東京都心から郊外に向かう電車に乗っていると、ビルやマンションが林立する風景から、次第に木々や緑が増え一戸建て住宅が目立つようになる。そこでようやく「郊外」に来たと実感する。では、郊外に転じる境目はどこなのだろうか。

通勤電車の乗車時間が30分を越える辺りや、国道16号線が郊外の境目といわれるたりすることもある。だが、明確な定義はない。辞書等で「郊外」を調べると「都市に隣接する地域」と記されている。

「都市」の定義はどうか。「多くの人が集まり、政治や経済の中心になっている場所」だ。そういわれても、自分の住んでいるエリアが都市部なのか郊外なのかわからない人もいるだろう。

そこで、マンション市場という観点から郊外分岐点を調べたのが、不動産コンサルティング会社トータルブレインの杉原禎之専務である。住宅を購入する際に「都心のマンションに住むか、郊外の一戸建てに住むか」は重要なポイントだ。確かに、マンション市場という視点でなら、答えが見つかるかもしれない。





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―― 都心からの距離は25キロが目安

「郊外か否かは、マンション事業が可能なエリアか、難しいエリアかで判断できます」と、杉原氏は言う。たとえば、駅ごとに新築および中古のマンション供給量や取引価格を見ていくと、ある駅を境に傾向ががらりと変わる。つまりその駅が郊外分岐点ということになる。また、総世帯数と借家世帯数が多く、借家世帯の平均年収が高いエリアは将来のマンション事業が可能なエリアだ。とすれば総世帯数、借家世帯数、借家世帯の平均年収がガクンと落ち込むエリアはやはり郊外の境目ということになる。

杉原氏が首都圏の主要13路線について、マンション市場の郊外分岐点の共通項を見たところ、都心からの絶対距離はおおむね25キロ前後、急行等の速達列車に乗って30分前後で都心駅に行ける距離だという。

それでは、杉原氏の分析を基に路線別に郊外の境目を見ていこう。


主要路線の「郊外」の境目は?

中央線(中野〜高尾)は、総世帯数、借家世帯数ともに立川までが高い。借家年収も立川までが400万円台、立川以降は300万円台と分かれる。新築マンションも立川までは高単価・高価格だが、日野より先は単価・価格ともに大きく低下する。つまり立川より先が郊外と考えられる。

京王線(新宿〜京王八王子・橋本)の場合、総世帯数は分倍河原まで、借家世帯数は府中まで、借家年収は中河原までが高い。一方、新築マンションは聖蹟桜ヶ丘までが単価が高い。中古マンションは聖蹟桜ヶ丘まで取引が多いが、調布以降は特急停車駅の府中を除き成約単価が低水準。これらを総合的に判断すると聖蹟桜ヶ丘から先が郊外と判断される。

小田急線(新宿〜本厚木・片瀬江ノ島)は、急行停車駅の町田・相模大野を除くと、生田以遠は借家世帯数が大幅に減る。新築マンションは生田までは単価が高いが、生田より先は急行停車以外の単価は低め。中古マンションは向ケ丘遊園を越えると急行停車駅以外の単価が低くなる。以上から、向ヶ丘遊園から先が郊外(町田、相模大野などの急行停車駅を除く)。

東急田園都市線(渋谷〜中央林間)は青葉台を除き、江田以遠で借家世帯数が低下する。借家年収は沿線全体で高く、青葉台まで500万円台を維持。新築マンション市場は長津田まで坪単価が200万円超と高い。その先は同160〜170万円に低下する。中古マンション市場はあざみ野までの坪単価が高い。以上から江田以遠が郊外と判断される。


―― 東横線に「郊外」はない

東急東横線・みなとみらい線(渋谷〜元町中華街)は沿線全体が借家率、借家年収ともに高い。新築マンションも東白楽〜横浜を除くほとんどの区間で高単価だ。中古マンションも都心から武蔵小杉にかけて成約単価は高い。渋谷と横浜という大都市同士を結んでいるという沿線の性格もあり、郊外は存在しない。

東海道線(小田原まで)・京浜東北線(横浜方面)・根岸線は、横浜まで同じ方向なのでまとめて考える。根岸線(横浜〜大船)は石川町まで総世帯数、借家世帯数いずれも高水準で山手より先で落ち込む。借家年収は沿線全体で高い。供給単価は根岸から先が低下。中古マンションは関内までの取引は活発だが、石川町以遠は落ち込む。

東京から小田原までの東海道線を見ると、茅ヶ崎までのマンション供給が活発で平塚より先は減少。供給単価は茅ヶ崎より先で低下する。中古マンション取引は藤沢を境に減ってくる。以上から京浜東北線・根岸線の郊外の分岐点は石川町、東海道線は藤沢あたりか。


京急や東武、西武の「郊外」は?

京急本線(品川〜浦賀)は、京急富岡から先で借家数が大きく減少。借家年収は追浜以遠で落ち込む。新築マンションは日ノ出町まで平均単価は高いが、その先は快特停車駅の上大岡、金沢八景を除き低水準だ。京急線は快特の利便性が高く、快特が停まるのであれば品川40キロメートル圏の金沢文庫・金沢八景までマンションエリアとなるが、快特以外は上大岡から先が郊外といえる。

総武線・総武快速線(秋葉原〜千葉)は、津田沼まで総世帯数、借家世帯数が多い。借家世帯年収は沿線全体を通じ総じて高い。新築マンション、中古マンションはどちらも津田沼までが平均単価が高い。つまり津田沼の奥が郊外と判断される。

東京メトロ東西線・東葉高速鉄道線(大手町〜東葉勝田台)は、総世帯数は船橋日大前、借家世帯数は飯山満より先になると落ち込む。借家年収は総じて高い。新築マンションは東海神までは供給が活発だ。中古マンションは浦安までは取引が活発。以上から東海神までがマンション供給エリアで飯山満以遠は郊外といえそうだ。

京浜東北線(埼玉方面「東京〜大宮」)は、東京〜大宮間のどの駅も新築・中古マンションともに供給や取引が活発で、沿線に郊外はないといえる。


―― 東武伊勢崎線は埼玉県に入ると「郊外」

東武伊勢崎線(浅草〜春日部)は、23区内の竹ノ塚を過ぎて埼玉県に入ると借家世帯数が減少する。新築マンションは浅草〜曳舟以外は需給バランスが良好だが、23区外での分譲単価は低水準。中古マンションは竹ノ塚以遠で成約単価が低下する。以上から竹ノ塚から先が郊外といえる。

東武東上線(池袋〜坂戸)は、志木を越えると借家世帯数が低下する。新築マンション市場は志木までは活発で分譲単価も高め。中古マンション市場も志木まで取引は活発だ。志木以遠ではふじみ野を除くと成約単価が低水準。以上から、志木を越えると郊外と判断される。

西武池袋線(池袋〜入間市)の総世帯数は小手指まで多めだが、借家世帯は少なめ。借家年収も清瀬以遠で低めだ。新築マンションは清瀬より先で単価が低下する。中古マンションはひばりが丘までは成約単価が高めだが、東久留米以遠で低下する。以上からひばり丘を越えると郊外と判断される。


著者
大坂 直樹 :東洋経済 記者

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