「一億総中流社会」と言われる日本。

容姿、学歴、収入。全てにおいて「中流」の少し上に位置する人間は口を揃えてこう言う。

「上を見ればキリがないが、知らなければいい世界もある。」

この連載では”中の上”に位置する男女に起きた、さまざまな悲劇に迫る。

これまで登場したのは、東大卒エリートサラリーマン・サトルやMARCH卒の商社マン・健二、元CAの麗子など。今回登場する、広告代理店勤務のマユのこだわりとは...



広告代理店勤務、マユ30歳。彼女が求める結婚相手の条件とは?


「私、年収2,000万円以上の人じゃないと結婚しないって決めているんです。」

会って早々そんな言葉を口にしたのは、広告代理店勤務のマユ、30歳だ。

綺麗に焼けた肌に奥二重の小さい目は少し釣り上っていて、素材としては、“クラスで3番目に可愛い女”、といったところだろうか。しかし、巧みな化粧と流行りのファッションで、いかにも「いい女」風の雰囲気を醸し出している。

美容にもファッションにも手を抜かない、稼ぎの良いアラサー独身女性の典型的なタイプだ。普通の素材でも、時間と手間をかければ、女性の場合はそれなりに仕上がる。

彼女は同志社大学を卒業後、就職を機に上京した。代理店女子である彼女の年収は800万円弱。家賃12万円、池尻大橋のワンルームに一人暮らしをしている。

30代に突入し、「そろそろ結婚したい」と語る彼女。しかし、彼女には譲れない条件がいくつかあった。そのうちの一つが「年収2,000万以上」というものだった。


彼女が年収2,000万円以上にこだわる理由とは?

“クラスで3番目に可愛い子”が“デキる女”風のキャリアウーマンになるまで


マユは昔から非常に努力家だった。教師である厳しい両親のもとに育てられ、小学校の頃から学級委員や生徒会を務めるような優等生だった。前回登場した健二のように、目標があったらそれに到達するまでの努力も怠らない、そんなタイプだ。

また、優等生なだけではなく、どのコミュニティにおいても一番目立つ派手なグループに所属することを心がけていた。物心ついたときから校則ギリギリの格好をして、自分をどう見せれば目立つのか、常に考えて行動していた。

必死に受験勉強をして同志社大学に入り、学内でも常に目立つグループに所属していた。化粧もうまくファッションセンスにも秀でていた彼女は、本来ならば“クラスで3番目に可愛い”はずの素材が、2倍にも3倍にも輝いて見えた。

常に華やかな舞台に身を置いていた彼女が考えた就職先は、CAやアナウンサー。

しかし、さすがに無謀だと気付いた彼女は、テレビ局や広告代理店などのマスコミ業界に志望を絞った。大学2年生の頃からマスコミ塾に入り、多くのOB訪問を重ね、血のにじむような努力で広告代理店の内定を勝ち得た。


出会った男性をエクセル管理する理由とは?


就職して東京に来てからは毎日が刺激的だった。特に、会社の同期である静香との出会いは大きかった。

静香は東京で生まれ育ったお嬢様。慶應を卒業後、マユと同じ広告代理店に入った。素材的にはマユ同様それほど美人ではない。しかし、巧みな化粧とファッションでいい女オーラを纏う静香は「自分と同じ匂いがした」と言う。

静香は非常に人脈が広く、頻繁に食事会やホームパーティーを開いており、マユはその常連メンバーだった。



出会う男性メンバーは商社マンや外銀、医者からパイロットまで様々だが、非常にレベルが高い。そのため自然と男性を見る目も肥え、次第にそのレベルが「普通になってきた」と話す。

彼女のスケジュール帳を見せてもらった。予定帳はびっしりで、最近は減ってきたが、今でも週に何回かは食事会を開いているという。

さらに驚くことには、「出会う人が多過ぎて覚えられない」という理由から、出会った男性を全てエクセルで保管していた。出会った日時から印象、勤務先や学歴、また家族構成まで全て一覧化している。

そんな彼女の理想の第一条件は「年収2,000万円以上」。

この条件も、几帳面な彼女が「都内である程度の生活を送るための最低の金額」を算出して出した額らしい。その内訳を聞くと、まず「子供を産んで自分が働かなくても、今の生活レベルを落とさない」という前提のもと。

年収2,000万だとしたら、推定手取り収入は月に100万円程度。彼女は「結婚したら広尾に住みたい」らしく、広尾でそれなりの物件だと家賃は25万円以上。現在月10万以上かかっている美容・ファッション代ははそのまま。「たまにはいいレストランに行きたい」ので、外食1回でかかる値段4万円前後を月に2、3回と考えても、外食費だけで10万以上。

「子供ができたら絶対必要」と考える車の維持費や教育費など、計算はどんどん膨らみ「子供ができたら年収1,000万だとロクな生活ができない。最低でも2,000万は必要」という結論に落ち着いたという。

また彼女には、他にもこだわりの条件があった。


彼女が結婚相手に求める他の条件とは?

第二のこだわりは“早慶以上”の学歴


彼女の第二のこだわりは学歴だ。そのラインは「東京の大学だったら、最低でも早慶以上」と話す。

彼女曰く、学歴は自分の努力で勝ち得た結果だという思いがあり、自分より学歴が低い男性は許せないらしい。自分の学歴以下の男性は、尊敬するに値せず「恋愛対象外」だと語る。

年収2,000万以上で早慶以上の学歴。

そんな彼女の理想を満たす相手はごく僅かだろう。年収1,000万以上でさえ僅か上位3%。巷のサラリーマンでは到底彼女のおメガネには叶わない。

彼女は、今日も仕事が終われば街に出る。そして数多の男性と出会い、エクセルの行をどんどん増やしていく。

しかし、どんなに巧みな化粧とファッションで着飾っていても、彼女の容姿は”中の上”。頑張って背伸びしている感じが痛々しいほどに伝わってくる。年収2,000万円以上の男性は上ランクの女性しか相手にしないだろうし、1,000万クラスの男性と結婚できれば御の字だろう。

同期の静香は今年結婚する予定だ。相手はIT系企業の役員で、はっきりとした年収を聞いたことはないが、悪くはないはずだ。戦友の幸せな結果に胸をなでおろした。自分もまだまだイケる、と言い聞かせる。



しかし、静香や他の食事会メンバーに影ではこう言われている。

「30過ぎてもまだまだあんな遊び方をしていてイタい」。

素材的には「中の上」であっても、たゆまぬ努力で常にトップを張ってきた(という自負がある)彼女。20代後半ではその遊び方や立ち振る舞いが「イケている」ものであっても、歳とともにその価値観は変容していく。

努力をして何かを勝ち得ることは大切だ。しかし大人になれば、自分一人の力ではどうしようもできないことの方が多くなっていく。

「恋も仕事もなかなかうまくいかない」

そうつぶやく彼女も、過去の成功体験に引きずられず、自分なりの価値観を見つける大切さに気付き始めているのかもしれない。


次週10.22土曜日更新
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