2014年夏に財政危機が表面化した富津市。今年1月に再建への道筋となる経営改革プランを策定し、一つの区切りをつけた形だが、約30年にわたって続く人口減少が、大きな課題として残る。25日に告示、10月2日投開票される同市長選を前に、富津での暮らしを選んだ東京都内からの移住者に市への注文を聞いた。 (北浜修)

 景勝地鋸山(のこぎりやま)で知られる同市金谷(かなや)。JR内房線浜金谷駅から徒歩五分ほどの一角に、コミュニティスペース「まるも」がある。今月中旬、いずれも都内から移住した男女四人が歓談していた。

 滝田一馬さん(26)は「農業をしたい。田舎で暮らしたい」と、昨年、金谷に移住してきた。都内で二年間、会社員生活をした。退社後は一宮町で一年、農家に泊まり込みで働いてからの移住だった。

 今は金谷の古民家に一人で住み、木更津市の郊外で週末に農業体験する人向けのサークルを運営。富津市の活性化を目的に八月、発足したNPO法人オール富津情報交流センターの活動にも参加する。

 葛飾区出身。縁もゆかりもなかった金谷での暮らしを選んだのは、学生時代に農家へボランティアに来たことがきっかけ。「東京の下町に似て、よそ者を受け入れてくれる雰囲気があり、気に入った。住むならばここだと思った」と笑う。

 富津市の人口は、一九八五(昭和六十)年の五万六千七百人台をピークに、九月現在は四万五千百人台と、約三十年で一万一千人ほど減った。近年、転出先の多くは君津、木更津、袖ケ浦の近隣三市という。

 三月にまとめた市の人口ビジョンでは、二〇四〇年時点で維持したい人口を「三万四千人以上」としたが、市は今後も減少傾向が続くとみている。

 まるもオーナー山口拓也さん(27)は「定住人口減は避けられないとしても、観光地としての価値は高い。交流人口を増やせばよい」と提案。雑誌編集などをする松元加奈さん(32)は「インターネットで移住先の物件を調べても、情報が少ない。もっと発信を」と語る。

 老後の田舎暮らしを望み、一三年に移住した谷口定昭さん(79)は「自然豊かで高齢者にも若者にも魅力ある所なのに、良さを十分にアピールできていないのでは」と話していた。

 市長選には、いずれも無所属新人で、元副市長の高橋恭市さん(46)=自民、公明推薦=と、公認会計士の地引直輝さん(36)が、立候補を予定している。