャ──!!」「オリャ──!!」とマウンド上で吠えながら、カウント0-2と簡単に追い込んだ。その4球目は、ボール球にこそなったものの、田中自身が、「納得のいく球だった」と手ごたえを感じた、この日、最速の153キロをマーク。続く5球目には、決め球のフォークでバットに空を切らせ、きっちりリベンジを果たした。

 迎えた最終回も、田中のストレートの威力は、落ちていなかった。最後の打者を渾身の151キロで空振り三振に仕留め、ゲームセット。大きくガッツポーズして見せた。

 ライバル生田目に初めて投げ勝ち、リーグ戦自身19連勝で昨秋以来2季振りの優勝へ王手をかけた。そして、何より、田中の右肩に向けられていたスカウトの疑念を晴らした。

 それでも、試合後の田中は「この一週間、流経のことが頭から離れなかった。優勝決定戦で先勝できたのは大きい。今日は、自分が点を取られるたびに味方が逆転してくれたので、野手に感謝です」と淡々と語った。 優勝のかかった今日の試合ではリリーフでの連投も辞さない構えだという。

 田中は、「ドラフトやスカウトのことは全く考えてなかった」とも言ったが、広島の尾形スカウトの「元からモノが違うので、(高校時代の古傷箇所でもある右肩痛への不安は)問題ない。昨年までのデキとはいかないまでも、球の力はだいぶ戻ってきている」と評価した。1位指名すると見られている日ハムのスカウト陣が、この大一番に姿を見せなかったことが不気味だが、右肩への不安を一蹴したことで、一時は、降りる球団が増えるのではないかと言われていた田中がドラフトの超目玉として再浮上した。複数球団の競合となることは間違いなさそうだ。

 (文責、写真・徳吉刑事/フリーライター)