大学時代「慶應ガール」と呼ばれ、華やかなイメージを持たれている慶應卒の女性。しかし、そのすべての女たちがそのイメージ通りの生活を送っているのだろうか?

慶應というブランド力を持ちながらも、その派手さを苦手とし、日陰の人生を送るのを好む女もいる。そんな「慶應ガール」の人生とは?

同じく慶應出身で現在は広告代理店勤務のトオル(32)が、自身の大学時代の人脈を駆使し、さまざまな“慶應ガール”に斬り込んでいく。



<今週の慶應ガール>
氏名:景子
職業:デザイン事務所勤務
学部:法学部政治学科
年収:500万
住居:武蔵小杉
家賃:83,000円のワンルーム
出自:川崎市出身。中高一貫の女子校(横浜)から一般受験で慶應へ入学。
ステータス:独身



ミスコン出場を断り続けた伝説の美女、景子の場合


景子は、キャンパス内でも有名な美女だった。大学一年生のときに初めて彼女を見たときの衝撃を今でも覚えている。

切れ長でぱっちりとした二重の目に、綺麗に通った鼻筋。肌は陶器のように白く美しい。僕の拙い言葉では表現しきれないほど、見た者を強く惹きつける美しさを持っていた。

それに加えて、彼女は性格も非常に良かった。

「可愛い子は皆に優しくされるから性格もいい」

そんな都市伝説みたいな話もよく聞くが、彼女の性格の良さは表面的なものではなかった。美し過ぎる故に経験したであろう苦渋も乗り越えた、内に秘めた強さと優しさがあった。

慶應には、毎年驚くほどの盛り上がりを見せる「ミス慶應コンテスト」がある。広告研究会が主催する、女子アナの登竜門だと言われるイベントだ。

そのイベントへの出場に、毎年のように景子に白羽の矢が立っていた。しかし、彼女は毎年ミス慶應へのエントリーを断り続けた。

「あまり表に出るような性格ではない。」

そんな理由で、結局大学4年間出場することはなかった。

彼女に出会ってから、ミス慶應コンテストを見ると少し滑稽な気分になった。もちろんそれなりに可愛い子が出場しているのだが、景子の美しさを思い出すと、どの子も同じに見えてくる。

彼女はミス慶應だけでなく、表舞台に出るようなことは極力避けていた。あまりに控えめなその対応に、男性たちは好感を高めたが、女性たちからは「化粧とったら自信ないんじゃないの?」などと、根拠のない陰口を叩かれる始末だった。



そんな彼女の、美人過ぎるがゆえに波乱に満ちた20代、そして29歳のときに下した決断について今日は話そうと思う。


美人過ぎて周りが放っておかない?景子の波乱の20代とは…

「クリエイティブな仕事がしたい」と語った彼女の就職先は…?


本を読むのが好きだった彼女の夢はコピーライター。慶應のマスコミ志望の学生が通う、メディアコミュニケーション研究所で僕と彼女は知り合った。お互い広告関係の仕事に就きたいという共通の目標があったので、就職活動も切磋琢磨しながら乗り切った。

結果、僕と彼女は同じ広告代理店に内定をもらい就職した。しかし、皮肉なことに、営業志望だった僕はコピーライターに、コピーライター志望だった彼女は営業として配属された。

美人で頭の良い彼女はクライアントからのウケが抜群だったようで、「口数が少なくてイマイチ何を考えているか分からない」と評される僕よりよほど適性があった。人事の見る目も捨てたものじゃない。

しかし、クリエイティブな仕事がしたいという彼女の想いを知っていたので、連日接待が続きしんどそうな顔を見るのは正直心が痛んだ。


25歳での結婚、シンガポールでの生活


転機はすぐに訪れる。入社して3年目の25歳のとき、彼女は付き合っていた相手にプロポーズされた。大学時代から付き合っていた3歳年上の男だ。



2人の出会いはゴルフサークル。当時大学4年生だった彼は、新入生として入ってきた景子に一目ぼれをして、猛烈なアプローチの末結ばれた。後で聞いた噂だが、彼にはサークル内に彼女がいて、別れるのにだいぶ揉めたらしい。(気まずくなった景子はサークルを辞めてしまった。)

