のこぎりの刃のようにギザギザした姿から「のこぎり屋根」と呼ばれる古い工場を撮り続けている中央区のカメラマン吉田敬子さん(62)が、「のこぎり屋根紀行」を出版した。明治時代から昭和初期にかけて建てられた、のこぎり屋根は取り壊されることも多い。「日本の産業を築き上げた遺産として、もっと関心を持ってほしい」と呼び掛ける。 (石原真樹)

 吉田さんによると、のこぎり屋根は産業革命時代のイギリスが発祥で、日本でも織物産業の発展とともに全国に広がった。ギザギザになっているのは、明かり取りの窓を設けるため。多くは北側を向いている。織物の出来具合を見るのには、まぶしくない光が適している。

 吉田さんが、のこぎり屋根の撮影を始めたのは一九九八年、群馬県桐生市にある織物工場の写真を新聞で見て「モダンな美しさにひかれた」のがきっかけだ。「機屋の旦那が見栄えの良さを競って造り、一つとして同じ形がない」のが魅力的に映った。

 以来、東北から九州まで三千棟以上を巡った。デジカメは使わずフィルムで撮影。職人らから、工場がにぎやかだったころの話などを聞く。二〇〇三年から建築関係の団体の会報に、写真と寄稿文を毎月連載。今回、それを本にまとめた。一三年に解体された台東区谷中の元リボン工場、アートスペースとして再生した青梅市の建築などが登場する。

 出版を記念した写真展を十五日まで、台東区上野桜木のイベントスペース「時代空間ねこじゃらし」で開いている。活動のきっかけとなった桐生市の建築をはじめ約五十点を展示。午前十一時〜午後七時。入場無料。「のこぎり屋根紀行」は新書判二百七ページ。上毛新聞社発行。千四百円(税別)。