【元局アナ青池奈津子のメジャーオフ通信・特別編:マエケン夫人・早穂さんが明かす「前田家裏日記」(3)】

アリゾナ州フェニックスに「アライ・パストリー」という、キャンプ中の日本人メジャーリーガー御用達のパン屋さんがある。ドジャース前田健太投手(28)の初めてのメジャー生活を支える奥様・早穂さんにとって、そのおいしい日本の味のパンは「すごく癒やしだった」そうだ。前回に引き続き、初キャンプ中の早穂さんの体験談をお送りする。

 メジャーリーガーの妻として避けられないのが「ワイブズ・ミーティング」(奥様会。メジャーではガールフレンドでも参加するのが普通)。早穂さんにとっても8年間共に過ごしていくチームなのだ。緊張と好奇心が交差する。

「ドジャースの奥さんだからもしかしたら皆ハリウッドの女優さんみたいな人が来るのでは?」。当初、選手のパートナーたちのイメージが全く湧かなかったそうだが、会ってみれば高校の同級生と結婚している選手なども多く、とても入り込みやすかったそう。「いきなり自己紹介してくださいって言われた時はドキドキしたけど、そこで打ち解けられたからシーズン中も『ハーイ!』って言ってくれるようになって。みなさん本当に気遣ってくれます」

 特に親切だったのが、昨年ドジャースに入団したスコット・カズミアー投手のガールフレンド。「彼女は『私ももう何チームも行っていて、名前とかも覚えるのが大変なのわかるよ、一緒だよ』と言ってくれて、すごく打ち解けられたし、(エース左腕)カーショーの奥さんにもずっと仲良くしてもらいました。ちょうど彼女のお子さんと娘の年が近くて、すごく仲がいいんです。2人は会った時から手をつないだりして、とてもスイートでかわいい」。全く何も知らない土地で、こういう一つひとつの優しさが大きな支えになる。

 このころ、ドジャースと契約後からずっとピリピリしていた前田選手も少しずつ本来の自分を取り戻しつつあった。

「オープン戦で、ちょっと投げ始めてなんとなくスッキリした感はあったみたいです。実際に投げてみて、『あぁ、結構抑えられた』っていうのが多分、少し自信につながって、笑顔が出てきたというか、こう…活気が出てきた感じがありました」

 そうこうするうちにあっという間に約50日に及ぶキャンプ期間は過ぎ、ついに2016年4月6日(日本時間7日)、敵地サンディエゴでのメジャーデビュー戦を迎えた。相手はナ・リーグ西地区のライバル・パドレス。

「あのゲームは印象的でしたね。遠くから見ていても、あ〜緊張しているなって分かって。私も死ぬほど足が震えて、すごくガタガタしちゃいました」

 その緊張をはねのけるかのように前田選手はパドレス打線相手に好投。試合は初回に4点を先制したドジャースペースで進んだ。さらに4―0の4回表一死の第2打席で前田選手は左翼席に本塁打を放ったが…。

「実はホームランを打った時も夫が打ったと思っていなくて。他の選手の奥さんと、イエ〜イってハイタッチしていて、てっきり他の人が打ったと思ったら『え〜!?』って。もう信じられない。それくらい私も浮足立っていたみたいです」

 メジャー1年目。選手と同じくらい家族も不安と緊張感と闘った。前田選手はシーズンが終わって新人王候補にも名を連ねるほどの大活躍だった。前田夫妻の努力が報われて本当に良かったと心から思う。

 明日は、日米間で大きく違うメジャーリーガーの妻のあり方について。

 ☆まえだ・さほ 1985年7月19日、千葉県生まれ。フェリス女学院大時代、テレビ神奈川「みんなが出るテレビ」でリポーターを務める。在学中に「ジュニア・ベジタブル&フルーツマイスター」の資格を習得。2008年4月、東海テレビにアナウンサーとして入社。10年10月末に退社後、フリーに転向。15年2月、初のレシピ本「前田家の食卓」(幻冬舎)出版。