「話題のIT企業に初の女性執行役員、登場!」

2016年1月、各メディアがこぞって取り上げた。

大手IT系メディア企業CNAの初・女性執行役員に抜擢された、リサ。弱冠28歳での就任だった。

「仕事はすごく熱心だけど、中身は普通の女の子。」

彼女のことを、周囲の人間はそう評する。

女性の社会進出が当たり前になっている昨今。しかし、できれば出世したくないという女性も数多くいる。

これは、“夢中で仕事していたら、いつの間にかここまで来ていた”と語る女子社員が執行役員として奮闘する物語ー。

前回、早速社長の平尾太一から難題を出されたリサだったが…?



女性初の執行役員。避けられない悩みとは…


執行役員就任早々、社長の平尾太一から「1年以内に四半期営業利益を10億円にしてくれ」 という難題を課され、リサは頭を抱えていた。

仕事のプレッシャーと忙しさはもちろん、“女性初の執行役員”ということで、メディアからの取材が一気に増えたのも悩みの種だった。

女性向けのキュレーションメディア、「ラスカル」のプロデューサー時代も“今話題の女性ヒットメーカー”などと取り上げられることはあった。しかし、今回はその比ではない。

元々、人見知りしない開けっ広げな性格で、喋るのは好きだし得意だ。しかし今は、下手なことを喋れないというプレッシャーがある。

結局真面目に仕事の話をして、最終的には広報のチェックも入るので、かなり優等生的な記事になる。

「女性初の執行役員誕生!」

仰々しいタイトルの下で微笑んでいる自分を見ると、まるで自分ではない誰かが喋ったのではないかという感覚に囚われる。

女性初の執行役員、その肩書の重さに孤独を感じることもある。自分が出た記事を見ながら席に座り、大きく溜息をついた。


執行役員リサの大事な戦友の存在とは?

“同期のこぶちゃん”の存在


平尾から出された難題に対し、いいアイディアが思い浮かばなかったリサは、同期の“こぶちゃん”を飲みに誘った。

彼は、男性向けライフスタイルメディア「ゴリラ」のプロデューサーで、穏やかな性格の癒し系男子。はっきりモノを言うリサとはいいコンビだった。

しかし、その外見とは裏腹に非常に仕事ができる男で、同期の中でも一番の出世頭だった。リサより1年早くプロデューサーに就任して「ゴリラ」をヒットさせた。



彼の活躍に刺激されたリサは、その後を追うように女性向けのキュレーションメディア「ラスカル」をプロデュース。結果的に、「ラスカル」は「ゴリラ」を越えるヒットとなった。

しかし、情報に敏感な女性向けのメディアの方が成功しやすいことは周知の事実。お互い切磋琢磨する関係は変わらなかった。


男の嫉妬は女よりもたちが悪い…?


リサはいつものように、渋谷の『琉球チャイニーズTAMA』に彼を誘った。深夜3時までやっているこの店は二人の行きつけで、仕事のめどがつく21時頃に会社を出て終電ぎりぎりまで飲む、というのがいつものパターンだ。



その日も、こぶちゃんは二つ返事で飲みに行ってくれた。

正直、執行役員になってから、同年代の男性から少し距離を置かれている気がした。

女性陣は、リサの出世を大いに喜んでくれている。後輩の女の子たちには声をかけられることが多くなったし、先輩たちはいつも「リサ大丈夫?」と心配してくれる。デスクの周りには、女性陣からもらった栄養ドリンクとお菓子でいっぱいだ。

一方、男性は反応が分かりづらいので少し不安だ。男の嫉妬は女よりたちが悪いと聞いたこともある。

しかし、こぶちゃんだけはいつもと変わらない態度で接してくれる。今日も根気強くリサの話に耳を傾けてくれた。

執行役員になってからの孤独、平尾太一から出された難題…。今考えていることを素直に話した。

全てを話せる訳ではないが、こぶちゃんの大らかな優しさには何べんも救われてきた。

こぶちゃんは、リサが管轄しているデジタルメディア事業部についても的確なアドバイスをくれた。

「ラスカル」「ゴリラ」「Find Trip」は事業の核として成長しているが、どれも頭打ちだ。テキストコンテンツ以外の分野をそろそろ考えなくてはいけない、そんな話をしてくれた。

ーテキストコンテンツ以外か…。

新たな視点を得たリサは、翌日意気揚々とデスクに向かい企画を練り始めた。


テキストコンテンツ以外の分野に興味を示すリサ。社長・平尾太一にはすでに戦略が!?

敏腕社長・平尾太一の次なる野望


一方、平尾太一にはCNAをさらに成長させるための戦略があった。

現在、デジタルメディア事業部は、「ゴリラ」と「ラスカル」、さらに旅行メディアの「Find Trip」の計3つのメディアを基幹事業としている。

どれもPV数は軒並み安定しているが、頭打ちな感は否めない。そもそも、こうしたテキストコンテンツは既に市場に出尽くしている。

そこで、平尾太一が目につけたのは動画コンテンツだった。テキストコンテンツより情報がリアルに感じられ、反応率もよい。これからさらなる成長が見込める市場だ。

しかし、その肝心の動画ビジネスに関して、CNAは完全に後れを取っていた。社内で新規事業として立ち上げるにはコストも時間もかかり過ぎる。

そこで平尾太一は、動画コンテンツに特化した企業を買収しようと決意した。


「総合商社を捨ててベンチャーで奮闘するCOO」の薄っぺらさと、やり手の女社長との出会い


平尾太一が一番初めに声をかけたのは、動画制作のスタートアップ企業「5MINUTES」だ。

「5MINUTES」には、最近総合商社出身の男が加わったらしい。「総合商社を捨ててベンチャーで奮闘するCOO」という肩書きで、あらゆるメディアで特集を組まれていた。

こうした仕事はスピード勝負だ。早速そのCOOにアポイントを取る。その男は、38歳の拓哉という男だった。「何だかやけに偉そうだな」というのが第一印象。今後の事業展開を聞いても薄っぺらいことを言うばかりで現実味がない。

結局、総合商社の看板を捨てきれない彼は自分を大きく見せることだけに精一杯で、ビジネスパートナーとして組むにはリスクが大き過ぎた。

次にターゲットとなったのは、「B Channel」だ。社長は和田マリコ、31歳。彼女は元々、犬好きなら知らない人はいない「ドックパッド」を運営する会社に新卒で入社し、動画サイト制作のノウハウを学んだ後、独立。



「B Channel」は、「可愛いは、作れる!」をコンセプトにした動画サイトで、一部の女性たちから熱狂的な支持を得ている。


実際、マリコに会ってみると、動画サイト運営の知識が豊富なのはもちろん今後の事業プランもしっかり見据えており、「5MINUTES」の拓哉とは比べものにならなかった。

平尾太一は、マリコ率いる「B Channel」買収の計画を立てることにした。

いつも一生懸命で皆から愛される可愛い系のリサと、キャリアウーマン然の勝気な美人のマリコ。2人が肩を並べてCNAを率いる姿を想像し、「悪くない」とほくそ笑んだ。


次週9.29更新
「B Channel」の買収を目論む平尾太一。思いがけないライバル現る?


<注記>この作品はフィクションであり、実在の人物をモデルにしたものではありません。