大雨で土砂災害の危険が高まると県が熊谷地方気象台と共同で発表する「土砂災害警戒情報」。市町村長が出す避難勧告や住民が自主避難する際の判断材料となっているが、運用開始から約9年が経過し、県が発表基準や対象地域の見直し作業に着手した。2018年度から新しい基準で運用される見通しで、精度向上が期待されている。 (冨江直樹)

 土砂災害警戒情報は県内では高い崖など土砂災害危険箇所を中心に四十七市町村を対象に、あらかじめ設定した降雨量の基準を超えた場合、市町村を特定して発表する。昨年一月施行の改正土砂災害防止法で、市町村への通知や一般への周知が義務づけられた。

 現在の基準による運用は〇七年十二月に始まった。しかし、近年、全国各地で大きな被害をもたらす集中豪雨が増加しており、蓄積された気象データや災害実績などの情報を反映して見直す。一方、市町村からは、雨量が設定基準を超えても土砂災害が発生しない「空振り」に疑問の声も上がっており、対象市町村の見直しも並行して進める。

 十四日に県庁で開かれた見直し検討委員会の初会合では、委員長に選出された埼玉大研究機構レジリエント社会研究センターの田中規夫教授が昨年の鬼怒川決壊や今夏、北海道・東北を襲った台風による豪雨に触れ「埼玉の降雨量は全国的にも少ない方で災害も比較的少ないが、雨の降り方が変わってきているので決して油断できる状況にない。土砂災害警戒情報の位置付けは重要なものになってきている」と危機感を示した。

 検討委のメンバーは気象予報士や国交省、熊谷地方気象台の職員ら約十人。会合は一部非公開で行われ、議事録概要によると出席者からは「土砂災害警戒情報の発表が市町村単位ではエリアが広すぎる。もう少しターゲットを絞ることができないか」「基準に満たない崖地などが本当に土砂災害の可能性がないか確認が必要」などの意見が出された。

 県河川砂防課によると、県内の土砂災害危険箇所は、JR八高線以西の山地や丘陵地帯に集中。二〇〇七年以降、十一市町村で土石流八件、崖崩れ十五件、地滑り五件が発生した。死者が出る大きな土砂災害は一九四七年のカスリーン台風以来、発生していないという。