大手IT系メディア企業CNAの初・女性執行役員に抜擢された、リサ。弱冠28歳での就任だった。

執行役員就任早々、早速社長の平尾太一から1年以内に四半期営業利益10億円という難題を出されたリサ、同期のこぶちゃんにアドバイスを受け動画コンテンツに目をつけるが、社長の平尾太一は和田マリコ率いる「B Channel」の買収を既に決めていた。

リサとマリコ、2人の女性執行役員が誕生したCNAに新たな動きが…?



ルブタンを鳴らして歩く女・マリコの登場


リサが女性初の執行役員として就任後、わずか3カ月ほどでもう1人の女性執行役員が誕生した。

動画サイト「B Channel」の有名美人社長マリコだ。

マリコは同社売却によるキャピタルゲインで40億円ほどを手にしたと噂され、一躍時の人となっていた。管轄は動画メディア事業部だ。

マリコの自信に満ちたオーラはすごかった。CNAはどちらかと言うとマリコのような“いかにもキャリアウーマン風”の女性より、リサのような女の子らしい子が多い(しかし仕事には厳しい)。

トレードマークのクリスチャン・ルブタンのヒールをわざと鳴らすかのように歩くマリコは、ひと世代前のキャリアウーマンの見本のようなタイプ。その超然とした美しさに多くの男性社員が心を奪われていたが、女性社員は醒めた目で見ていた。

「あんな偉そうな女のもとで働けません!」

マリコの部署へ異動になった後輩がリサのもとに泣きついてきた。

就任早々、マリコは辣腕をふるっていた。執行役員のもとに集中していた権限を部下に与え、彼らの業務量は膨大なものとなっているらしい。CNAに新しい風を吹かせようと必死なのだろう。

リサは泣き顔の後輩をなだめ、飲みに連れて行ってやることにした。


事業だけじゃない!?マリコの社内政治の秘策とは?

新・執行役員マリコ。業務改革も社内政治もお手の物!?


一方のマリコは自信満々だった。CNAは業界でもトップを走る大企業だが、「ラスカル」以降目立ったヒットがない。

「1年以内に四半期営業利益を10億円にせよ。」

という平尾太一からの無理難題とも思われる目標に対しても、何ら問題はないと考えている。

また、「こんなことまで執行役員が決めなければいけないのか」という大企業的な業務の進め方を改めようと、自らの権限を少し委譲することにした。

そのためにプロジェクトチームをいくつか発足させ、チームリーダーには20代の社員を抜擢。若いうちに経験を積ませる腹積もりだ。業務量は格段に増えたので批判も出ているが、苦労は買ってでもしろと無視している。

また、マリコは社内政治にも長けているという自負があった。新しい環境で活躍するには、影の実力者を見極め気に入られなければいけない。そこで目をつけたのが、取締役の加藤祐介だった。

社長である平尾太一の経営手腕は世間でも認められているところではあるが、真のキーマンは加藤祐介だ。「B Channel」の買収をまとめ上げたのも彼だと噂で聞いている。


マリコが驚愕した穏健派・加藤祐介の対応とは!?


早速、マリコは加藤祐介のもとに挨拶に行った。マリコは見た目がきついので、物腰柔らかく行けば大抵の男は相好を崩す。あまり喋り過ぎず、相手の目をじっと見るのがポイントだ。

控えめにノックをして部屋に入る。加藤祐介は取締役なので、個室が与えられている。

「加藤さん、おはようございます。」



物腰柔らかに微笑み、少し間を空ける。きつい見た目とは反対に、はにかみながらオドオドした感じで行くのがポイントだ。これで大抵の男は目尻を下げ、いらぬ情報をあれやこれやと教えてくれる…はずだった。

しかし、加藤祐介はマリコを一瞥して「よろしく」と言っただけで、すぐにパソコンに視線を戻した。邪魔だからさっさと行ってくれと言わんばかりだ。

マリコは仕方なく部屋から出て行った。

「もう!なんなのよ!あの男!!」

怒りで腸が煮えくりかえりそうになった。


加藤祐介の知られざる本性とは?

加藤祐介が唯一心を許す相手とは?


後日、得意の「マリコスマイル」で、他の取締役にシナを作ってあれこれ聞いた。加藤祐介は穏健派と言われているが実は強かな男で、権力者に取り入る才能はピカイチらしい。ますます「彼に気に入られなくては」という思いが強まった。

「絶対気に入られてやる…!」

Sっ気な見た目とは裏腹に、ドM気質のマリコは燃え上がった。

その後加藤祐介をよく観察していると、ライバルのリサには大分心を許していることが分かった。リサ率いるデジタルメディア事業部の担当取締役だということを抜きにしても、リサといるときの加藤祐介は目尻が下がりっぱなしだ。

「ふーん…。そういうことね。」

2人の話す姿を遠目から見る。全く気に食わない。


リサの苦悩はマリコではなく、「ペンギン」?


リサは、マリコの登場によって「ライバルができて大変だね」と声をかけられることが多くなっていたが、それどころではなかった。

それは、最近Googleが発表した「ペンギン・アップデート」が、デジタルメディア事業部にとって逆風となっているからだ。

※ペンギン・アップデート:Googleが検索者の入力した検索クエリに対して、表示するWebページの順位を決めるために用いているアルゴリズムのアップデートの1つ。

「ラスカル」「ゴリラ」「Find Trip」のアプリのダウンロード数は伸び、広告収入も伸びてきている。しかし、いずれもSEO(検索エンジン最適化)で成長させてきたメディアであり、Googleのアルゴリズムの変更で、SEOで強かったキーワードは軒並み大幅に順位ダウン。トラフィックが目減りするのは明らかだった。

一方でGoogle同様重要なプラットフォームであるFacebookは動画重視の流れになっており、デジタルメディア事業部はFacebookページのリーチ減にも悩まされいていた。

Facebookの動画重視のアルゴリズムはマリコ率いる動画メディア事業部に有利で、「B Channel」の再生回数はうなぎのぼり。月間3億回の再生を突破していた。

リサは頭を抱えていた。



一方、社長の平尾は…。

平尾太一はマリコについてはあまり心配していなかった。動画メディア事業部は今追い風で、その実力ぶりを判断するのは早いが、運も実力のうちだ。

平尾太一が心配しているのはリサの方だった。強かなマリコと違い、素直で一生懸命な性格で、見ているとつい助けてあげたくなってしまう。

そんなことを考えながら社内を歩いていると、社内のカフェスペースに真剣な表情を浮かべたリサがいた。声をかけようと近づくと、男の笑い声が聞こえた。

声の主は、取締役の加藤祐介だった。2人は真剣な表情で、しかし時折親密そうにクスクス笑いながら大分話し込んでいるようだ。



リサ率いるデジタルメディア事業部の担当取締役は、祐介だ。今は平尾太一の出る幕ではない。複雑な気分でその場を去ろうとしたら、呼び止められた。

「平尾さん!」

期待していたリサではなく、マリコだった。

気分を持ち直して社長室に案内した。しかしマリコが話す「B Channel」の秘策に、平尾太一は目を見開くことになる。


次週10.13更新
マリコの秘策とは?そしてついに加藤祐介の恋が加速する!?