「話題のIT企業に初の女性執行役員、登場!」

2016年1月、各メディアがこぞって取り上げた。

大手IT系メディア企業CNAの初・女性執行役員に抜擢された、リサ。弱冠28歳での就任だった。

「仕事はすごく熱心だけど、中身は普通の女の子。」

彼女のことを、周囲の人間はそう評する。

これは、“夢中で仕事していたら、いつの間にかここまで来ていた”と語る女子社員が執行役員として奮闘する物語−。

執行役員就任早々、早速社長の平尾太一から1年以内に四半期営業利益10億円という難題を出されたリサ、同期のこぶちゃんにアドバイスを受け動画コンテンツに目をつける。しかし、社長の平尾太一にはすでに戦略があって…?



社長・平尾太一。M&Aへの目論見とは?


「B Channel」の美人女社長和田マリコと会い、買収の決意を固めた平尾太一は、水面下で着々と準備を進めていた。

「B Channel」の強みは、何といっても固定のファンがついていることだ。ネット業界のコンテンツの衰退は驚くほど早いが、「B Channel」の人気は根強い。

コンセプトは、「可愛いは、作れる!」。一重の一般人がぱっちり二重に変身する「整形メイク」や、1か月のダイエット企画で恋が実ったという「願いが叶うモテボディの作り方」などのヒット動画を数多く生み出した。不美人のニーズをがっちり掴んでいる。

実際、「B Channel」で有名になった女性が独立して会社を作る、というシンデレラストーリーまで生み出した。

先週マリコに聞いた月間アクティブユーザーも右肩上がりが続いていて、更なる成長が見込める。

また、「B Channel」はマリコが作った会社だが、友好的な買収ができるという確信もあった。彼女は必要と判断すれば事業を譲渡することは厭わないという。CNAの傘下に入れば技術面でも人材面でも「B Channel」をサポートできる。

調べれば調べるほど、平尾太一は「B Channel」の買収への想いを強くした。

しかし、そこに立ちはだかる、2つの壁があった。


CNAのやり手社長・平尾太一。「B Channel」の買収は上手くいくのか!?

一筋縄ではいかない、社内でのM&Aの意思決定


平尾太一は、上場後、M&Aを中心とした成長戦略を描くとIRでも発表してきた。しかし、まだ大型のM&Aは実行に移せていない。それは、社内での反対の声が根強かったからだ。

CNAの社員たちは社内で新規事業を立ち上げる力を信じており、現にリサが手がけた「ラスカル」は大ヒットしている。

「新規事業に参入するなら今まで通り社内で事業部を立ち上げるべきだ」「M&Aが成功するはずがない」

取締役たちはなかなか首を縦にふらなかった。

しかし、平尾太一はそうした社内の新規事業の成功が、過信を生んでいるのではないかと感じていた。目をつけた動画メディア事業は新規事業として立ち上げるより、M&Aで時間を買う方が成功確度が高いと判断した。

渋い顔をする取締役たちの説得してくれたのが、加藤祐介だった。祐介はデジタルメディア事業部を管轄する取締役で、平尾太一が一番信頼している人物だ。率直な発言と淡々とした態度で「冷酷だ」と評される平尾太一とは真逆の、穏健派だ。



年は平尾太一より上だが、いつも「お前の好きなようにやれ」と言って調整役を買って出てくる。

今回も、祐介の必死の根回しのおかげで、何とか取締役会での承認を得た。

「B Channel買収の目処がついた…。」

しかし、息をつく暇なく次なる課題が平尾太一に襲いかかる。


ライバル企業「FREE」も「B Channel」の買収を狙っていた?


CNA買収劇に待ったをかけたのは、ライバル企業のFREEだった。FREEはCNA同様インターネット事業であれば手広く手がけている、総合インターネットカンパニーだ。

しかし、最近は主力事業が落ち込み、ここ2,3年で相次いで実施した大型のM&Aが全て派手に減損となった。先日の決算では減損が響いて、通期で赤字転落したと発表したばかりだ。しかし、数百億の現金は保有しており、未だM&A案件を熱心に物色していた。

CNAとFREEの2社の争いとなったが、70億円での売却を希望するマリコに対して、FREEはここ最近の派手な減損もあり、70億円での買収は社内承認が降りなかった。

最終的にはCNAが70億円で「B Channel」の買収を決めた。長い買収劇が終わり、平尾太一はほっと胸をなでおろした。


女性初の執行役員・リサに早くもライバル現る!?

「B Channel」創業者 兼 CNA新執行役員。和田マリコの華々しい登場


一連の買収劇は、連日マスコミをにぎわせた。特に注目を集めたのは、「B Channel」の女社長、和田マリコだ。

「美人社長・和田マリコ。キャピタルゲインでIT寵児に!」

CNAが70億円で「B Channel」を買収した際、自社株を60%程度保有していたマリコは、キャピタルゲインで40億円ほど手にしたと噂された。「B Channel」に投資していたベンチャーキャピタルは、「5MINUTES」にも投資していた「A Dash Ventures」や、新興ファンドの「SkyANRI Ventures」などで、彼らも投資額の5倍程度のリターンを享受していた。

「やり手の女社長」を体現したかのような美貌を持つマリコはマスコミウケも良く、あらゆるメディアで取り上げられた。

和田マリコは、平尾太一から動画メディア事業部管轄の執行役員に任命された。引き続き自身が立ち上げた「B Channel」を核に、ライフスタイル領域の「Kuraseru」や料理領域の「Delicious Kitchen」の立ち上げを任された。

女性執行役員2名の抜擢、動画メディアへの進出。これで一時は落ち着いていたCNAの時価総額は一気に上昇するだろう。

平尾太一は新・執行役員マリコにリサ率いるデジタルメディア事業部と同じノルマを課した。

「1年以内に四半期営業利益を10億円にせよ。」

やり手女社長・マリコは余裕の笑顔を見せた。


一方のリサはというと…。検索エンジンで知る、マリコの存在。


リサはこの買収劇を人ごとのように見ていた。さすがは平尾太一、こぶちゃんやリサの遥か先を行くスピードで、動画メディア事業に進出した。

リサは新しい執行役員であるマリコが気になり、デスクでこっそり彼女の名前を検索する。検索結果は20ページを下らなかった。何となく名前は聞いたことがあったが、ここまでの有名人だったとは…。少し怖気づいた。



早稲田大学商学部卒業後、犬好きのためのCGMサイト「ドッグパッド」を運営する会社に就職。そこから独立し、スマホ動画に適応した「B Channel」を設立。写真を見ると黒髪のロングヘアが特徴的で、長身に合ったパンツスーツを綺麗に着こなしている。

「美人だなぁ…。」

思わずそうつぶやいた。

そんな呑気なリサとは対照的に、マリコは早くもリサへのライバル心を燃やしていた。マリコは典型的なワセジョで、「デキる女社長」というイメージ作りのため、メディア戦略にも心血を注いでいる。



一方で、マリコの知る限り、リサの悪い噂は聞いたことがない。

「気さくないい人」「可愛いのに性格はさばさばしている」

血のにじむような努力で全てを手に入れてきたマリコにとって、自然体で愛されキャラのリサは、正反対のタイプに思えるのだった。

「まずはお手並み拝見かな。」

闘争心を最高潮に燃やしているマリコは、そうつぶやいた。



次週10.6木曜更新
マリコを迎えた新生CNA。女性執行役員の闘いが始まる!?