さいたま市西区で二十四時間、年中無休で障害者の生活支援を行うNPO法人「ねがいのいえ」の理事長藤本真二さん(54)が、三十年以上にわたり障害者に接してきた経験から、パニックを起こしやすい障害者への対処法をまとめた著書「行動障害が穏やかになる『心のケア』」(クリエイツかもがわ、二千百六十円)を出版した。藤本さんは「ケアのマニュアル化が進んでいるが、障害者にどのようなつらい思いがあるのか、寄り添い、支える『心のケア』がベースになければ意味がない」と語る。 (中里宏)

 藤本さんは大学二年のとき「人の役になることがしたい」と障害者支援の世界に飛び込んだ。卒業後、当時はどこにもない二十四時間の支援を行っていた都内の事業所に就職した。「料金の安さ、年齢や障害の種別に関係なく、どんな理由でも受け入れていた。世界最高のケアだったと今でも思う」という。

 「医療的ケアが必要な障害者も助けたい」と事業所を辞め、看護学校に四年通って看護師資格を取得。別の入所施設などを経て、二〇〇三年、西区にバリアフリーの一軒家を住宅ローンで建て「ねがいのいえ」をスタートさせた。障害者と家族が必要なことは何でもするというスタンス。ヘルパー派遣やショートステイ、外出や通学支援、泊まりのサービスなど、それぞれに必要な行政の指定を取得し、県内で初めての放課後デイサービス指定も受けた。

 感情のコントロールができずに暴れるなどして、他の事業所で断られる利用者も受け入れる。「断られる原因は、(その事業所の)職員がどのように対応していいのか分からないまま疲弊しているからではないか」という。

 本にはさまざまな生きづらさやストレスを抱え、スタッフを困らせる利用者の個別の事情や、愛情を注いだ結果、笑顔や落ち着きを取り戻したり、できなかったことができるように成長したりする実例が紹介されている。

 こだわりが強い利用者の中には、予定が分からなかったり、いつもと違うことに直面するとパニックを起こす人がいる。「心のケアで支えれば、パニックが抑まる。やがてパニックも起こさなくなる」という。藤本さんは福祉事業所で働くスタッフ向けにノウハウを伝授する研修会も続けており、これまで延べ千人以上が参加したという。

 本の前書きで藤本さんは「利用者のみなさんが穏やかになり安心感が満ちるとき、(福祉スタッフなど)支援者もまた癒やされる。それ自体が最良の虐待防止策」と書いている。

 障害者だけでなく、生きづらさを抱える子どもの親が読んでも子育ての参考になりそうだ。問い合わせはメール=negainoie@r6.dion.ne.jp=へ。