外資系証券会社に勤めるその男は、元々かなりの遊び人だったようだが、少なくとも景子と付き合っているときに悪い噂はなかった。

そして就職してしばらくした後、彼のシンガポール転勤が決まった。

景子は当時25歳。結婚するには早い年齢だったが、うかうかしていたら彼女は他の男に獲られてしまう。そんな焦りが彼にはあったようで、付き合ったのと同じくらいの猛プッシュで彼女に結婚を申し込んだ。

悩みに悩んだ末、彼女はプロポーズを受け入れる。憧れて入った広告代理店だったが、営業という仕事に酷く疲れていたのだろう。いつも弱音を吐かない彼女が、この時ばかりは少し愚痴めいたことを言っていた。


シンガポールでの駐在妻ライフ。しかし、彼女には諦められなかった思いが…。

29歳、美人駐在妻の英断とは?


それから4年―。

29歳になった彼女は独りでシンガポールから帰国した。若く美しい彼女に嫉妬する駐在妻たちのコミュニティには馴染めず、肝心の夫は仕事でほとんど家にいない。

そして、何より「クリエイティブな仕事がしたい」という思いで入った広告代理店を中途半端に辞めてしまい、逃げるように結婚したことを酷く後悔したようだ。

29歳の誕生日。彼女はとうとう離婚を決意する。夫はかなり抵抗したようだったが、どんどん無口になりストレスでやせ細っていく彼女を見て、最後は受け入れたらしい。

真面目な彼女は、現地の生活に馴染もうとあらゆる努力をしたようだが、心から納得してそれを受け入れることはできなかったようだ。

彼女は当時の心境をこう振り返った。

「29歳、人生をやり直すなら今しかないって思った。」


29歳での離婚。自由の身になった彼女は再び…?


彼女は帰国した後に実家近くの武蔵小杉に家を借り、代理店時代の先輩であるデザイナーが独立して作った会社に再就職をした。まだ社員10人ほどの小さい会社だそうで、「営業からライティングまで何でもやらされる」そうだ。



しかし、「大手広告代理店の美人キャリアウーマン」として名を馳せていたときから一転して、肩の荷が降りたかのようにすっきりした彼女の表情がそこにはあった。

「正直、今までクリエイティブな仕事がしたい、って肩肘張っていたけれど、一回大きく人生につまずいたら変なこだわりがなくなった。」

そう言って静かに微笑んだ。



その美貌が故に、自分の意図しないところで大きく人生が狂わされることもあるだろう。

しかし、いつまでも聡明で美しい彼女でいて欲しい。

人は、美しいものに対して過度に期待を寄せたり妬んだりしてしまう。僕はそんな自分の身勝手さに気付きながらも、彼女を見るとそう願わずにはいられなかった。



【これまでの慶應ガールたち】
vol.1:人生、負け知らずの外銀セールス美女。初めて訪れる挫折とは?
vol.2:このまま秘書でいいのかな。独立を迷ったあの頃 → 今は女社長
vol.3:温室育ちのゆるふわ専業主婦の、30歳を目前とした変化
vol.4:慶應ガール、29歳:出世か?実家の後継ぎか?メガバンク勤務の女、人生に迷う
vol.5:2度の婚約破棄に、重度のマリッジブルー。慶應ガールらしからぬ人生を送る女のその理由
vol.6:「結婚」は「幸せ」とは限らないと気づいた、シングルマザー
vol.7:美人で仕事もデキるパーフェクト・ウーマン。それゆえ恋愛迷走期もあったが、ついに!?
vol.8:校内でも浮きまくっていた“帰国子女”が抱えていたコンプレックスとは!?
vol.9:婚約者に逃げられ、荒れまくった代理店女子を救ったモノとは?
vol.10:シングルライフを謳歌していた美人編集者に、やっと結婚願望が!?
vol.11:東京の生活を捨て、地方に嫁いだ慶應ガールが見いだした幸せとは?
vol.12:元ギャルのイケイケ慶應ガールが、真面目路線へとキャラ変えした理由
vol.13:「自分らしさ」なんて馬鹿らしい?大病院の娘が、親の敷いたレールに戻った理由
vol.14:キャリアに邁進するワーキングマザー。子育てとの両立に悩んだ彼女が取った行動とは?